PSで天体写真を処理していると、2つのピークの存在が見えてくる。
それは色彩のピークと、CCDバラツキ等による異常値ピークだ。
PSというのはLabを基本として演算するソフトだが、このLab内に潜む色彩のピーク値である前者がつまり、天体画像で言う星の色のことである。天体画像の中で、星以上に高彩度な被写体はない。
肉眼でその色が確認出来るぐらいなので当たり前と言えばそうかもしれないが、星というのは天体カラー情報の大部分を占めているのだ。


例えば、以下の写真。

イメージ 1

バンビの横顔の切り抜きだが、この領域は色彩が非常に豊かだ。
これをLab的に言うと、abの明暗ディテールが豊かであるということ。
青い微光星があると思えば、その隣では急に高彩度なイエローだったり。
褐色の星域かと思えば、そのバックグラウンドは深いブルーが基調だったり。
アップダウンに富んでおり、情報に起承転結が与えられている。
ただし、1つ1つの影響は微弱だ。1つの星色がたとえ綺麗なオレンジだったとしても、それ単体ではそこまで多大な印象影響は及ぼさないだろう。けど、星というのは写真内に何万個も存在するわけだ。
その差ってのは、説明するまでもなく明らかなのである。
色が狭範囲内で七変化し、トータルとして人に鮮烈な色彩インパクトを与える。
これこそが、カラーのもつパワー…カラーディテールだ。
この色彩が写真の中でヒトに与えるパワーを信じることから始めてみよう。


しかしだ。
このカラーディテールを処理でボカすなり拡散・省略的な処理をしてしまうと、一気に以下のようなイメージとなってしまう。

イメージ 2


こういった星々がクスんでしまった写真、見たことないだろうか?
好みの問題とかではなく、これは明らかに情報劣化・情報損失である。
本来あるべきであったディテール情報が、LabのD&S処理によって全て失われていることが分かる。
僕はこう判断します。この画像は、上の画像に比べて明らかに「劣っている」…と。
ディテールがあるもの>ディテールがないもの
ディテールがあったけど、それをどこかで損失させてしまった。というのは、一種の写真批評対象となりうる。好みがどう、という問題じゃないんだ。

もっとヒドいのは、こういった色彩損失の画像を「ああでもない…」とイジり倒しているケース。
「このバンビ、どうやっても色にシャキッと感が出ない。それって、褐色だからかな?もっと青入れてみようか?」ってな具合です。
この画像に青を入れたところで、全体的なWBが寒色に転ぶだけであり、それが決して美には結びつかない。そこを勘違いされる方が多い。
「何かイイ感じにならない。一体、何が足りないんだ?」
…って、カラーディテールを失ってしまっている時点で問題なのだ。
損失後に誰がどうやっても、イイ感じにはもっていけるはずがない。
結果として、イイ感じにならないもんだから、「星がうるさい」と言って消してしまうのだ。
星はブリッジしたりトーンジャンプするもんだから、経験者にそれとバレてしまう…悪循環。


そこでタイトルにある2つ目のピークが登場する。
なぜ皆、そんな劣化処理をしてしまうのか?
それは、CCDが得た画像情報の中に偽色その他のピクセルの異常値が存在するためだ。
明らかにこれはおかしいだろうと思われるピンク色やグリーン原色の星というのが写りこんでいることがあり、それを消すための処理が必要だったからだ。
その他にも、カラーノイズを消したいがためにってケースも多いし、CCDのバラツキだけではなく光学系の収差などによってもこういった本来その星が保有する色とはかけ離れた色が出てくるケースがある。

この処理、もしやるのであれば、ものすごく慎重にやるべきだと思う。
そうでないと、上記にあるように色の鮮度を全てブチ壊しにしてしまう可能性大なのだ。

色んな方法がある。
一例を上げれば、Labの彩度値で絶対値20以上の星カラーをピクセルおよび光学系のバラツキとみなし、それを限定的に除去する…というコマンドを出してやるのだ。レコーディングで言うポップガード的なリミッターを設けてやるのだ。

2つのピークは似ているようで、1つは天体写真にとって非常に重要なエッセンスであり、そしてもう1つは天体写真にとって不要で邪魔な存在。これら2つの真逆の性質を持つピークを一括的に処理してしまい情報を失った天体写真作例は、見てすぐそれと分かってしまう。

ここをもっと意識すべきだと、僕は常々思う。