S君は小学1年生からスケボーを始めた。
最初は兄がスケボースクールに通っていて、
兄がやっているのを真似したくて、
自分もやるようになった。
S君がスクールに通った初日、
その生徒はS君を含めて20人くらいだった。
S君は必死になって頑張って、
3年後には、大人よりも上手くなっていった。
その間、S君と始めた仲間は、もう誰もいなかった。
いつしかS君は「天才スケボー少年」として知られるようになった。
マスメディアでも取り上げられ、テレビにも出演した。
そんなS君。
悩んでばかりいる。
僕は天才なんかじゃない。
最初はたくさんの人と始めたけど、
興味がなくなったり、他のにやりたいスポーツをしたり、
それで辞めたいっただけ。
続けていれば、僕よりも上手い人もいた。
お兄ちゃんもその1人。
もうとっくに辞めて、サッカーしてるけど。
僕だけが残っただけ。
みんなは、僕のことを天才、天才っていうけど、
スケボーをやり続けている人がいなくなっただけで、
本当は、みんなと同じレベルなんだ。
ただ、みんなは続けなかっただけ。
子供の才能なんて特別なんかじゃない。
よく、子供は大人よりもスケボーが上手いとか
言われているけど、何人の子供が消えていった?
残った人が、やり続けている人が目立っているだけ。
大人が目立たせているだけ。
もっと本当の自分を見てほしい。
ごく普通の小学生なんだよ、僕。
S君の悩みは続き、深くなる一方であった。