夏、美穂が死んだ。
そのことに涙を流すことなく
葬儀に行った。
椅子に座り美穂の遺影を
ボーッと眺めている。
その時、後ろから
美穂が僕を
呼ぶ声が聞こえた。
「参斗」
僕はすぐに後ろを
振り向いた。
しかし、それはただの幻聴
僕の妄想にすぎない。
「すまなかった!!!」
今度は本当に後ろから
声がした。
博士だ。ユウガオ博士だ。
博士は美穂の両親に
土下座をしている。
「本当にすまなかった!!」
「そんな、別に橘さんの
せいじゃありませんよ」
最初に美穂の母
「事故だったんです
さっ顔をあげてください」
次に美穂の父が言った。
でも博士は顔をあげなかった。
「いいや、ワシのせいじゃ
ワシが美穂を殺したんじゃ」
博士は自分を責めている
きっと、未来モニターを
美穂に見せたから
未来が変わってしまったと
考えているんだろう。
未来を知らなければ
未来は変わらなかった。
美穂はアイドルになっていた
そう考えているんだ。
でも博士は悪くないと
僕は知っていた。
僕はあの雨の日の
やりとりを思い出す。
「僕高い所苦手だろ?
美穂1人で乗らないと
行けないじゃん」
「大丈夫だよ
参斗が乗らないなら
私も乗らないから」

「参斗が乗らないなら
私も乗らないから」

「私も乗らないから」

死因は観覧車の落下事故
だったっけ……
僕はまた、美穂のあの言葉を
思い出した。
「大丈夫だよ
参斗が乗らないなら
私も乗らないから」
あぁそうか…
僕なら美穂を助けれた。
僕は美穂を見殺しにしたんだ。
博士は悪くない
僕が美穂を殺したんだ。

葬儀の後
亮輔は僕を呼び出した。
「これ美穂の母さんから
美穂の日記だってよ
お前に貰って
欲しいんだってよ」
その日記は13冊あった。
僕はそれを読む気はない。
読む資格なんてないからだ。
亮輔は続ける。
「それとさ…こんな時
言うのもなんだけど
俺引っ越すんだ」
僕は返事をしなかった。
僕はたいして
驚きもしなかった。
死に比べたら
たいしたことではない。
「ずっと前から決まってたんだ
だから美穂に気持ちだけでも
って思ってたし
お前たちを結ばせたかった」
その時あの時の亮輔の
寂しそうな表情の原因が
わかった。
「そんなに抱え込むなよ
美穂のためにも
前を見て歩くんだ」
「……」
その言葉にも返事を
しなかった。
それから数日後
亮輔は行ってしまった。
また別れを告げぬまま
どこかに行ってしまった。
僕は1人になった。