少年社中 第32回公演「三人どころじゃない吉三」を紀伊国屋ホールにて観劇してきました!
基本公演情報
少年社中 第32回公演「三人どころじゃない吉三」
東京公演:7/22~7/31 紀伊国屋ホール
大阪公演:8/6~8/7 近鉄アート館
脚色・演出:毛利亘宏
あらすじ-----------------
ある夜…同じ名前の三人の盗賊が出会う。その名前は「吉三」。
僧侶崩れの和尚吉三。浪人のお坊吉三…。そして、女の恰好をして盗みを働くお嬢吉三。
名刀「康申丸」と「百両の金」は、運命に絡め取られた人々の手を渡り巡る。
三人の吉三は悲劇に向かって疾走し、死に至る…。
そして、お嬢吉三は地獄に落ちる。
「もっかい機会をやるから悲劇を止めろ!」
情に厚い閻魔はお嬢に語る。
かくしてお嬢はやりなおす。三人の吉三が出会ったあの日から。
何度やってもバッドエンド!しかも、そのたびに吉三が増える。
お婆ァ吉三に、お鮨吉三。お化け吉三にお稲荷吉三。はては、オンリーワン吉三まで!
運命は縺れに縺れ、修復不能になっていく!
果たしてお嬢吉三は悲劇に終止符を打つことができるのか?
運命が変わるとき…夏のお江戸に雪が降る!
引用元:少年社中 第32回公演 | 三人どころじゃない吉三公式サイト
DVDでは色々見たりしていたけれど、初めての生少年社中さんの舞台!
しかも古典演劇の脚色とあって楽しみにしていました。
▼お話の内容
前半半分くらいは概ね原作「三人吉三」のお話をなぞらえて進んでいきます。
庚申丸と百両を人の因果にたとえて破滅していく三人吉三。
古典吉三の内容を知らなくても、その前半部分で大体のあらすじを知ることができるのでありがたかったです。
偶然か必然か、出会った3人の吉三が百両を巡って最終的には死んでいく。
地獄に落ちたお嬢吉三は庚申丸(の付喪神?)に何があったか教えてやる、と言われそこから吉三の1周目がはじまります。
1周目が終わったお嬢吉三は、庚申丸からもう一度あの時をやり直すようにと言われ、これが地獄の沙汰か、わかったやってやる!!と啖呵を切ってやり直すものの、何度やっても結末が変わらない。
何回繰り返したかわからなくなるころ、和尚吉三が「今はお前の番か」と謎な言葉を発します。
そこから、何度も時代を繰り返していたのはお嬢だけでなく、和尚、お坊もだったということが判明しました。
何度やっても結末が変わらない。それでもお嬢は繰り返し、ラストは誰もが幸せになる大団円。
最終的には花型のお嬢吉三となって幕が下りる、という感じの内容。
古典には疎いので初日はまっさらな状態で、二回目以降は三人吉三巴白浪および廓初買のあらすじを頭にいれて臨みました。
端的に言ってしまえばいわゆる「ループもの」としての脚色。
もともと数時間かけてやる三人吉三の演目を、最初の半分で流してやるのでスピーディーでめまぐるしい展開運びになっています。
でも部分部分でしっかりと間を取って余韻も持たせていて、すごい緩急のある作品という印象。
若干、ループしているところで中だるみを感じるものの、ラストの大立ち回りでの盛り上がりがすごいのであんまり気にはならなかったです。
普段若手の俳優さんのお芝居をメインで観に行っているので「The 演劇」というものにあまり触れていなかったのですが、はじめて見た社中さんの舞台は、小さな小屋で観ているような気持ちにさせるお芝居でした。
▼三人の吉三
お嬢、お坊、和尚の三人の吉三。
数奇な運命の中で契を交わす三人。
今回はお嬢がメインということだったので、感情の振り幅はお嬢に寄る感じに。
お嬢吉三を演じる鈴木拡樹さん。
正直2.5で2回ほどみた程度…しかも去年一昨年だいぶ前、だったしほぼ初見のような感じでした。
某刀舞台でも言われていましたが、立ち居振る舞いがとにかく綺麗。
女役状態の時の歩き方のスムーズさがほんとに滑るような歩き方で、初日下手で見ていたので扉から出てくるところをちょうど見れたんですが、びっくりするほど綺麗でした…。
それから声の使い分け。
最初お嬢吉三は百両を奪うために女として夜鷹のおとせに近づくので、猫なで声の女声。
そこから、百両を奪う瞬間の男声への変換。
切替すご…!とただただ感心しました。すごい人だなぁ。
拡樹くんのお芝居で一番印象に残っているのは、何度やっても何度やっても結末が変わらない、周りでどんどん人が死に、一人倒れ、二人倒れしていく中でもう一回、もう一回だとなんどもやり直していくシーン。
照明効果もあってものすんごい綺麗でした。
それからやっぱり最後のお嬢吉三の厄落とし。
艶やかな舞台衣装を身にまとい、ほんとうに晴れやかな顔で厄落としのセリフを読むんですよね…。
あのシーン、本来の三人吉三の最後に櫓に登って太鼓を叩くシーンを模してるのかな?
