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住商株が急落=巨額損失計上で―東京市場
9月30日の東京株式市場で住友商事株が急落し、一時は前日比182円安(13.2%下落)の1195円まで値を下げた。終値は166円50銭安(12.1%下落)の1210円50銭。前日の取引終了後に、米国の石油開発事業などで合計2700億円の損失が発生すると発表。投資家の失望が広がった。住商は巨額の損失計上を受け、2015年3月期の連結純利益予想を、100億円(従来予想2500億円)に下方修正。期末配当予想も未定(同25円)とした。

住友商事は29日、米国のシェールオイル開発などで投資回収が見込めなくなり、2015年3月期の連結決算に減損損失2700億円を計上すると発表した。純利益予想も2500億円から100億円に引き下げる。「シェール革命」の追い風もあってこの数年、資源ビジネスに力を入れてきたが、中村邦晴社長は記者会見で縮小・見直しの可能性を示唆した。減損損失は4つの事業で計上する。最も大きいのが1700億円の米テキサス州でのシェールオイル開発だ。12年に約1100億円を投じたが、取得後の試掘で「想定した以上に地下の油層が複雑で採掘コストがかかる」(中村社長)ことが分かり、投下資金を回収するほどの生産量が見込めないと判断した。

鉄鉱石や石炭の価格下落を受け、12年に投資したオーストラリアの石炭開発で300億円、10年に投資したブラジルの鉄鉱石開発で500億円を計上する。オーストラリアの石炭鉱山は15年1月末で操業停止することも決めた。米国のタイヤ事業でも200億円を計上する。4~9月期決算は減損損失計上で300億円程度の最終赤字となる見通しだが、中間配当は25円(前年同期は23円)実施する。年間の配当は50円の予想(前期47円)から「未定」に変更した。

住友商事、「資源」で高値づかみの大失敗
資源バブルに乗り、資源バブルで失敗した。
とりわけ、シェールオイル・ガス関連権益の投資損失が、今回目算の狂った最大の要因だ。12年6月に権益を取得した、米テキサス州のタイトオイル(シェールオイル)開発事業で、1700億円の減損を計上することが大きい。 「事前の調査段階では収益化の確度は高いと思っていたが、掘ってみると地下の形状が予想以上に複雑だった。このため、採掘にコストがかかることになり、可採埋蔵量の下振れも余儀なくされた」(中村邦晴・住友商事社長)。将来の収益見通しを大幅に引き下げた結果、今回、残存簿価19億ドル(2070億円)のうち、8割強を損失として計上せざるをえなかった。

シェールに石炭、鉄鉱石でも減損
シェール関連だけではない。これに加えて、豪州の石炭事業で300億円、ブラジルの鉄鉱石事業で500億円を、石炭価格や鉄鉱石価格の下落を反映し、減損を実施。さらに米国のタイヤ小売り事業でも200億円の減損を行う。シェールオイル・ガス関連では、他の総合商社も、大なり小なりの減損を余儀なくされてきた。直近では伊藤忠商事が米オクラホマ州にある権益で、290億円超の減損損失を今年4月に発表したばかり。シェールの「高値づかみ」は、業界全体にダメージを及ぼしている。
とはいえ、今回の住友商事のように、千億円単位もの損失を出した例はない。2009年12月、アジアの企業としては最も早く、現地企業とパートナーを組んで、シェールガス開発に参入したのが住友商事だ。本来なら経験が最も豊富といえる企業が、なぜこれほどまで大きな投資損を招いたのか。

中村社長は住友商事固有の事情についてこう述べている。
「うちの資源事業のポートフォリオは非鉄金属に偏っており、かねてから金属分野、石油・ガス分野の権益拡充が課題だった。その一環で、他社がまだ手を付けていなかったシェールガス・オイル事業に、当社の石油・ガス事業強化の希望を託すことになった」。
だからといって、「無理して投資をしたわけではない」と中村社長は弁明する。しかしながら、シェール革命に乗り遅れまいとするインセンティブは、同社の場合、ひときわ大きかったのは事実だ。

もうひとつ抱える大きな”爆弾”
 実は、住友商事は資源事業で、さらにおおきな”爆弾”を抱える。それがアフリカのマダガスカルで、カナダ、韓国企業と共同開発を進める、世界最大級のニッケル開発事業、通称「アンバトビー・プロジェクト」だ。計画を華々しく打ち上げたのは2007年のことだった。当初は10年後半に生産開始すると豪語していたものの、ニッケル価格低下や、現地の政権交代、採用する生産技術の複雑さなどが相まって、延期が続いた。そして今年に入って、ようやく生産を始めたが、現在も計画より3~4割低い生産量にとどまる。開発投資は積み上がり、簿価は2000億円近くまで膨れ上がっている。2015年6月にはアンバトビー・プロジェクトの完工(90%稼働)を見込むが、今後の計画進捗次第では、これも大きな減損を生む恐れがある。
アンバトビー・プロジェクトだけでなく、ここ数年の同社の資源事業を引っ張ってきたキーマンは、ほかならぬ中村社長自身だ。今回、減損対象になった資源権益にも、中村社長が資源・化学品事業担当の専務・副社長時代に行った案件が含まれている。

