経営再建中のシャープの財務改善策が8日わかった。主力2行に対する優先株発行などで資本を拡充する一方、1200億円以上ある資本金を1億円に減らし、累積損失を一掃する。経営破綻していない大企業が99%以上の大幅な減資をするのは極めて異例だ。税制上の優遇措置を受けながら収益を改善し、他社との資本提携や復配、新たな増資などを模索する。

 14日に2015年3月期の決算と合わせ発表する。約2000億円の資本支援を決めているみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の主力2行も減資に合意しているもようだ。

 シャープは12年3月期と13年3月期に計9000億円以上の連結最終赤字を計上。14年3月期は黒字化したが、単独で約200億円の繰越欠損金があった。15年3月期は2000億円超の連結最終赤字に転落、単独の累損も膨らんだもようだ。

 減資で累損をなくせば将来の復配につながり、公募増資や資本提携なども進めやすくなる。また資本金を1億円以下にすると「中小企業」と見なされ、法人税への軽減税率の適用、外形標準課税の不適用など税制上の優遇措置も受けられる。

 株主の合意が必要なため、6月下旬の株主総会で優先株の発行と減資を決議する予定だ。

 シャープは16年3月期も1000億円超の最終赤字が見込まれ、さらに財務が傷む懸念があった。今回の減増資で財務改善を進め、18年3月期末に連結の自己資本比率を約10%に戻す計画だ。

 シャープが実施する減資は、経営の元手である資本金を使って過去から累積された赤字を処理する手続きだ。減資そのものでは既存株主の持ち分は変わらない。その後の資本支援・増強などで発行済み株式数が増えれば株主の持ち分は目減りする可能性がある。

 シャープの2014年3月期の連結決算では、資本金が1218億円、資本剰余金と利益剰余金をあわせた剰余金が約2300億円あった。

 15年3月期は2000億円超の最終赤字となったもようで、剰余金が目減りするのが避けられない。さらに16年3月期も1000億円規模の最終赤字が見込まれ、剰余金がマイナスになりかねない状況だ。

 このため、減資であらかじめ資本金を剰余金に振り替えておいて、新たに生じる赤字を補填できるようにしておく狙いがある。

 シャープの場合は、再建の過程で主力銀行や企業再生ファンドが債務の株式化や優先株を引き受ける見通し。これらによって株式数が増えれば、1株あたり利益など既存株主の持ち分が損なわれる可能性がある。

 シャープは100%に近い大幅な減資だが、発行済み株式数は変わらず株式上場も維持される。これに対して破綻企業の法的処理などで使われる「100%減資」では株式は紙くずになる。既存株主はすべての権利を失う。過去に、日本航空やスカイマークが実施した手法だ。

シャープ最終赤字2300億円 15年3月期、亀山の減損響く

 シャープの2015年3月期の連結最終損益は2300億円程度の赤字(前の期は115億円の黒字)になったようだ。営業損益も400億円前後の赤字(同1085億円の黒字)となったもよう。液晶パネルやテレビ事業の苦戦に加え、主力工場の減損処理も響いた。今夏に主力取引銀行から約2000億円の資本支援を受ける方針で、従業員削減などと合わせて経営再建を急ぐ。

 赤字は2期ぶり。売上高は従来予想を1000億円ほど下回り、前の期比4%減の2兆8000億円前後となった。デジタル家電の販売不振に加え、主力のスマートフォン向け中小型液晶パネルも競争激化で単価が下落し、損益が悪化した。

 中小型液晶の亀山工場(三重県亀山市)など、将来の利益が見込めない設備で減損処理を実施。太陽電池の原材料に使うシリコンも価格下落を受け評価損を計上した。

 16年3月期もリストラ費用の計上などで最終損益は1000億円超の赤字になる見通し。リストラ効果で、営業損益は900億円程度の黒字転換を見込む。

 シャープはみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に約2000億円の資本支援を要請。両行は債務の一部を株式化する手法でシャープに出資することを内定した。シャープは5月14日に決算とあわせて経営再建策を発表する。