胸がいっぱいで食事が喉を通らない。
でも何か食べなきゃ、食べておかなきゃ。
こんな誰のためでもない責任感に似た何かは昨今の災害の多さからか。
蓄える。
冬眠するリスでもなければクマでもない。
むしろ食べた分、重力は増し、動きは鈍り、排泄の回数を増やす。
つくづく燃費の悪いこの体。
昔の男が乗っていたランボルギーニが頭に浮かんですぐに消えた。
キャバクラ、ガールズバーの勧誘とナンパのせいで遠回りした道はとても寒くて、目に見えず急所がないそれと闘って消耗するハートポイントに目尻の水分は溜めることができない。
ふと強い光を感じ顔を上げる。
いつのまにか丸まっていた背筋が痛む。
ヘビ女に串刺し、火吹きに野人。
見世物小屋の発する吸引力は強くて熱くて吸い込まれるように入っていく人たちを眺めると救いにみえた。
いつも何かを探していて、話しかけられたら答えてしまうのが私なのを私は知っている。
彼氏いますよって嘘はどこにいくんだろう。
いると答えても大抵の男はそれでもいいらしい。
生産性のない会話で形成されていく私は今まで何人生まれて死んでいった。
私は私の着ぐるみしか空いていなかったのか。
凡庸な脚本に何か感じてしまう自分が嫌で、早足で意地だけ連れて逃げる。
今会いたくない。
転ける。
絆創膏が追いつかないから走って、また転んで、頭から足、爪先まで。
左胸の辺りはそれはそれはテープでぐるぐる巻き。
滲んだ指先、剥がしてみたら爪まで剥がれたいなどと言う。
見世物小屋のひとりだ。
韓国料理店が立ち並ぶ街で韓国料理を食べたくないちっぽけな反抗は、もうどうにでもなれという自暴自棄信号を脳に伝えた。
隣の席からのタバコの煙は死ぬほど嫌いなのに、澄んだ空気の中すれ違った女のタバコの匂いで何年もやめていたタバコを吸いたくなるんだ。
生ビールが喉を通過した。
ハイボールで脳をふわっとさせた。
熱燗は歩く機能をはじめとする人混みに馴染む機能を破壊した。
酔った言葉と素面の言葉、どっちが本音?
ていうか君、
本当に酔ってる?
信号無視したお年寄りがバイクにはねられた横を通る。携帯のカメラを起動している手を静かに下ろす。
首都高でタクシーの運転手が急にキーーーっとハンドルを切ると、後部座席の窓におでこをつけていた私は触らずとも腫れてきていることが容易に想像できるおでこを再び冷たい窓につける。
私たちの存在に気付かず車線変更してきましたと幸の薄そうな運転手が話している。
気付かれないのか、でも死ねないのか、
時速何キロで走っても注目はされない。
その代わり大きくミスをするとみんな注目してくれるんだ。
この人に関わっちゃいけないアンテナを向ける。
あの冷たい目をよく知っている。
窓より冷たいそれを。
命が危ない状況、予期せぬ出来事、このヒリヒリが忘れられない。
恋愛に悩める友達を可哀想なんて思ったこともあるけれど、贅沢で羨ましくて底まで落ちてゴミでヒロインでちゃんと自分を真ん中に置いている。
小さな不幸を求め生きる私は誰よりも怖がりで自分を常に遠くから見ている。
ポストには赤紙、もとい結婚式の招待状。
好きな君に会いたくなった。
遠くで見ている私、お願い止めないで。
モンスターエンジンのゴッドハンド洋一のネタが無性に見たい。
そんな誘い方嫌かな。