国連安保理は、シリア情勢や北朝鮮問題で強い決議や議長声明を採択しようとするとこれまで拒否権を有する中国やロシアがきまって慎重論を主張
したり、反対して、安保理が実効的措置をとることを妨げ、安保理は、その第一の任務たる国際の平和と安全の維持機能を果たし得ないできた。
このような状況が恒常的に続くことになれば、すでに一部で囁かれているように欧米諸国と中露両国間の「新冷戦」時代が到来したのではないかと憂慮されるのも理由なしとしないであろう。
しかし、幸いなるかな、最近になってこのような情勢について多少改善の兆しが見えはじめてきたような観もある。
1つには、北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射の失敗を受けて、北朝鮮の行為が先の安保理決議違反であるとしてこれを強く非難する安保理議
長声明を採択しようとした際、中露の抵抗が懸念されたが、議長国米国の強力な采配により予想以上に迅速に強い内容の議長声明がとりまとめられ発出された。
また、シリア情勢についても、現地ではアサド政権の血なまぐさい反政府勢力の弾圧が続行する中、国連安保理の欧米およびアラブ諸国メンバーが再三にわ
たりこれを停止させるための決議案の採択を試みたが、これまで露中の強い抵抗により失敗してきた。しかし、コフィー・アナン前国連事務総長が停戦実現のた
め仲介に乗り出してから、まず国連が30名までの先遣停戦監視非武装軍事要員チームをシリアに派遣する決議が露中を含む安保理理事国全会一致で採択され、
監視チームが現地に派遣された。
さらに、4月21日、市民弾圧を続けるシリア政府と反体制派の停戦監視のための平和維持活動(PKO)部隊の本隊を派遣する決議案が同じく全会一致で
採択された。この新PKOは、国連シリア監視団(UNSMIS)と称され、非武装の軍事要員最大300人で構成し、政府と反体制派を含むすべての当事者に
改めて暴力行為の停止を求め、政府に対しては、アナン特使に約束した、人口密集地からの軍の撤退や重火器の使用停止などを早急に実行するよう改めて要求す
るものである。
中露両国は、国連が加盟国の内政干渉となる恐れがあると見られる決議の採択には従来より一貫して強く反対し、拒否権の行使も厭わないとの態度で臨んで
きているので、シリアにおける政府と反政府勢力の対立という一見純然たる国内問題について人道的観点から派遣される国連PKOに中露が賛成するというの
は、両国のこれまでの立場から踏み出したものと云える。
しかし、中露の以上のような最近の行動は、果たして国際社会が懸念する事態への対応への協調外交に両国が転じたものであるかどうかは即断できないであ
ろう。むしろ、北朝鮮問題にせよ、シリア情勢にしろ、国際社会全体の眼に明らかに不穏、不当な状況に対する共同行動に対しては、中露としても抵抗ないし反
対しきれず、両国とも大勢順応ないし追随の行動をとるのが無難と判断した結果とみるのが実際のところではないであろうか。この点は、いずれ、北朝鮮が準備
をほぼ完了したとされる第3回目の核実験の実施を行ったり、シリアのアサド政権がやがて国連に約束した対応をとるのをためらったりした際に、安保理が更な
る強い決議を検討せざるをなくなった時、明らかになるであろう。
(Y. I. )
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マーク・M・ローエンタール 著
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8月24日米議会に提出された最新版(2011年版)は、国防省HP(http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2011_CMPR_Final.pdf
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