
一昨年の夏に奄美大島へ向かった。沖縄ほどリゾート開発されてない島は旅行者も少なく、繁華街も閑散としていてショッピングが楽しめるような場所ではない。ただのちっぽけな田舎町でしかない。でも、だからこその風情がある。そして利便性や人工的な設備を排しているがゆえの圧倒的な自然がある。
これは奄美に限ったことではないだろう。日本には数え切れぬほどの離島があり、どの島も美しい自然の美を湛えているに違いない。
この7月で五十歳を迎える記念として、二年ぶりの奄美訪問を決めた。四泊五日で、同じく半世紀を生き抜いた双子兄と一緒に旅立つ。飛行機やホテル、レンタカーの手配も済ませ、あとは出発日まで、旅先を夢想しながらあれこれ準備していくのだが、そういう時間が楽しい。
「どこへ行こうか?何をしようか?Tシャツはどれを持っていこうか?クロックスは2年前のでいいかな?また新しいの、買おうかな?」
そんなことを考えている。

金井工芸という染物工房があって、前回はそこでバンドメンバー用にお揃いのTシャツを染めた。
今回は色褪せてしまった古い衣類などを持って行って染め直そうと考えている。
奄美には大学時代にバンドを組んでいたドラマーが住んでいる。シンプルだが、ヘビーで、タメの効いたカッコいいドラムを叩く。奄美にはスタジオはあってもレンタル機材はないので一緒に音を出すためには楽器持参で行くしかない。今回も一番軽いギターを背負って飛んで行こうと思っている。
奄美の南端、古仁屋という町がドラマーの出身地なのだが、そこから加計呂麻島というさらに小さな島へ渡る予定だ。奄美も十分に美しい自然を残しているが、加計呂麻は別世界だ。
美しく透き通る南国の海へ身体を浸して心を解放する。仕事やら何やら、面倒臭いことの一切から逃げ出して本来の自分、つまりは童心を取り戻す。
東京に戻れば再び忙しい日々が待っている。数字にばかり追い回される社畜に戻る。
精神を病む人が多いのも頷ける情報過多でハイスピードな世の中から数日間だけでも逃げ出して捉われない自分を獲得することが現代人には必要だよ。魂の洗濯だな。