イメージ 1



大塚家具、父娘の対立?は続く?

経営体制を巡り、内部で揺れていた大塚家具の”お家騒動”が、一応の決着を見た。3月下旬の株主総会に株主提案を提出できる2カ月前、ギリギリの1月28日に、何とか発表を間に合わせた形だ。 同社は1月28日、大塚久美子取締役(46)が社長に、大塚勝久会長兼社長(71)が会長に就任する人事を発表。久美子氏は2014年7月に社長職を解任されており、わずか半年で復帰するという、異例の”元サヤ”人事だ。勝久会長は引き続き代表権を持つ。
 今回の人事について、会社側は「経営管理体制の強化のため」、と説明する。「当面の経営管理体制を強化するが、営業方針は現状通りで変わらない」(大塚家具)というものだ。「家具業界は(新年度入り前の)これからが繁忙期で伸びてくる。(経営への)負担も大きくなるので、新たに社長を入れた」

イメージ 2



代表取締役に2人とも残るが…

 振り返ると、勝久氏の長女でもある久美子氏が「コーポレートガバナンスの欠如」をはじめ、次々と父の路線を否定してきたのが、2009年からの社長時代。それに我慢ならなかった勝久氏が、遂に娘のクビを切ったのが、ほんの半年前の出来事だ。会社側はその理由を明確にはしなかった。が、解任された久美子氏は水面下で、勝久体制を一新するため、取締役会に向けて役員らに働きかけてきた。そして、それでも無理ならば株主提案を出し、株主総会で最後の抵抗を試みようというのが、これまでの経緯である。

  その結果として、代表取締役2人体制となった、大塚家具の新体制。表向きは両者ともに経営陣に残る「痛み分け」にも映る。世間に対し身内の醜態をさらしたくない、との心理が働いたことも想像できよう。互いの間に、どんな”手打ち”があったのか、現時点ではわからない。

父娘「激突」の舞台裏

 本業では時代の流れについていけなかった大塚家具。4年振りの営業赤字転落見込みとなる、2014年12月期の決算発表は2月13日。株主総会は例年通りなら、3月28日前後になるだろう。さらなる新たな経営陣の顔ぶれがどこかの時点で明らかにされるのかもしれない。同族企業にとって、上場とは何なのか、改めて世に問いかける格好のケースになったのは確かだ。

イメージ 3



大塚家具では久美子氏が社長を突如解任された後、創業者の勝久会長が社長を兼ねている。久美子氏は勝久氏の長女で旧富士銀行出身。自社株買いをめぐる不祥事や業績悪化もあり、会長に退いた勝久氏の跡を継ぎ、2009年から社長を担っていた。

会社側は久美子氏の解任理由について、「消費増税の反動もあり、受注が低迷したことを受け、機動的な経営判断のために体制を変えた。経験豊富な創業者の下で意思決定したほうが適切である、と取締役会で判断した結果だ」と、説明している。

だが社内からは「勝久氏がほかの幹部に威圧的な態度を続けるなど、経営がどうしようもなくなったことが原因」との証言もある。勝久氏が、自ら出した経営案以外には不満をぶつけたり、自分の案に反対する幹部には過剰に圧力をかけたりした結果、経営陣が混乱したという。

一部では勝久氏の責任を問う声もないではなかったが、当時は「取締役会で理性的な判断ができなくなっており、創業者を守ることが会社を守ること、という意見が強かった」(関係者)。結果的に、内部統制の責任者である社長の久美子氏の解任、という方向に向かった。それでも役員陣は相当もめたようだ。

実際、解任が提案された2014年7月の取締役会では、議決権のない久美子氏を除く取締役7人中、5人が賛成する一方で、社外取締役の1人が反対、1人が棄権。最終的には解任が成立している。会社側は勝久氏の独走などに対しては、「そういった事実の認識はない。取締役会できちんと決めてやっている」と反論した。大株主でカギを握るブランデスも、社長解任の理由を問い合わせているものの、明確な返答はいまだ受けていないもようだ。

目下、久美子氏は取締役ながら、取締役会を除く会議にはほぼ出席せず、会社には週数日行く程度である。会社を去る選択肢もあったが、それでは現社長を抑える人が誰もいなくなる、と判断。解任された後も会社に残ったものの、勝久氏の言動を見ても、一向にガバナンスの改善がないとして、株主提案という最後の手段もやむをえない、との姿勢に傾いたわけだ。

