文藝天国『プールサイドに花束を。』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●リリカルなオルタナティブロック好きにオススメ!

今日、ツイッター上でフォローされたことがきっかけで、良いバンドを見つけた。それが彼女たち"文藝天国"。今日は文藝天国の1stミニアルバムを紹介します。女性ボーカルのリリカルなオルタナティブロックに飢えている野郎どもや紳士淑女は皆、聴くといい。

僕はリリカルなオルタナティブロックが好きだ! それは、とかげ日記読者のみんなも知っていることだと思う。そして、このバンド"文藝天国"はまさにリリカルなオルタナティブロックバンドなのだ。

文藝天国のリリカルな性質は、一度彼女たちの曲を聴くと分かる。歌詞の文章がこなれているだけではリリカルではないんだ。そこには、リアリティがなければ。ファンタジーを描いている場合でも、ファンタジーを背景にして感情のリアルさがなければリリカルではないんですよ。文藝天国の歌詞には、感情のリアリティがある。短い文章の中でモチーフと感情の詳細を描いている。ただのポエムではなく、詩である歌詞なのだ。

そして、歌詞の歌いぶりもリリカルだ。歌詞への感情のこめ方や歌詞の語句の強調の仕方もリアリティを感じ取れるし、#3「アイスクリイムは溶けるから。」のポエトリーリーディングもその悲観的な気持ちが透けて見えるようにリリカルな歌いぶりだ。

「あなたのいない世界」というモチーフがこのEP中に何度も出てくる。それゆえに感じる不全感や絶望とそれらと隣り合わせのわずかな希望がテーマになっている。僕のこの書き方が単純になってしまって申し訳ないが、僕がこう書くよりももっと深く豊かな絶望と希望がここにはある。

オルタナティブロックとしては、ナンバーガール、そしてナンバーガールから影響を受けたきのこ帝国の系譜に連なるように感じる。

王道のロックではないからオルタナティブロックな訳だが、オルタナティブロックの中に王道があるとすれば、文藝天国は間違いなく王道のオルタナティブロックだ。

だからこそ、想像を超えてくるようなオルタナティブロックを鳴らしてほしいとも思う。このEPを聴く限り、オルタナティブロックの想定内の範疇の中に留まっているので、もっと意外性を感じさせたり、音楽の幅広さを感じさせるようなロックを鳴らしてほしい。それこそ、狭い定義のオルタナティブロックにとどまらず、ダブ/レゲエ/祭り囃子の領域に歩みを進めたナンバーガールと、R&B曲の「クロノスタシス」やレゲエ調の「夏の影」を作ったきのこ帝国のように。ジャンルをクロスオーバーさせないオルタナティブなギターロックが文藝天国のアイデンティティだとしても、曲が伝えてくる世界の空気感の豊かさが物足りない。文藝天国は王道のオルタナティブロックとしては優れているが、音楽としての豊かさや幅広さはまだナンバーガールやきのこ帝国には遠く及ばないと思うのだ。

だが、大器の卵であることは間違いない。ヒリヒリするような熱量をギターとボーカルに感じる。まだ高校生でこれほどの力作を作ることが信じられない。1stと題しているからには、2ndや3rdも作るのでしょう? 期待しかない。

Score 7.2/10.0