★岡田准一スリルある大人の物語
cinemaster 2009/6/13
実に面白い作品であった。
30歳を迎えたの男女の青春物語。タイトルが「お隣り」と「音鳴り」とのダブルミーイングになっており、顔も知らないアパートの隣人との心の触れ合いがスリリングである。隣人の生活音が聞こえてくるという現象は、本来なら無気味というか聞きたくないものである。しかし本作品ではこの音に癒される2人のリアリティを超えた大人のファンタジックな世界を作り上げることに成功している。
麻生扮する女性は、職場と自宅での表情を違えて、シングル女性の強さと弱さを30歳という岐路に立った男女の意味無く焦燥感に掻き立てられている姿がリアルでもある。
その姿を16ミリのザラついた映像で撮ったことでより現実味を醸し出す。女性は映画出演が目白押しの麻生久美子で、ふとした表情の美しさが彼女の魅力だが、本作品でも意外と、か弱い女性という設定を見事に演じていた。
一方男性は、ジャニーズ事務所の岡田准一。彼も映画出演はコンスタントにこなし、芸域は広いと感じる。本主人公も一流の腕を持ちながらも現状に満足していない若者を演じていたが嫌味がなく、居候の女性(谷村美月)にも優しい。今流行の草食系男子といったところか上手く演じていた。
そして脚本の上手さ。まなべゆきこの脚本は、男女を最後まで会わさないと思いきや、スリリングなすれ違いから、一転ハッピーを予測させるオチへとつながる。それがもどかしいというよりも清々しくなれるのだ。こんなロマンティックなボーイ・ミーツ・ガールがあるのだろうか。でもあって欲しいと感じる雰囲気を作り上げることに成功している。
監督の熊澤尚人氏の次回作が非常に楽しみだし、本作品は繰り返し観たくなる、そんな愛すべき作品に仕上がったと感じる。