宗教とは何か
人間は世界の中で生きていますが、その世界には理解し難い、説明ができない事象が存在します。(「人智を超えたもの」と呼称されます。)それらにより、自らの存在が脅かされるのではないかと考え、人は不安を覚えます。そしてこの不安を解消するために、それを「解釈」しようとします。即ち、天空には巨人がいて地に向かって雷を投げつける、といった風に。そうした解釈が最終的にたどり着いたのが、神の概念であると考えられます。
神は人格を持ち、世界のすべてを知り、その意志によって世界を動かすことができるとされます。そうしたものを想定し、そこに自らが帰属していると認識すれば、人は不安を解消することができるのです。つまり、神の意志を推し量りそれに沿う行動をすれば、神に気に入られて祝福を受けることができる、或いは神の怒りに触れないで済む、と。 この考え方が、社会集団に共有されることによって、宗教が誕生します。
宗教の成立には二つの要因が必要であると思われます。一つは神秘性を持つこと、もう一つは社会集団で共有されることです。
神秘性は、「人智を超えたもの」から導かれる特質です。理解し難いものは、その本質を人間には見せないと考えねばなりません。同時に神秘的であればあるほど、正しいかどうかは看過され議論の入る余地はなくなるのです。そうした人智を超えたものの中で、最も人間の関心を引くのは、生死の事柄でしょう。死は不可避でありながらその意味が説明できませんから、人を深い不安に陥れます。従って宗教には、必ず「生死観」が盛り込まれるのです。そしてその多くは魂の実在を肯定します。キリスト教、イスラム教はもちろんのこと、仏教も輪廻する実体として魂に代わるものを想定していると思われます。魂の実在は、当然死後の魂の行先、天国や極楽、涅槃を設定するか、或いは魂の永遠性を示唆します。世界の成り立ちの説明もそこには付随してきます。
社会集団で共有されるということは、宗教が社会的活動であることを示しています。従って文化を形成します。つまり価値観を生み、道徳や倫理、具体的には博愛、慈悲の精神、節制、清貧、或いは欲望の否定など生活規範を作り出します。教義、戒律、禁忌等も創出され、その価値観が宗教教団の維持・発展を支えるのです。同時に、それはその宗教の教義を信ずることを強い、構成員に信仰をもつことを要請します。(ついでにそれに反する者たちへの暴力を肯定します。)そして当然のことながら、教育に力を注ぎます。形成される文化のもう一つは宗教儀式であり、そこから芸術が派生します。
ところで現代において、宗教は成立し得るでしょうか。天地創造も天国・極楽の存在も、ほとんどの現代人は信じていません。しかしながら、唯一魂の存在については完全に否定しきれていないと思われます。魂の存在を認めるなら、宗教の成立する余地は残されているでしょう。事実、新興宗教において、魂の存在は前提となっています。それさえ押さえれば、神の存在や普遍的な真理にも言及できるからです。