読み終わりました、桐野夏生の『燕は戻ってこない』


また最高に情緒を乱されて、読み終わるのが嫌で仕方ないのに読まずにはいられない、どうしようもなく引き込まれる小説でした。

(はー、もう、大好きすぎる桐野夏生!)



ちょっとネタバレありの読書記録です〜!




妻の不育症と卵子の老化で子どもは諦めざるを得ない夫婦と目の前の困窮から抜け出したい女性。




困窮した女性は代理母になることでお金を手に入れるけど、10ヶ月の妊娠、痛みを伴う出産、産んだ子どもとの離別、出産後の体の変化、これら全てをどれだけの金額とならトレードできるのだろう。

(私なら1億でも嫌だけど!)



自分の子宮を金銭と交換することは体を売ることとイコールなのではないか。

いやでも本気で子どもを欲しがる夫婦の人助けなのか…うーん。



“生物として子どもが出来ないと分かっても、どうしても欲しくて、他人の子宮をつかって、人工授精をして、他人に産ませる”ことは倫理観としてどうなのか。

本来人の生き死にはは神の領域ではないのか、科学の力で“生”の部分を操作していいのか。



本文に『自分たち夫婦が、これから生まれてくる二人の人間の運命を決めたのだ。恐ろしいことではないか。』とあるけれど、これが冷静に考えた時の本音だと思う。

産まれてくる赤ちゃんもいずれは感情を持った1人の人として望もうと望まざると自分の人生を生きていかなきゃいけないのに。




そして、自分が子どもを欲しいからと、他の女性の体を使うことに対する罪悪感。

これは女性にはあるけど、男性には分からない気持ちだからこそ夫婦間の齟齬がでるのはそうだろうな、と。



全員が少しずつ想像力が欠如しているから動き出してしまった話に見えました。





本来は性、生殖、生、全部繋がっているのにそれをバラバラにして組み合わせたら歪になるのも仕方ないんだろうな。




ラストは思っていたよりは(私桐野夏生だと裏切られることにビビりすぎてかなり警戒しちゃうから泣き笑い)悲惨じゃなかったです!笑

いやでもこの後大変な人生が待っているんだろうけど。





生殖医療ビジネスを軸としているけれど、女の人生について改めて考える良い本でした!

どんな立場の方が読んでもどこかしらに面白みを感じられるはずです二重丸




ちょっとネタバレしてしまったけれど、ご興味ある方是非!





この小説、今NHKでドラマ化されているけどどうやって放送しているんだろう…



かなり大事な登場人物(りりこ)なしでは進まないけど、この子あからさまな性的ワードを攻撃性を持って連発するんですよね泣き笑い

もちろんそれがこの小説における大事なパーツなんだけど。。。


私はドラマ見ていないけど、見た方の感想も気になります!