すごく素敵でした。
厄落としのセリフは最初と最後で語り口調の違いもあって同じセリフを二度劇中で読んでいるはずなのに、全然違う印象を与えてくれるのも良かったなぁと思います。
吉三の内容とは別だけれど、舞台上の拡樹くんは怖いなぁと思うこと多々。
もちろん良い意味でなのですが、悲壮感のある役が似合いすぎるというかなんというか…。
普段が穏やかで物腰の柔らかい人というイメージなので、舞台上に上がった時のあの苛烈な感じや悲痛な印象を感じさせるのはさすがなんだろうなぁと思いました。
和尚吉三、お坊吉三役の岩田有民さんと堀池直毅さん。
社中さんのメンバーの方たちって本当に「演劇」としての演技をしてくれるので、芝居を観に来たんだって思わせてくれていいなぁと思いました。
演目が演目だったからなのか?普通よりもさらにわざとらしく大きな動きが多い舞台だったけど、それがまた醍醐味だと思わせてくれます。
和尚の好きなシーンはやっぱりおとせと十三郎を手に掛けるシーン。
正直、男同士の兄弟の契や義理人情ってよく理解できない部分だなって今も思っていて。
親を殺され、家族を斬ってまで義理立てるって、どうゆう気持ちなのだろう、と考えさせられます。
あとは突然フリースタイルダンジョンが紀伊国屋ホールに現れるのはおもしろかったです(笑)
お坊はすごく声が良くて!!
聞いてて安心できるような声質ですごく好きでした。
安森の御家再興や、百両を巡って兄貴分和尚の父を殺してしまった葛藤など、悩みどころの多いキャラクターだったなぁと思います。
友達が観た後に「切腹がリアル」と言っていたので注視して見ていたのですがほんとにリアル…いや切腹見たこと無いけど。
▼庚申丸
庚申丸という刀(の付喪神、多分)役の山本匠馬さん。
舞台通うようになって暫くしてから、友達に見せてもらった「戦国男士」がほぼほぼ私の中での匠馬君の印象だったのですが、彼もすごく良い声でした。
最後お嬢の厄落としの時に、「御厄払いましょう、厄落とし」を匠馬くんが言うのですが、ここがすごい好き。
庚申丸の役どころは「傍観者」かな?
