皆、受験の日々に追われた3学期が慌ただしく過ぎて、卒業の日がきた。
卒業式に出席するためブレザーを羽織ると、それはもう俺の身体に馴染んでいて、あの頃の生地の固さはない。
あの頃‥‥‥‥
2年の2学期とかいう中途半端な時期。
そんな時期に引っ越してきて、人見知りな俺は迷惑だなんて思ってた。
引っ越してきて早々に王子と呼ばれ、俺の何知ってるねんとか思ってたりもした。
でも、俺の周りに近づいてきたやつは誰もが俺を王子とは扱ってくれなかった。
ここには、この学校には王子は似合わないけどアイドルという呼び名の合うにっしーがいたからやろな。
案の定実彩子はにっしーで免疫がついていたようで、俺は王子らしくないと真っ向から否定してくれた。
見た目だけで何もかもすごいみたいに言われ続けていた俺には新鮮で、思えばこの瞬間恋に落ちたんやろな。
実彩子の周りにはにっしーだけでなく、千晃や秀太がいて、皆俺を俺として見てくれた。
「與真司郎!」
真「はい!」
校長先生から名を呼ばれ、卒業証書を受け取り、それを胸にこの学校に来て良かったと心から思えた。
証書を受け取って、ステージから見る景色の片隅に見える去年の担任浦田先生。
俺の夢へのアドバイスをくれた恩人。に、なるはず。
普通の進学を辞めて、9月からあっちの大学に入ることを決められたのも、浦田先生の一言があったから。
あとで、お礼言わなあかんな。
ちゃんと、ちゃんとせな。
「宇野実彩子!」
宇「はい」
宇野ちゃんが卒業証書を受け取る。
2年も一緒におらんのに、俺をかなり夢中にさせてくれた。
宇野ちゃんと会えて良かった。
もう好きじゃないなんて嘘やで。
ほんまはまだ‥‥‥‥‥
悔しいから言わんけど‥‥‥。
天然なとこも、それをわかってないとこも、小悪魔みたいなとこも、
やっぱりもう言わん。悲しなる。
堅苦しい式を終えて、堅苦しい担任の最後の授業を受けて、外に出ると快晴の空が俺らを出迎えてくれた。
浦「あ、與!」
真「はい」
浦「頑張れよ。」
真「うん。」
浦「そこははい!だろ。」
まるで友達のように気さくに、元担任は俺の卒業と進路を祝ってくれる。
真「先生。ありがとう!」
浦「急に素直になるのかよ」
いつだって生徒に寄り添ってくれた浦田先生の豪快な笑顔が眩しかった。
俺の夢への背中を押してくれたのは浦田先生。
でも、最初にそのきっかけを作ってくれたのは実彩子だった。
留学したいって実彩子に相談したとき、真司郎はすごいと言ってくれた。
バカにされるかと思ってた。
そんな中、マジな顔ですごいと言ってくれるんやから。
無数にある夢の中から、覚悟決めて選んだ道だから、
行くとこまで行くしかない。
限界すらまだ見ていないから
諦めない強さで、実彩子に勇気を送れるかな?
実彩子がすごいって応援してくれた夢やから。
後悔はない。
今はもう楽しんだ高校生活に心残りもないし、次へのステップに胸が踊ってるから、運命に何度でも飛び込むわ。おれ。
秀「真司郎!宇野ちゃん!こっちこっち!」
秀太に声をかけられ、千晃、にっしーと合流する。
伊「真司郎、泣いたんじゃない?」
真「泣いてへんわ」
秀「西島はボロ泣きだったよ?」
西「いーやんか」
宇「ほんと、目ぇ真っ赤」
西「だって皆バラバラ寂しいやん」
そやけど。
俺やって寂しいに決まってるやん。
西「なんだかんだ與と離れんのも寂しいし」
‥‥‥‥‥
どこまでも真っ直ぐで、そんなところに実彩子は惹かれたんやろな。
真「俺、にっしーのことそんな好きちゃうかったけど、好きになったわ。」
西「‥‥‥‥‥」
真「ちょ、泣かんといてや」
伊「ふふ」
宇「真司郎も涙目じゃん」
そうゆう実彩子も千晃も涙目で、にっしーは号泣。
真「これからも、ずっとよろしくな。」
「もちろん!」
いい仲間と出会えた俺の高校生活は笑顔と少しの涙で幕を閉じた。