住友商事が巨額損失計上 ── シェールガス・ブームは幻想か?
THE PAGE 10月1日(水)18時0分配信
住友商事は9月29日、米テキサス州におけるシェールガスの開発事業で生産量が想定を大きく下回る可能性が高くなったとして、約1700億円の損失を計上すると発表しました。また、石炭価格の下落によってオーストラリアにおける石炭事業においても損失を計上することになり、合計の損失額は2400億円に達する見込みとなっています。シェールガス事業はここ数年、大ブームとなっていましたが、一方ではバブルを警戒する声も出ていました。果たしてシェールガスのビジネスは幻想だったのでしょうか。
同社はテキサス州にあるシェールガス開発会社に出資し、2012年から採掘プロジェクトへの投資を行ってきました。しかし、出資した会社の開発実績を詳しく分析したところ、効率的な石油やガスの回収が難しく、投下資金が回収できない可能性が高いことが明らかになりました。このため、同プロジェクトに対する出資金や油井の設備などについて減損処理する必要に迫られており、その合計は1700億円になる見込みとのことです。 米国はここ数年シェールガス・ブームに沸いていました。シェールガスとは岩盤層に含まれる天然ガスのことを指します。以前は、採掘コストが高いことから開発が見送られてきましたが、近年、新しい技術の開発で採掘コストが劇的に低下し、次世代エネルギー源の主役に急浮上してきました。 特に米国はシェールガスの埋蔵量が豊富といわれています。国際エネルギー機関 (IEA)の調査によると、米国は近い将来、世界最大のエネルギー産出国になり、すべてのエネルギーを自給自足できるようになる見通しとのことです。米国は世界でもっとも安価にエネルギーが手に入る国になったことから、米国へ工場を回帰する動きが急ピッチで進んでいます。 しかし、こうした話はあくまで米国全体のことです。シェールガスの油田は、従来の油田とは異なり、規模の小さな油田が多数、寄せ集まって出来ています。このため、ひとつひとつの油田の採掘がうまくいくのかは、やってみなければ分からないというのが現実といわれます。実際、2013年には、シェールガス開発大手のGMXリソーシズが、米連邦破産法11条(いわゆるチャプターイレブン:日本の民事再生に相当)を申請するなど、頓挫する事例も増えてきています。米国のシェールガス・ブームは今も健在ですが、残念ながら住友商事が関わったプロジェクトはこのような結末を迎えてしまったわけです。しかし、商社には米国で生産されたシェールガスを日本に輸入するという仕事もあり、油田の開発だけが収益源ではありません。商社はこのあたりのバランスをうまく取りながら、全体のリスクを管理していく必要がありそうです。

タイヤ販売事業も大赤字、ドロ船買収・・・結果失敗
住友商事および米国住友商事の子会社であるTBC Corporation(本社:米国フロリダ州)は2012年5月1日、北米を中心に自動車修理・メンテナンス事業を展開するMidas Inc.(本社:米国イリノイ州、以下マイダス)を、総額約3億1千万ドル(約250億円)で買収した。
TBCは、米国内に56カ所の倉庫と、直営とフランチャイズを合わせた約1200店舗を保有する、交換用タイヤ販売および自動車修理・メンテナンス事業会社。タイヤ年間販売本数は約2500万本で、米国の交換用タイヤマーケットの10%を占め、独立系としては最大の販売本数を誇る。住友商事およびSCOAは、2005年に同社を買収し、米国におけるタイヤ販売事業の拡大に努めていた。一方、マイダスは、フランチャイズを中心に、米国、カナダの1500店舗を含め、14カ国で2250店舗以上を展開。世界でも最大級の自動車修理・メンテナンス事業会社であり、特に米国における消費者からのブランド認知度は90%を超えているそうだが。米国の自動車アフターサービスマーケットは、車の保有期間の長期化にともない、修理やメンテナンスの需要が堅調に拡大。TBCは今般のマイダス買収によって、北米店舗数を2700店に拡大し、同需要の一層の取り込みを図り、TBCのタイヤ販売ノウハウのマイダス事業への活用や、各種消耗品やパーツなどの共同仕入れなどによるシナジーによって、収益基盤の拡大を目指す計画だった。


資源価格の低迷
住友の巨額損失の背景には、鉄鉱石や石炭などの資源価格の急落も指摘される。
ロイターによると、最大の購入者である中国の需要が緩んだのと同時に低価格の採掘業者が生産を拡大したため、鉄鉱石の供給が過剰となっている。今年の鉄鉱石価格は42%以上下落している。月曜日、中国向け鉄鉱石の価格は1トン当たり77.70ドルで、2009年9月以来の下落となった、とSteel Indexは伝えている。住友は、鉄鉱石価格の下落により、ブラジルの鉄鉱石プロジェクトの拡大が延期されたために500億円の損失を見込んでいる。また、石炭価格の低迷のため、オーストラリアの炭鉱も1月末に閉鎖し、300億円の損失を見込む。住友の巨額損失公表に伴い、三菱商事や三井物産、丸紅などの商社株も下落している。資源価格の下落が商社セクター全体に損失をもたらす可能性が危惧されている、とロイターは伝える。