もし自分が手を下せるなら、自分を折ってしまうのが一番早かったよね…と。
鉄に戻りたいと言っていたし、そもそも自分がいなければこんな結末にはならなかったかもしれない。
庚申丸自身を現世で動かせるようにしないところがまた、地獄の沙汰なのかなと思いました。
庚申丸とお嬢吉三が何度も何度もループを繰り返すときに、逆再生のような動きをするのですが、それが1回、2回、3回と繰り返していくうちにやがてふたりとも憔悴しきっていくのがしんどいけど印象的なシーンです。
▼木屋文里の話
とりあえず欲目もあるんですけど、中村龍介さん演じる木屋文里めちゃくちゃ色っぽくてカッコ良かったです。と言いたいだけ。
ではないですが。
今では端折られて上演されていないという、木屋文里と一重の話もちょいちょい調べてみました。
そもそも遊女一重に入れ込み過ぎて店が傾き、通うのをやめたら今度は一重は余命幾ばくも無い上に子供がいることがわかり、妻が行って来なさい!とけしかけて子供を引き取る…(だいぶ端折ってるけどニュアンス)って感じだそうです。
三人どころではない吉三内での文里は「漢の中の漢吉三」という役回り。
兄お坊の悪行から、迷惑をかけてしまうと結ばれることを拒否し、指切りをした一重の全てを受け入れるシーンがすごく好きでした。
「格好良い」芝居だけではなくて少しお茶目な演技も入れてくるところは龍くんらしい部分で、そうゆうとこも見られて良かったなぁと。
指切りした一重がいた~い><と言い出した時に男の人呼んでー!って言うのは妓夫?見世番?ってことでいいのかな。
最初は「あんたも男だわ」って普通に思ってしまいました(笑)
あと個人的に、後述するのですが社中さんの照明演出とても好きで。
ラスト全員で舞台上で立ち回るシーンがあるのですが、そこでセリフはないものの、文里が一重に刀を向けて斬るシーンがあるのです。
足元に倒れた一重を見て、がっくりと片膝をついてうなだれる、までのシーンがセピア色のライトの中で行われていて、もうそれはそれは美しいシーンでした。
すごい短いしピンポイントな部分なんですけど、ほんとに美しいのでDVDに入ってると良いな…という期待。
あとはOPのダンス後にも一度全員での立ち回りがあるのですが、そこで一重をかばいながら移動していくシーンも大好きでした。(斬られちゃうんだけどね)
セリフのないシーンはセリフのあるシーンよりもキャラクター性が溢れててとても好き!
歌舞伎調の目元に紅をさすメイクの龍くんを見るの、去年から密かな夢だったので、今回歌舞伎演目でこのメイク、ビジュアル、衣装を叶えてくれた少年社中さんに感謝しかないです。
▼照明や演出について
社中さんの舞台、今回ははじめてなので勝手がわからないのですが、照明の演出がとても好きだったなぁ~という感想を持ちました。
舞台側から客席側に向けて照明を当てることによって、壁にシルエットが浮き出たり。
舞台上で懐中電灯(?)使ってみたり。
特に一番印象的だったのは、ラストお嬢が何度も何度もやり直しながら周りで皆が死んでいくシーン。
セピアに近い黄色の照明に、中央のお嬢を白いピンスポットライトが抜く。
やがてお嬢、和尚、お坊の3人だけになって死体の山の中での殺しあい。
最後の最後にお嬢を真っ赤なライトが照らす。
このシーンがすごく印象的で、初日見た時から本当に綺麗だなぁとおもって見ていました。
▼ラストについて
三人どころじゃない吉三の最後。
億、兆、京と繰り返してやっとやっとの大団円…なの、ですが。
庚申丸曰く、地獄では服の重さが罪の重さとなる。
お天道様は、その罪人の服の厚さに合わせて雪を降らせた。
だといいます。
ラストシーン、皆薄着になっているのに何故か雪が降っている。
季節は夏だと和尚は言った。
そして最後の最後、舞台上に立つお嬢はとても重たい衣装を身にまとっていた。
他の人達は皆薄着なのに。
しかもその傍らには、庚申丸が控えています。
本当に、ここは地上なのかな、と思ってしまうラストシーンでした。
大団円は、地獄にしかなかったのかもしれない、なんてね。
逆を言ってしまえば、重たい服を着ていても大丈夫そうだからここは地獄ではないともいえます。
私は作者じゃないからわからないけれど、色んな見方がありそうだなと思いました!
(あとからそういえば~と思ったけど最初のOPで皆が持ってる「○○吉三」って書いてあるの卒塔婆だった。
○○吉三って名前は戒名的な意味合いがあるんだろうか…)
色々間違ってる部分とか解釈違いもあるかもですがご愛嬌ということで。
悲劇が大団円になったことで、ほんとに縁起の良い夏になりそうです。
