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東証大引け、3日続伸 411円高

 19日の東京株式市場で日経平均株価は3日続伸した。前日比411円35銭(2.39%)高の1万7621円40銭と高値引けとなり、9日以来、1週半ぶりの高水準まで回復した。18日の米株式相場が大幅に上昇し、投資家心理が強気に傾いた。世界の株式相場が揺らぐきっかけになったロシアの通貨ルーブルの値動きも落ち着きを取り戻しつつあり、幅広い銘柄に買いが広がった。

 18日の米株式市場でダウ工業株30種平均が続伸し、上げ幅は約3年ぶりの大きさとなった。運用リスクをとる動きが東京市場でも加速した。日経平均オプション2015年1月物で権利行使価格1万7500円のコール(買う権利)の建玉が比較的多い。コールの売り方が損失回避を目的に先物を中心に買いを入れ、相場上昇に拍車をかけた面もあった。

 日銀は同日まで開いた金融政策決定会合で、量的・質的緩和の維持を決定した。昼ごろ発表の結果は大方の予想通りとなったが、明らかになった後に外国為替市場で円安・ドル高が進行。日本企業の輸出採算が改善するとして買いの勢いが増した。

 JPX日経インデックス400は続伸。終値は前日比317.29ポイント(2.54%)高の1万2799.29だった。東証株価指数(TOPIX)も続伸し、33.29ポイント(2.42%)高の1409.61で終えた。

 東証1部の売買代金は概算で2兆8846億円。売買高は27億930万株だった。東証1部の値上がり銘柄数は1575と、全体の約85%を占めた。値下がりは200、変わらずは83銘柄だった。

 グループの部品事業を再編すると伝わったトヨタが上昇。対象に挙がったシロキなども上げた。好業績観測を手掛かりにセブン&アイが買いを集め、住友不など不動産株の値上がりが目立った。三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGの3大銀グループがそろって上昇した。一方、マーベラスが下落。エプソンの値下がりが目立ち、ソニーが売りに押された。

日銀:金融政策の維持を決定、1対8-原油安と追加緩和見極め

日本銀行は19日の金融政策決定会合で、政策方針の現状維持を1対8の賛成多数で決めた。木内登英審議委員が反対票を投じた。日銀は当面、原油価格下落が経済・物価に与える影響と、10月31日の追加緩和の効果を見極める方針だ。

日銀はマネタリーベースが「年間約80兆円」に相当するペースで増えるよう金融市場調節を行う方針を据え置いた。長期国債は「年間約80兆円」、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)はそれぞれ「年間約3兆円、年間約900億円」に相当するペースで保有残高が増加するよう買い入れる方針も維持した。

ブルームバーグ・ニュースがエコノミスト33人を対象に11日から16日にかけて実施した調査でも、全員が現状維持を予想した。

日銀は10月31日、原油価格の大幅な下落などが物価の下押し要因として働き、「デフレマインドの転換が遅延するリスクがある」として追加緩和に踏み切った。原油価格は当時から一段と大きく下げており、日銀が来年1月の中間評価で示す物価見通しと、それを受けてどのような政策対応を行うかについて関心が高まっている。

日銀は足元の景気について、「基調的には緩やかな回復」を続けているとの情勢判断を維持。先行きも「緩やかな回復基調」を続けるとの見通しを維持した。消費者物価の前年比については、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて「当面現状程度のプラス幅で推移」するとの見通しを据え置いた。

原油価格は下落幅を拡大

ドバイ原油価格は18日正午現在、1ドル=55.97ドルと、日銀が追加緩和を行った10月31日から33%下落しており、中間評価があった7月15日から10月31日までの下落率(20%)を大きく上回っている。

日銀は10月31日の決定会合で、消費増税後の需要の弱さと「原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」と指摘。「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」として追加緩和に踏み切った。10月の生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)前年比(増税の影響除く)は0.9%上昇と前月の伸び(1.0%上昇)を下回った。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「このまま原油安が定着すれば、来春に生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)前年比は0.5%を割り込む」と予想する。

ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは「原油価格などによって不確実性が高いが、2015年度を中心とする期間に目標達成とする現在の見通しの修正を迫られる時点では、追加緩和を余儀なくされる」とみる。

サプライズ緩和行いにくい

野村証券の松沢中チーフストラテジストは「日銀執行部は、原油安が需要要因であるか供給要因であるかは問わず、インフレ期待がまだ不安定な時期にこれを押し下げてしまうリスクに対して追加緩和で対応する姿勢をとっている。それゆえ市場では原油安が進むごとに追加緩和への期待が高まり、金利低下の流れが強まりやすくなっている」という。

もっとも、日銀が1月に追加緩和を行うとの見方は今のところ多くはない。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「足元で円安の負の影響を懸念する声が出るなか、黒田総裁自身も円安の影響についてのスタンスを微修正しつつあり、急速な円安を招きかねないサプライズ緩和は以前よりも行いにくくなっている」と述べた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「中間評価では、原油価格の下落による物価押し下げ圧力が需給ギャップの改善による物価押し上げ圧力で相殺されるとのロジックで、15年度の物価見通しを維持する可能性が高いのではないか」と指摘。原油価格の下落に対し、日銀は「静観姿勢」とみる。

松沢氏も「日銀内も一枚岩ではなく、原油安は経済にプラス、中長期のインフレ期待にとってもプラスとの考えを示す委員も複数いる。5対4という異例の僅差で政策決定をしているだけに、原油安が株やクレジット市場に相当悪影響が出るまでは、容易に次の緩和策を提案、再び強行に多数決という荒っぽい政策運営は避けたいだろう」としている。木内審議委員は独自提案も否決

木内登英審議委員は19日の決定会合で、2%の物価安定目標の実現を「中長期的に目指す」とした上で、量的・質的金融緩和を「2年間程度の集中対応措置と位置付ける」との提案を行ったが、8対1の反対多数で否決された。

黒田東彦総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は1月26日に公表される。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。