5/2〜5/8は、国際オステオパシーヘルスケア週間と言うことで、普段は3日坊主でなかなかできない(笑)一週間連続更新に挑戦中!
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茶の湯とオステオパシー(7)最終回
〜陰の仕事の価値を気づける自分でいよう〜
水屋というのは、茶室の横の廊下にある道具を準備するスペースのこと。
ここで茶室に運ぶお茶碗を清め、茶巾を仕込み、水差しに水を入れ、などと、お稽古の始まりの前に気合を入れます。
茶道は「型」が基本であるというのは以前お話ししました。
もちろん、この水屋でも作法がしっかりと決まっています。
道具を置く位置、扱う順番、などなど。
手拭きや雑巾にも、置く場所や畳み方がちゃーんと細かく決まっているのです。
水屋での仕事は、いわゆる「陰の仕事」。
誰が見ているわけではありません。
「道具を清める順番〜?どれからでもいいんじゃ
なーい???」
「茶巾を絞るお手前なんて省略しちゃえ!」
「手を拭いたついでにお茶碗の底の水滴も拭いちゃえ」
などと、省略したり、適当にしちゃう時に限って、師匠が遠くから見て渋い顔をしていた。。。
なんてことは多々ありました。涙。
誰もみていなくても、
所作の一つ一つに込められた意味と、
ものを大切に扱うこと、
そして何より、これからお茶をお出しする方へのおもてなしの心を深めるために
手数と心を減らしてはいけませんよね。ただただ反省。
茶道は、「影の仕事」がいっぱいあります。
季節に合わせた道具の取り合わせを考え、
花を活け、軸を飾り、
抹茶の粉末を細かく裏ごしして棗に仕込み、
お菓子を用意して、
畳や窓を拭いて、
玄関も水拭きして、
庭を掃き清め、
つくばいを使うので庭仕事(土いじり)もしなければならない。
お稽古でたった一人の時でも、
私の師匠は、この「陰の仕事」を
いつもいつも一人で当たり前のように完璧にしてくださっていました。
「茶道は、優雅に見られるけれど、肉体労働よ。」
90歳をすぎた師匠はよくおっしゃっていました。
改めて感謝の気持ちでいっぱいです。。。
私たちの身体の中でも「陰の仕事」はいつも知らないうちに行われています。
食べすぎたら消化酵素をいつもより多く出してくれるし、
怪我したら赤血球や白血球が総出で集まり、細菌を殺し、傷口を塞ぐために働いてくれる。
どんなにぞんざいに扱っても、知らない間に一生懸命働いて、もとに戻ろうとしてくれている。
ここのところ、マンガ『はたらく細胞』シリーズを愛読しているので、身体の中で擬人化された細胞たちが一生懸命がんばってくれているのを想像することが容易になってしまいました。照。
自分が快適に過ごせているのは「影の仕事」をしてくれている存在がいるから。
この状況は当たり前ではない。
調子が良かったり、勢いがあるときには特に、そのことについてついつい忘れてしまうけれど、
改めて、今の自分の状況に「感謝」を忘れないように過ごそうと思います。
日本古来から続く『道』とは、
所作や知識を磨くだけではなく、
何もないところから、いかに大切な事を気づけるかが、本質だと思っています。
おかげ様で、ばたばた忙しい中でも、
「間」を感じることの大切さ、
物事の裏にひそむことも読み取ること、
本質を見極める判断力を、
日々忘れないように過ごす努力ができている、と思っています。
それにプラスして「陰徳修行」ももっと極めていかねば!
「陰徳」とは人に見えない徳を、人から見えない状態で積む修行態度を示す禅宗の言葉だそうです。
「誰も見ていないから、これくらいでいいか」となりがちな私。
他者からの評価を前提としない努力や達成は、
お茶の道も、人生の道でも、
さらに深い叡知を導き出してくれることでしょう。
日々精進。一生精進。です。