船長は、長旅の疲れを、癒すため、副船長に、全権を委ね、自分は、業務から解放された、貴重な時間、を、用いて、今まで、記録し続けた航海日誌、それに、無線記録を、見返した。分厚い日誌には、この、航海に出る前の記録も、含まれていた。無線記録にも、自分の知らないやり取りも、含まれていた。
嵐は止まないものの、心なしか、風が和らいでいる気がした。
落ち着き始めた心で、もう一度、記録を見渡すと、まだまだ、、気付けなかった事が、あることに気付く。いつもは、甲板に打ち付ける、波しぶきの音は、耳障りだったけれど、その時は、なんだか、優しい音、に聴こえた。机に置いたコーヒーカップは、波に合わせて、行ったり来たりしようとする。「ふぅ~、そうだったのかぁ。」船長は、あの世界の人の、心の動きに、少し、触れられた気がした。「やっぱり、慌ただしさは、時に、大切な物を見失わせてしまうんだ。夢を実現させようと、躍起になったことが、かえって夢を遠ざけてしまうことが、あるんだな。」船長が、思い描いた、あの世界の人と、実際の人は、少し、違うのかもしれないと、感じ始めた。環境が人に与える影響を、もどかしく感じた。