うつ病を体験した著者が自らの体験を踏まえて、うつ病体験者14名にインタビューしてどのようにしてうつ病というトンネルから抜け出せたのかをコミック化しています。インタビューした相手はこの本の編集者、ロックシンガー、作家、映画監督、学者あるいは会社経営者、会社員、教師であったり、実名での登場もあれば匿名の場合もあります。うつ病というのはたしかに長いトンネルであり、その中では他のものはみえないのですが、回復する時は遠くに小さな光が見えて次第に周囲が明るくなります。うつになった誘因をさぐることも重要であるけれど、うつからヌケるきっかけがどこにあるのか、見つけるヒントについてそれぞれ体験を通して語られています。うつと気候、人生の自習時間、違った立場から自分をみつめること、自分をしばっていた思いこみから自由になること、自分自身を肯定すること、ときには幼時体験との結びつきなどが思いおこされることがあります。うつになる原因もさまざまですが、うつからのヌケ方もまた様々です。

 

 

 精神科治療薬ハンドブック(改訂第7版)上島国利昭和大学名誉教授監修が刊行されました。初版が刊行されたのが1999年、前回第6版は2010年ですから7年ぶりの改訂となります。このジャンルの書物として息長く売れている本だと思います。私は抗てんかん薬の部分を担当執筆しています。初版と比べてかなり厚くなっており、その間に発売された精神科関係の治療薬が増えていることを物語ります。抗てんかん薬についても6剤が発売されており、本書の原稿を締め切ってからさらに4剤が発売され治療に使うことが可能になっています。発作が難治であった例にも新規抗てんかん薬を使用して発作が抑制された例や副作用で苦しんでいた例にも新規抗てんかん薬に置き換えることで副作用が軽減できたりする例がありてんかん治療が進歩していることを実感します。しかし選択肢が増えることはそれだけ治療者の知識や力量が問われることにもなります。医師の知識は常にアップデートが要求されています。

 

 睡眠は均一なものではありません。大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。ご存知の方も多いと思いますがレム睡眠は夢に関係していて体には脱力がおこりますが脳は覚醒に近い状態を示しています。ノンレム睡眠はさらに浅い順から深い順まで1~4の4つに分けられます。このうち3,4段階が深睡眠とよばれていて脳波ではゆっくりしたデルタ波という波形があらわれます。深く眠っているのでこの段階に起こそうとしてもなかなか起こすことができません。また成長ホルモンがもっとも多く分泌されるのもこの問です。睡眠は90分が一つのサイクルといわれています。深睡眠は最初のサイクルに多くあらわれ明け方近くでは浅いレム睡眠が多くなります。一番睡眠効率がいいのは最初の90分なのです。この最初のサイクルを大事にすることが良好な睡眠をとるためのコツと言えます。朝方いつまでも寝ていることは睡眠の質を落してしまうことになりますので注意が必要です。