三菱商事は24日、2016年3月期の連結最終損益が1500億円の赤字(前期は4005億円の黒字)になりそうだと発表した。従来予想(3000億円)を4500億円下回る。資源安のあおりを受け、銅や液化天然ガス(LNG)の開発で減損処理が避けられなくなった。1969年度に連結決算の作成を始めてから初の赤字になる。(関連記事3面に)
 権益や出資先の価値を見積もり直したことで出る追加の減損損失は4300億円。このうち、12年までに英アングロ・アメリカンから権益を取得したチリでの銅開発が2800億円を占める。取得時に1ポンド4ドルだった銅価格が2ドル程度に下落。急回復は見込めないとして、中長期の価格見通しを3ドルに引き下げた。
 オーストラリアでのLNGや鉄鉱石開発、北海やアジアでの原油開発でも減損損失を計上する。小林健社長は記者会見で「今の資源価格が当面続くのを前提に、懸念がある案件をすべて処理した」と話した。減損計上は将来の減価償却費の減少につながり、来期以降の業績回復を早める効果も見込める。今期の年間配当は50円(前期は記念配を含め70円)と、従来予想を変えない。
 業績悪化の責任を取り全役員55人の6月の賞与をゼロにする。これを含め小林社長は年間報酬の5割、資源分野の担当役員は3割を返上する。





総合商社、「資源頼み」曲がり角 5社減損1兆円 

一時は総合商社の屋台骨を支えた資源ビジネスが曲がり角を迎えている。2016年3月期に大手5社が計上する減損損失の合計は1兆円規模と前期(約7000億円)を上回る見通し。減損額が大きい三菱商事と三井物産は初の連結赤字に転落する。資源ビジネスの変調は業績でみた業界の序列に変化をもたらし、株式市場では時価総額の逆転現象も起きている。


 三菱商事の今期は1500億円の連結最終赤字の見通し。単独赤字の00年3月期も連結では黒字だった。三井物産も23日、2800億円の減損損失が出るため今期は700億円の最終赤字になると発表。1959年に今の会社になってから初の赤字だ。

 「資源分野の資産規模が大きくなったうえ、投資マネーの流入で価格変動が激しくなった」。三菱商事の小林健社長は業績悪化の原因を説明した。

 4月1日付で社長を退任して会長に就く小林氏は、利益変動の大きい「資源ビジネス」と安定したもうけを出せる「非資源ビジネス」のバランスに力を入れてきた。14年に約1500億円でノルウェーのサケ養殖会社を買収するなどM&A(合併・買収)を進めたのも、そのためだ。今期は「非資源の業績は順調」だが、それを打ち消す勢いで資源価格が下落した。

 典型がチリでの銅鉱山開発。三菱商事、三井物産が競うように参画したが、投資を決めた11~12年は銅価格が高値を付けた時期。「当時に想定していた価格とは圧倒的に変わってしまった」(三井物産の安永竜夫社長)といい、2社合計で3700億円の減損を迫られた。同じような例はオーストラリアの液化天然ガス開発でもみられる。

 今期は伊藤忠商事が業界で初の利益トップに立つ見通し。現時点の純利益予想は1割増の3300億円と連続最高益がほぼ確実だ。岡藤正広社長は資源では財閥系にかなわないとみて、13年に「非資源ナンバーワン」を掲げた。食料や繊維の強化を推進。15年に中国最大の国有複合企業CITICと資本提携し、その効果が早くも出る。

 24日の株式市場では三井物産が一時8%安と急落し、時価総額で伊藤忠を下回る場面があった。三井物産と伊藤忠の時価総額逆転は29年ぶりだ。同日、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが三井物産の長期会社格付けをシングルAに1段階下げるなど、資源ビジネスに収益を頼ってきた商社を見る市場の目は厳しい。

 ただ資源開発は「20~30年単位でのビジネスで、供給責任もある」(小林社長)ため、すぐに撤退・縮小する考えは各社にない。SMBC日興証券の森本晃アナリストは「多額の減損計上で弱材料の出尽くし感はあるが、市場にもう1度評価されるには新しい成長シナリオを示す必要がある」と話している。

?(日経2016年3月25日)?
イメージ 1


イメージ 3


イメージ 2