皆さんこんばんは。プロフェッショナル天体写真家のyottyan_cryyagiです。
今宵は皆さんに重大なお知らせがあります。
| 実は本日、私は天文雑誌「星ナビ 3月号」に1P独占で掲載されてしまったのです! |

私はこう確信しました。
やっぱり私は天才だった、と。
手押し二輪車に撮影機材を積み、長野山奥へギコギコ、ようやく射止めたこの対象。
私はこの対象をよく知っている。
それは仮面ライダーの故郷、M78。

仮面ライダーは昔テレビで良く見ていただけに、思い入れがあり…とても嬉しいです。
入選というステージは、私にとって生活を左右する大切なイベントだ。
なぜなら、作品掲載のリベートとして巨額な資金が私の手元に転がり込んでくるからだ。
プロフェッショナルはクライアントの依頼を遂行し、報酬を受け取るのが常だ。
それがビジネスの鉄則。
数ヶ月後には、星ナビ編集部より金5000円が私名義のスイス銀行口座に振り込まれる。
皆さんは、この巨額な報酬をうらやましいと思われるだろう。
しかし、こんな罪な私をどうか許して欲しい。
なぜなら私はプロフェッショナル天体写真家。
冷却KissDX。
武器調達屋の韓国Yun Lee氏に感謝の意を。
Leeさん。12ビット冷却デジは何の引け目もありません。
パーフェクトな道具を僕にありがとう。
今後もLee氏とは、インターナショナルなビジネス交流を図っていきたい。
プロとしてグローバルな顧客ニーズを満たすために、今年はいくつかの算段があった。
実を言うと今年の夏、駅デパート屋上で開催される「スペース・アトラクション・ショー」の脇役
コロニー君のぬいぐるみをカブり短期アルバイトをしないか、という重大なオファーもあったのだ。
それは、ぬいぐるみを被り宇宙遊泳を体全体で表現するという、プロとしての大事なビジネスの一環だ。
夏場の駅屋上…買いものついでの子供やお母さん相手に、宇宙の不思議を説く。
「うわーコロニー君って不思議…!」
子供は目を輝かせ、私のぬいぐるみ姿に宇宙の起源や謎を感じ取る。
そんな短期アルバイトの依頼だが、
今回の報酬もあり食いつなぎの目処が立ったので、残念だが今年はキャンセルにしよう。
とにかく、これで大切な両親にも腹一杯食べさせてやれるというものだ。
「母ちゃん、父ちゃん。僕の稼いだお金で肉うどんを作ったよ。ささ、食べて食べて!」
両親のほころんだ笑顔が目に浮かぶ。
食後のデザートもガリガリ君からピノにランクアップしそうだ。
ピノの方が、カロリー的には多くのエネルギーを摂取出来る。
すなわち生存率の高い食料ということになる。
生きるって素晴らしい。…冷却KissDX。
さて、妄想はやめ再び星ナビを開いてみた。
誌面に書かれた選者のコメントを見る。
星ナビ選者も私に対し、涙ほろほろ絶賛の気持ちをグっと抑えている様子がしっかりと伝わってきた。
分かるよ選者さん、その気持ち。
気を使わせてしまってすみません。
それにしても、
年末にもちょっと記事にしたが、
| 星ナビの印刷は美しい。 |
今まで最優秀枠のない星ナビは投稿を敬遠していたのだが、認識を改めねばならない。
広レンジの美しい掲載をして頂き感謝の気持ちがやまない。
ところで今、私は駅前露店に敷くゴザや防寒具を探しに駅前ミニストップに来ている。
買いものついでにミニストップ特有のテーブルエリアに腰掛け、ぬくぬくと掲載誌面を眺めるというわけだ。
明るい蛍光灯下で見る、星ナビに掲載されたM78付近…。
やはり美しい…。涙があふれてきた。
私が涙を拭っていると、となりでダベっている女子高生達がこちらを白い目で見ている。
私をヘンタイ扱いしているのか?
いや、違うんだよ。私は天体写真家。しかもプロフェッショナル。
夏場はぬいぐるみコロニー君でパフォーマンスを披露する天文界きってのスターだ。
そうそう…星ナビに気を取られて、天文ガイドを確認するのを忘れていた。
はは。参ったな…今日はミニストップで夜ふかし決定だ。
こんなくだらないことに、今宵は大きな幸せを感じてしまう。
上機嫌でおでんを会計した後、私はおもむろにビニール袋から今月の天文ガイド3月号を取り出す。
縦構図でデカデカと1P掲載されるはずのM42。
デジカメ天体写真に別れを告げることになった最後の入魂作だ。
まぁ、あせらずゆっくりと…まずは広告欄から1ページずつめくっていこう。
さて、どうだろう。 この瞬間がたまらない。
| 「読者の天体写真コーナー」 |
まずは○○氏の作品。
く…くやし~!
次ページ、××氏の作品。
く…くやし~!
次ページ、△△氏の作品。
ぐ…ぐやじ~!
いかん、プロとは言え動揺してしまったようだ。…平常心、平常心。
さて…そろそろ。
…。
あれ?
おかしい。
のってない。
ひょっとして表紙掲載か?と思い表や裏を交互に見るのだが、そこにM42の写真はなかった。
ページ番号も1から192ページまで数えるのだが、数字に欠落はないようだ。
ページをぱらぱらとめくる挙動が不審に思えたか、そばにいた女子高生達はそそくさと店を出て行ってしまった。
しかし、そんなことはどうでもいい。
もしかしてボーグの広告写真に採用されたのか?と広告欄を見るのだが、そこにもM42の写真はなかった。
というか、その前にそもそも、私の愛機はボーグではない。
…。
…。
そうか、分かったぞ。
| 私はたまたま、製本段階でミスした雑誌を買ってしまったのか。 |
まったく、仕方ないな。
まぁ、明日にでも本屋で別の雑誌を見に行ってみよう。
そこでなければ別の店、そこでもなければまた別の店。
尾張地区大型書店、天文ガイドはしごツアーだ。
…。
…。
ん、待てよ。
ひょっとして、ひと月遅れの次月掲載なのか?
この冬シーズンは、まだオリオン大星雲のクローズアップは掲載されていない。
超メジャー対象M42が一年を通じて掲載されないというのは…おかしい。
そういえば、最優秀アンタレスの際はひと月遅れで発売日に編集部から連絡があったのを覚えている。
それでも今回電話が来ないのは、もしかして…。
携帯電話を取り出す。
電波状態を示す縦棒が2本だったり1本だったり…と、非常に不安定だ。
やっぱりそうだ。
この店は電波が悪い。私はこの大切な時に着信圏外にいっぱなしだったのだ。
こ…これはいけない。
このままでは天文ガイド編集部は、プロである私へのコンタクトが果たせない。
| 私に最優秀のメッセージをしようにも、圏外じゃ電話連絡が出来ないではないか! |
ごめんよ、天文ガイド編集部さん。
電波の良いところに行くから…再度トライしてみてくれ。
「寒いけど仕方ない。店を出よう。」
外は雪まじりの雨が降っている。
暖かいミニストップを後にした私は、手押し二輪車をギコギコと引き
マイホームである電波の良い駅前露店へと向かうのであった。
<終>