薬剤師的に「赤毛のアン」 | ワイズファーマシー

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本日の読書感想文


 



 

​赤毛のアン

​モンゴメリ
松本侑子訳



 

あらすじ(ひとこと) 


 

想像力豊かな赤毛の少女アン。

孤児院から男の子をもらうつもりだった

マリラとマシュウ兄妹の元で

成長する物語。

 



 

おすすめポイント(エンドレス) 


 私の年代の女子たちには

世界名作劇場や児童書、メルヘンのイメージかもしれませんが、、、

 

帯にありますように、

「大人の文学」です!

 

訳者の松本侑子さんは、宝物を掘り起こすように

「赤毛のアン」に隠された名文やフレーズの引用元の

「謎とき」をしています。

 

それは

「日本初の全文訳」!!

村岡花子さんが翻訳した当時、

理解しにくい箇所は割愛されていたのです。

村岡さん訳にもう馴染み過ぎている私たち。

でも、まったく違和感は感じないで読めました。

そして、全文訳とは。

今までどの部分が割愛されていたのでしょうか?

はっきり実感したのは、マシューが亡くなる章が長く詳細に描かれていること。

こんなにも、あの夜にアンとマリラの悲しみの会話があったなんて。

・・・

物語というより小説。

まさに大人の文学。

 

村岡花子さんの「赤毛のアン」で、

アンに出会い夢中になり、

松本侑子さんの「赤毛のアン」で、

細やかな奥深さを味わうことができました。

 

 

​この本に登場する薬 


 

第18章「アン、救援に行く」

・・・吐根の催吐剤(イピカック)

親友であるダイアナの妹ミニーメイが、大人たち不在時にクループ(咽頭炎)になり、

アンが救う場面で、使用する薬。

吐根(トコン)という植物の根から作られる生薬。

そのシロップと思われます。

トコンは誤飲したものを吐かせたり、

痰を出す去痰剤として使われていました。

毒性があることから、現在では販売中止となり使われていません。

 

 

 

第21章「新奇な香料」

・・・痛み止めの塗り薬

新任の牧師夫妻をお茶に招待し、アンが張り切って焼いたレイヤーケーキ。

それに使うバニラと間違えて痛み止めを入れてしまったエピソード。

この成分を推理してみましょう。

あとがきに、モンゴメリはこの本を1906年に清書したとあります。

その時代に使われていた鎮痛剤は、サリチル酸でしょうか。

サリチル酸を改良し合成されたアスピリンは1899年に発売され爆発的に使用されました。

でも、瓶に入った塗り薬の鎮痛剤と書かれてあるので、サリチル酸メチル?

茶色い液体とありますが、(サリチル酸メチルは無色)

アンは鼻風邪を引いていて、匂いが分からずに失敗し、

マリラは匂いで痛み止めと判断するくだりがあるので、

いかにも湿布様の匂いがするのが、サリチル酸メチル!

たぶん、これでしょう。

正解は分かりませんけれど。

 

ちなみに、

イブプロフェンが合成されたのは1950年代

インドメタシンは1960年代

ジクロフェナクは1970年代

ロキソプロフェン(ロキソニン)は、日本で開発された薬で、1986年発売。つい最近ですね。

 

 

私の愛読書に登場する薬について考察してみました。