※はじめに…。
この話は20年以上前のことですので、なるべく事実に忠実に書くつもりですが、もしかしたら記憶違いをしている部分がある可能性もあります。ご了承ください。
私が研修に行った病院はその地域の脳死移植の拠点病院のひとつで、移植コーディネーターのオフィスもあった。
日本人のドクターも何人か勉強しに留学していたので、私もすぐに挨拶しに行った。
お互い(特に私は)ぎこちない英語で自己紹介していると、グレッグに「日本語で話せば?」と言われた
肝臓移植を受けに来ている日本人の患者さんも何人かいて、ご家族は病院近くのアパートに住んで日本食を作って持っていったり、ご本人も(若い方が多かったけれど)言葉が分からない中での闘病で辛いことも多かったのではないかと思う。
日本人のレシピエント側のコーディネーターもいたけれど、Yさんも時々患者さんやご家族の相談に乗られているようだった。
移植のオペは脳死の患者さんがでたら行なわれる。
いつ行なわれるかはわからないので、もし予定が入ったら私にも知らせてもらうようお願いして、私の滞在中に肝臓と心臓の移植手術を見学させていただくことができた。
私が見たドナーの方の1人は40才くらいの女性で、喘息発作で脳死になった方だった。
きれいにマニキュアを施された手を今でも覚えている。
脳死の患者さんは心臓も動いているし呼吸もしていて、とても亡くなっているとは思えなかった。
死亡時刻は何時になるのか?と聞いてみたけれど、あまりこだわりがないのか明確な答えは返ってこなかった。
心臓移植のオペを見学した時は、まずドナーのオペをしにブリスベンから飛行機で2時間くらいの町に行き、臓器を持ってブリスベンに戻り市内の他の病院で心臓を移植するのを見学した。
一刻を争うので、行きは飛行機を降りたらパトカーで病院へ、帰りは臓器を運んでいるので救急車で。
信号は全て青になると聞いた(と記憶している)。
これが私の人生の3大VIP体験の2つ目だ
(ちなみに1つ目は高校の修学旅行の中国で、9クラス総勢400名近くがそれぞれ各クラス2台ずつのバスに分乗してパトカー先導でホテルまで行ったこと。ものすごい量の爆竹で歓迎された)
ブリスベンの病院では臓器の到着を見越してオペを進めているので、着いたらすぐに移植が行なわれてあっという間に終わったけれど、やはり全てが終わったら明け方近くになっていたと思う。
私が見学できたのは研修の時間外なので睡眠不足にもなったけれど、とても充実していた。
そして日本だったらこんなに簡単に見学とかさせてもらえないと思うのだけど、オーストラリアでは見たいと言えば「いいよ〜」という感じでウェルカムなので、本当に貴重な体験をすることができた。
飛行機でドナーのオペを見学した時なんて、今もし飛行機が落ちたら、これは誰?って思われるだろうなぁと思ったものだ
ちょうど時期的に日本人の患者さんが移植を受けに来ていたりしたこともあったけれど、やはりYさんがいてくれたおかげでこんなに貴重な体験ができたのだと思っている。
Yさんには感謝してもしきれないほどお世話になって、本当に私は恵まれていたと今更ながら実感している