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 北朝鮮による6回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は11日午後(日本時間12日午前)、北朝鮮への原油・石油精製品輸出に上限を設ける米国作成の対北朝鮮制裁決議を全会一致で採択した。核ミサイル開発を急速に進展させる北朝鮮に対する懸念の強まりを背景に、米国が決議案の調整を急ぎ、核実験から約1週間という異例の早さで採択に至った。安保理の制裁決議は9回目となる。

 米国は当初、石油の全面禁輸や、金正恩朝鮮労働党委員長を渡航禁止や資産凍結の制裁対象とすることを求めていた。ただ、北朝鮮の不安定化を懸念する中ロとの交渉で、米国が譲歩し、いずれの措置も見送られた。
 決議は、北朝鮮への原油の供給、販売、移転の年間上限量を過去12カ月の総量と決めた。現状の輸出量は維持される形で、北朝鮮に実質的な打撃を与えられるかは不透明だ。一方、石油精製品の供給、販売、移転の年間上限量を200万バレルに設定した。米当局者によると、原油、石油精製品の北朝鮮への年間輸出量は計約850万バレルという。北朝鮮へのコンデンセート(超軽質原油)と天然ガス液(NGL)については全面禁輸となった。
 北朝鮮の核ミサイル開発の資金源を断つため、外貨収入源の締め付けも強化した。北朝鮮の主要輸出品である繊維製品は全面禁輸になった。また、海外で働く北朝鮮労働者の受け入れも原則禁止した。ただ、制裁委員会への報告を条件に、現時点で就労許可のある労働者については、雇用契約の満了まで受け入れ継続を認めた。米当局者によると、約9万3000人の北朝鮮労働者が海外で働いている。
 このほか、公海上で船舶が決議違反の物資を運んでいるとの情報がある場合、旗国の同意の下、加盟国が臨検を行うことを要請した。
 決議は3日(現地時間)の核実験を強く非難。平和解決を強調しつつ、さらなる核実験や発射にはさらなる重大な措置を取る決意を表明した。

 決議案は米国が主導。国連憲章7章(平和への脅威)41条(非軍事的措置)に基づき、北朝鮮への原油供給の年間上限は過去12カ月の総量とし、現状維持とした。石油精製品輸出は年間200万バレルに上限を設定した。天然ガス液や天然ガスの副産物である軽質原油コンデンセートは全面輸出禁止された。米政府によると、制裁が厳格に履行されれば、北朝鮮に対する石油関連供給を約3割減らすことができるという。
 また、北朝鮮の主要輸出品である繊維製品は全面禁輸となった。昨年の繊維製品の輸出額は8億ドル近くで、北朝鮮の輸出総額の3割弱を占める。既に北朝鮮産の石炭や鉄などは禁輸となっており、今回の措置で輸出総額の9割相当の北朝鮮産品が禁輸対象となった。
 ヘイリー米国連大使は採択後「核を持った北朝鮮は絶対に認めない。それを止めるために行動しなくてはならない」と述べ、北朝鮮の核・ミサイル開発を支える資金とエネルギーを取り上げる必要性を強調した。
 北朝鮮の貴重な外貨収入源となっている海外での北朝鮮の出稼ぎ労働者に対する制限は原案の雇用全面禁止から後退し、雇用契約が切れた後の更新が禁止とされた。先月5日の制裁決議では更新は許されていた。
 公海上で決議違反の物資を運んでいる疑いがある船舶への臨検も加盟国に要請。米国は、武力行使を含む「すべての必要な措置」を使って臨検する権限を加盟国に与える原案を提示したが、最終案には盛り込まれなかった。金正恩朝鮮労働党委員長に対する渡航禁止と資産凍結、高麗航空の資産凍結も見送られ、新たな渡航禁止対象は1人、資産凍結は3団体となった。
 米国は当初、「可能な限り強力な制裁決議を目指す」と宣言したが、ロシアと中国が石油の全面禁輸などに反対し、米国が譲歩する形で、制裁内容を弱めた修正案を採択した。