上場会社は所有と経営の分離が重要だ。久美子氏によれば、自分は株主および創業家の立場として、社長になるとしてもショートリリーフでよく、その次の社長は創業家以外でも構わない、など様々な選択肢を模索している。この間、経営方針をめぐり、両者の対立は根深い。久美子氏は2009年の社長就任以来、“敷居が高く”なっていた店舗の見直しを断行。顧客の裾野拡大に腐心した。

時代遅れの会社?なのか

大塚家具の従来の売り方は、店舗入り口で氏名や住所を書かせ、会員登録をさせたうえ、販売店員が一緒について回る接客方法だ。いわゆる“結婚後のまとめ買い”需要で成長し、2001年12月期には営業利益75億円でピークを迎えた。

しかしその後、住宅需要低迷に加え、ニトリホールディングスや北欧のイケアなど、新興勢力が台頭。単品の買い替え需要も増えていった。消費者は安くても高品質でセンスある商品を選ぶ時代になったのだ。このため久美子氏は社長在任時、「(一人でも)入りやすく、見やすい、気楽に入れる店作りをしてきた」。店舗にもカジュアルな雰囲気を施して、「10年以上減り続けてきた入店者数も数年前に増加に転じた」(同)。が、勝久氏は、この路線転換を許せなかったようだ。

10年前に戻す──。2014年7月に社長に返り咲くや否や、勝久氏は自分が進めてきた元の路線に一気に回帰。新聞の折り込みチラシなど広告宣伝にカネをかけ、高価な商品を前面に出しアピールしている。

さらに、久美子氏がファッションに敏感な層を取り込むため出店した青山と目黒の小型店も、勝久氏が社長に復帰すると同時に閉鎖を決定。わずか半年で、久美子氏が5年間進めてきた時計の針を、すべて戻している最中にある。これに対してある幹部は「(勝久会長は)今まで自分がやってきたことやアイデンティティまで否定されたと思ったのだろう」と推し量る。

前期は4年振りに営業赤字に転落

大塚家具は2014年末、前2014年12月期の業績について、2度目の大幅下方修正を実施。期初の約12億円の黒字から、約5億円の営業赤字へ4年ぶりに転落する、と発表した。キャッシュは豊富で自己資本比率も74%と、すぐに傾くことはないが、この先はわからい。

今でも久美子氏は父の勝久氏を、「カリスマ的に黄金期の大塚家具を引っ張り成長させたことはすばらしい」と評価しながらも、「ただ消費者は変化するので手法も変わるのが自然だ」と付け加えるのを忘れなかった。はたして今回の久美子氏の動きに、株主総会を前に、勝久氏が取締役会でどう判断するか。創業家内の攻防は次なる幕を迎えようとしている。


創業家が真っ二つに

? ?取締役の選任と解任は株主総会の決議事項で、株主の過半数の賛同がなければならない。現在筆頭株主の勝久氏は18%を保有。一方、久美子氏側は兄弟姉妹の資産管理会社「ききょう企画」で10%弱を握り、ここが株主提案をする主体になる。実はききょう企画では、2014年1月、取締役で長男の勝之氏、監査役で母の大塚千代子氏が解任されている。一方、ききょう企画側に残ったのは、5人兄弟姉妹のうち、長女の久美子氏のほか、久美子氏の弟・妹である、大塚雅之氏と大塚舞子氏が取締役に、佐野(旧姓大塚)智子氏が監査役に就任した。父の勝久氏はもともと久美子氏のやり方には反対の立場。つまり「父・母・長男」vs「長女を含むその他兄弟姉妹」の構図だ。さらには続く3月、大塚家具の株主総会では、母の千代子氏と長女の久美子氏が、他の株主らのいる面前で激しく口論をし合った、との指摘もある。

つまり、7月に本丸の大塚家具で久美子氏が社長職を解任されるより前、もう家族間で”前哨戦”は始まっていたというわけだ。ほかの大株主では、直近で10%超まで買い増した米ブランデス・インベストメント・パートナーズや、5%超を持つ日本生命などの動向が注視されている。