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「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」

この小説はこの言葉で始まる。
なんとも上手い書き出しだなぁと。
作家の方は一行目はものすごく気を使って書いていると思うけど(舞台で言ったら冒頭の3分で客を引き付けろっていうのと同じことなんだろうなぁ)この一行はかなり秀逸だと思う。
読んだ瞬間に「??」が頭の中を飛び交う。

とりあえず読み進めていくうちにこの家族はどうやら少し変わっているらしいということがわかってくる。

この話の語り手、佐和子の家族はお父さんは冒頭の宣言をするし、家族仲は悪くないように見えるのに、お母さんは別の所に住んでいて、ご飯はつくりに帰ってくるけどご飯を作り終わったら、また自分が一人暮らしをするアパートに帰っていくし、お兄ちゃんはお兄ちゃんでマイペース過ぎる部分がある。

・・・・こうやって書くとバラバラな家族なの??って思うけど、絶妙なバランスの上に家族関係が成り立っているように見える。
その家族を家族たらしめている一つの小道具が「毎日の食卓」。
佐和子の家では「朝ごはんは家族そろって食べること」という決まりがあって、その毎日の習慣が家族を守っている部分があるのだ。
家族に大きな事件があった時も。

読み進めていくとわかるのだけど、佐和子の家族は過去に、家族にとっては「大きな事件」と呼べることが起こっている。
その中で家族を成立させるためにそれぞれが考えた結果が今の家族の形なのだ。

でも、日々は流れていくし、佐和子も成長していく。
佐和子は普通であろうとするし、家族がちょっと変わっている分、自分はいわゆる「普通の道」を歩きたいと思っている。
父さんにも母さんにも、お兄ちゃんにもそれぞれ変化があるし、突然降ってわいた理不尽な事も家族がいるから日常に戻れるということもあるのかもしれない。

家族だって別の人間だから、それぞれがお互いの対応に困ったり、距離感を計りながらそれでも一番近くにいる自分以外の他人に救われることはあるのかもしれない。

だってやっぱり家族は食卓を一緒に囲むものだから。
=日常をともにするものだから。

家族は作るの大変だけど、その分、めったになくならないからさ。
だけど、大事だってことは知っとかないとやばいって思う。


これは佐和子の家族の外にいる人物、お兄ちゃんの彼女ヨシコさんの言葉だけど、なるほど、確かに。と思う。

家族を家族にしていくのも中々大変だよね。