一昨日、ジェシー・ハリスのインストアライブを観に行った。
場所は秋葉原近くのマーチエキュートって所にある「フクモリ」ってレストラン兼雑貨屋みたいな店。19時スタートなので30分前くらいに着くように家を出た。
店には思惑通りの時間に着いた。レストランではなく雑貨販売スペースで演るようなことが書いてあったのでステージらしき場所を探してみるが見つからない。
ふと、細長い店舗の中央にマイクが一本立っていることに気づいた。
「えっ、ここで演るのか・・・・」
それは、言わば「ただの通路」だ。確かにスタジアムを埋めるような音楽ではないにせよ、これって学校の廊下で歌うようなものだろ?学園祭のバンドだって教壇を利用したりして一段高いステージくらい作るだろ?
「えっ、ここで演るのか・・・・」
それは、言わば「ただの通路」だ。確かにスタジアムを埋めるような音楽ではないにせよ、これって学校の廊下で歌うようなものだろ?学園祭のバンドだって教壇を利用したりして一段高いステージくらい作るだろ?
ただ、ギター一本の弾き語りなのでさほど場所は要さないのも事実だ。で、こんなに近くで生ジェシーを拝め、演奏を聴けるのならばありがたい話だ。
ただ、俺以外にジェシー目当ての客が見当たらない。少し経ってから、ようやく買い物ではなさそうな女性が一人、マイクのそばをうろうろし始めた。それから少しずつ人は増えていったが、せいぜい10人~15人くらいだろう。
時間が近づくと店員から後ろを人が一人通れるくらい空けるように言われる。マイク近くに並んだ少数のジェシーファンが一歩ずつ前へと出る。マイクまでの距離、およそ2m。
時間が来るとジェシー本人がすーっと登場した。想像していたよりも若々しく、背も高い。身体もがっちりしている。移動用のハードケースからPVなどで目にする白いピックガードのナイロン弦のアコギを取り出した。ジャックをギターに差し込むと、あらかじめ音量バランスは調整してあるようで、いきなり歌いだした。
その瞬間、店内はジェシーの世界へと変わった。
PVやネットでしか見たことがない本人が目の前にいる。CDで繰り返し聴いてきた曲が、すぐ目の前で再現されている。
それは感動もさることながら、何とも不思議な感覚だった。
だって、俺にとっては最高に価値のある人なんだよ。サッカー好きがメッシに会うのと、フィギュアスケート好きが真央ちゃんを目の前にするのと同じことなんだから。
新しいアルバムからの曲が次々に演奏されていく。今回の来日ツアーに備えて通勤の車の中でヘビロテしていたので、全てが耳に馴染んでいる。
ギターと歌だけ、それだけでも十分に鑑賞に耐えうる。普段聴いている音源の核、装飾をそぎ落としたジェシーハリス自身がそこにあった。「最高!!」なんて叫ぶような感動を優に通り越している。
新しいアルバムからの曲が次々に演奏されていく。今回の来日ツアーに備えて通勤の車の中でヘビロテしていたので、全てが耳に馴染んでいる。
ギターと歌だけ、それだけでも十分に鑑賞に耐えうる。普段聴いている音源の核、装飾をそぎ落としたジェシーハリス自身がそこにあった。「最高!!」なんて叫ぶような感動を優に通り越している。
あまりに近く、顔を見ていると目が合うので俺は視線を落としてギターのボディを見つめながら美しい歌を聴いた。
上手いとか、凄いとか、そういう分かりやすい見せ場なんかない。でも、素晴らしいとしか言いようがなかった。
十分過ぎるほどの演奏の後、サイン会になる。木曜日に渋谷のライブに行く俺がこのインストアライブにも足を運んだ理由の一つがサイン会だ。
別に2ショットの写真を撮りたいとか、たくさん言葉を交わしたいとか、そんな欲求はない。こちらはホモではない50手前のオヤジ、向こうはロックスターといった趣きなどない四十半ばの天才音楽家。彼の生の音を間近で感じる以上に望むことなどないのだ。
ただ、俺は本人に伝えたかった。今回の来日ツアーはクラウドファウンディングで実現している。早い話、募金だ。で、無料で40分もの演奏を雑貨店の一角でやっているのだ。
グラミー賞取った作曲家だぞ!?
そんな賞がなくても、とんでもない才能を持った音楽家だぞ!?
ま、いいや。おかげで俺は近くでジェシーを見られたのだから。
とにかく、俺がジェシーに伝えたいのはNYCから遠く離れた日本にも貴方の音楽を心から愛している人間がいるってこと。
それを教えてあげたかった。
どうすればいいのか。「貴方の音楽は素晴らしい。天才だよ。まずメロディーのセンスが抜群。それから曲のムード作りも絶妙だ。本当に素晴らしい。ファンタスティック!マーベラス!」なんて本人に言うのもこっぱずかしいからね。
そこで俺はCD棚からジェシーのアルバムを引っ張り出してベッドの上に並べた。で、写真を撮った。一番分かりやすい。論より証拠ってことだ。
ライブが終了し、店でサイン用のCDを買ってジェシーの前へと差し出した。店員から自分の名前を記すようにメモが渡されていて、俺は自分の名字を書いておいた。店と同じ名前だから、分かりやすいと思った。
サインをしようとしてメモを見たジェシーは「オゥ、フクモリ」って言った。そこで俺は「見て」と言って携帯の画面を彼に示した。彼は自分のアルバムが並んだ写真を見てハハッと笑った。
「木曜日、もちろん行くよ」って伝えるとジェシーはサンキューと俺を見て言ってからCDに走らせていたペンでthanksの下にbestと付け加えてくれた。
ジェシーが最後に演奏したのは「コスモ」って名前のインストアルバムの1曲目だった。
個人的に大好きな曲だった。何だか胸が熱くなったけど、目の前でオヤジが涙ぐんでいるのもキモかろうと我慢したのだった。
Little Starって曲だ。九州の小倉あたりを走る電車から窓外の景色を写しているだけのPVだ。
でも、曲から想起される俺の中のイメージは「明るい未来に向かっていく感じ」なんだ。なんだかんだ色々あったけど、それでも希望を捨てずに前を向いていく。
そんな気持ちになる曲なんだよ。