イメージ 1
イメージ 2













 ソフトバンクグループが資本市場との対話に苦慮している。近く発行する外貨建て社債は旺盛な需要を集めたが、国内での発行は先送りを余儀なくされた。相次ぐ大型買収でバランスシートが急激に拡大。会計処理が複雑なデリバティブ取引では損失が膨らむと同時に「10兆円ファンド」の会計処理にも不透明感が残る。足元では株価の軟調さも目立つ。
 ソフトバンクは近く普通社債を海外投資家向けに発行する。米ドルとユーロの4本建てで、発行額は50億ドル(約5400億円)程度。借入金返済に充てる。海外向けでは7月にも、劣後債の一種で負債と資本の特徴を併せ持つハイブリッド社債を発行し45億ドル(約5000億円)を調達した。
 一方、同時期に検討していた国内での劣後債発行はいったん中止したもよう。昨年9月にもハイブリッド社債を発行し4710億円を調達したが、機関投資家向けは低調で、個人向けに4000億円と多めに発行した経緯がある。
 機関投資家向けの発行額を増やそうと定期的に需要を探っている。足元でも購入意欲の強さをはかったが想定した額に届かなかったとみられる。
 投資家の評価が定まらないのは、ソフトバンクの財務の将来像が見通しにくいからだ。2013年に米携帯スプリント、昨年に英半導体設計アーム・ホールディングスを買収。連結の有利子負債は6月末で15兆円近くに増えた。
 特にスプリントの成長戦略は気がかり。ソフトバンクは携帯3位、TモバイルUSとの統合に加え、ケーブルテレビ大手との提携など様々な案を検討する。再編がどのような形になるかで必要な資金額が変わり、ソフトバンクの財務も大きく変動する。
 5月に立ち上げ、連結対象となった「10兆円ファンド」の会計処理に関する説明会を今月1日に開いたが、仮定の話も多く、消化不良と捉える市場参加者は多かった。
 国内で社債の応募が集まりにくいのは、海外勢と比べたリスク許容度の差も大きい。国内投資家の大半は、格付けが投資適格でないと購入できない社内ルールがある。ソフトバンクの格付けはS&Pとムーディーズで共に、投機的とされるダブルB格。利回りの高さが魅力的との声は多いが、格付けルールに縛られソフトバンク債を購入できない投資家は多い。
 株式市場では、昨年契約した中国・アリババ集団株の一部売却に絡むデリバティブ取引が波乱要因となっている。
 ソフトバンクは昨年6月、アリババの米預託証券(ADR)に転換できる社債を発行したが、転換時の売却益は確定済み。そのためアリババ株が上がるほど、デリバティブ損失が出る仕組み。あくまでキャッシュアウトを伴わない会計上の損失だが、業績には重荷で、17年4~6月期は2570億円の損失を計上。連結純利益が前年同期比98%減の55億円に落ち込む要因となった。
 関連会社のアリババ株の上昇は本来、ソフトバンク株にもプラス材料だが、デリバティブ損が目立って増えた今年春以降は、アリババ株に対してソフトバンク株の軟調さが目立つ。デリバティブ契約のマイナス影響はあと2年は残り、ソフトバンクの会計上の利益の押し下げ要因になる。
 ソフトバンクの金融市場での評価が高まるには、複雑さを増す事業構造や財務状況に関する、より丁寧な説明と対話が市場参加者との間で欠かせない。
2017/9/13付 日本経済新聞 朝刊



12日にドル建て債とユーロ建て債の発行条件を決めたことが分かった。米国を除く欧州、アジアなどの海外市場で機関投資家向けに募集する。日本円に換算すると総額で6648億円相当となる。主な条件は以下の通り。

◎米ドル建て
・年限=7年(償還期限の90日前からの期限前償還が可能)
・発行額=13.5億米ドル(1486億円相当)
・利率=4.750%(円換算ベース:2.08%)
・発行価格=額面の100%
・格付け=BB+(S&P)、Ba1(ムーディーズ)

◎米ドル建て
・年限=10年(償還期限の90日前からの期限前償還が可能)
・発行額=20.0億米ドル(2201億円相当)
・利率=5.125%(円換算ベース:2.27%)
・発行価格=額面の100%
・格付け=BB+(S&P)、Ba1(ムーディーズ)

◎ユーロ建て
・年限=8年(償還期限の90日前からの期限前償還が可能)
・発行額=15.0億ユーロ(1974億円相当)
・利率=3.125%(円換算ベース:2.51%)
・発行価格=額面の100%
・格付け=BB+(S&P)、Ba1(ムーディーズ)

◎ユーロ建て
・年限=12年(償還期限の90日前からの期限前償還が可能)
・発行額=7.5億ユーロ(987億円相当)
・利率=4.000%(円換算ベース:3.01%)
・発行価格=額面の100%
・格付け=BB+(S&P)、Ba1(ムーディーズ)