
ジョン・レノンが殺されたのは俺が中三の時だ。
ジョンは、俺にとってナンバーワンのアイドルだった。
人類の中で最もカッコイイ存在だった。
そんなジョンを失って、当時の俺は少なからず困惑した。
「悲しみ」よりも「困惑」の方があの時の気分に近い気がする。
ジョンの死によって、一つだけ気づかされたことがある。
それは「あの世には何一つ持っていけない」ということだ。
世界で最も成功したバンド「ビートルズ」のリーダー。
そんな男ですら、死んでしまえば手に入れてきた全てを手放さなければならない。
この事実は中学生の俺にとって衝撃だった。
相続とか贈与といった他人への譲渡を考えなければ、生前の所有など無意味ということだ。
突き詰めて考えれば、世の中の全ては自らが生きている間を充実させるための道具に過ぎない。
金などは言うに及ばず、家だってそうだ。
分譲だろうが賃貸だろうが関係ない。
気分的な何かを除けば、そこは自分が生きている時間を過ごすスペースでしかないのだから。
所有が最終的に意味を持たないのだとすれば、何を目的に物質社会を生きればいいのだ?
自分なりに考えて、自分なりの結論を得た。
「結局、生きている内が花なんだ。やりたいことやって楽しむより他ないだろう。あと、生きがいとして、自分が生きた証として残るような何かに取り組むべきだろう。生涯を通じて突き詰めるべき何か、自分にしか出来ない何か。それが生きる意義となるに違いない」
先日、フェイスブックでこの写真に出会った。
心惹かれて老婆の持つボードの英文を目で追った。
そこには死期も近いであろう婆さんが長い人生を歩んで辿り着いた結論が説かれていた。
それは俺が思い描いていた人生の意義に近いものだった。
深い感銘を受けると同時に、残りの人生をを歩む上での確信にもなった。
写真が小さく見づらいので文面を紹介しておく。ついでに意訳も添えておくことにする。
人それぞれ、いろんな考えがあるだろうけれど、俺にはこの婆さんの言葉が真理に思える。
SOME DAY YOU MAY BE AS OLD AS I AM. PLEASE TAKE MY ADVICE,AND DON'T WASTE YOUR SHORT LIFE. INVEST YOUR YOUTHFUL VITALITY IN YOUR ART. SHARE THE BEST OF YOUR SPIRIT WITH THE WORLD. YOUR BODY WILL DIE,BUT YOU CANNOT DIE. SO,DON'T WORRY ABOUT PRETTY THINGS LIKE BODIES,MONEY AND POSSESIONS. THEY PASS WITH THE BODY AND ARE MEANINGLESS. DON'T WORRY WHAT ANYONE THINKS OF YOU. DON'T SEEK APPROVAL,EXCEPT FROM YOURSELF.
YOUR ART AND IDEAS ARE SIGN OF YOUR SPIRIT.
YOUR BEAUTY ENDURES FOREVER,AS DO YOU.
「いつかあなたも私のような老人になるわ。短い人生を無駄にしないように、どうか私のアドバイスを聞いてちょうだい。あなたの若いエネルギーを芸術に注ぎなさい。あなたの最高の魂を世界と分かち合うのよ。あなたの肉体は、いずれこの世から消えるわ。でも、あなた自身がいなくなるわけじゃないの。だから肉体やお金、所有といった些細なことを気にしないで。それらは肉体と共に過ぎ去っていくものだし、意味なんかないのよ。他人があなたをどう思うかなんて気にしないで。自分以外から賛同を求めようとしなくていいの。あなたの芸術やアイデアは、あなたの魂が送ってくるサインなのよ。あなたの作り出した美は永遠に残るわ、あなた自身のように」