キリン傘下のキリンビバレッジとコカ・グループが来春発足させるコカ・コーラボトラーズジャパンは共同配送などでコスト削減を進める。清涼飲料業界は首位の日本コカ・コーラグループでもシェアは3割弱、ほかの大手でも1、2割程度にとどまる。アサヒビールやキリンビールの上位2社がそれぞれシェア3割を上回るビール業界に比べて群雄割拠状態で、小売りに対する価格交渉力も弱かった。
 その結果、飲料各社は長く2リットルの大型ペットボトルを中心に値下げ競争で販売を底上げしてきた。消耗戦の結果、各社の利益は大幅に低下。売上高営業利益率が2桁を超える海外の飲料大手などに比べて、国内メーカーは1桁台と低迷する。
 収益悪化は新商品開発やブランド育成も停滞させた。大手のヒット商品は減り、ブランド別ではコーヒー飲料「ジョージア」や緑茶飲料「お~いお茶」などが長く上位を占める構図が続く。利益低迷により消費者に魅力ある新商品開発につながらない悪循環に陥っている。
 国内業界ではこれまで上位が中堅・中小を取り込んで規模拡大を目指すパターンが主流だった。市場が頭打ちになるなかで、今回のように物流や調達面などコスト削減に焦点を絞った連携も増える可能性がある。

イメージ 1

 製品を小売店や自動販売機へ共同配送するなど物流面で協力したり、果汁やコーヒー豆といった原料やペットボトルなど資材を共同調達したりすることを軸に検討する。実現すれば年間数十億円規模のコスト削減効果があるとみられる。
 販売やマーケティング面の提携は協議項目に含まないが、将来は製品の相互供給や共同での製品開発に発展する可能性もある。
 国内清涼飲料市場の規模は約4兆円に上り、多くのメーカーが激しい競争を繰り広げている。スーパーやドラッグストアでは大容量の飲料が低価格で販売されるなどして収益力が悪化している。
 コカは来春に東西ボトラーを統合し、売上高1兆円規模の新会社を立ち上げるなど、コスト削減と収益力強化を進める。15年に国内2位のサントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収。猛追を受けるなか、単独でのコスト削減には限界があるとみて、キリンとの提携に踏み切る。
 キリンHDも飲料事業の収益力の低さに悩む。15年12月期に1.5%だったキリンビバの営業利益率を18年までに3%に引き上げる目標を掲げている。10%強の国内シェアの中で成長を維持するには中長期でさらなるコスト削減を進める必要があると判断した。
 国内飲料業界では11年にサッポロホールディングスがポッカコーポレーションを子会社化、12年にはアサヒグループホールディングスがカルピスを買収するなど再編が進む。コカとキリンの提携が各社の合従連衡をさらに促す可能性がある。
 コカ・コーラボトラーズジャパン(CCBJI) 国内でコカ・コーラブランドの製品の製造・販売を手掛けるボトラーのうち、コカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが2017年4月に統合して発足する新会社。国内のコカ製品の9割を取り扱い、売上高は1兆円を超える見通し。両社合計の従業員数は1万6900人。ボトラーとして世界でも3位の規模になる。
 キリンビバレッジ キリングループの清涼飲料部門子会社として1963年に設立。現在はキリンホールディングス子会社のキリンが全額出資する。主要ブランドは「午後の紅茶」「生茶」「ファイア」など。2015年12月期の売上高は3083億円で、従業員数は約3900人。湘南工場(神奈川県寒川町)、滋賀工場(滋賀県多賀町)などの生産拠点がある。