CHAI『わがまマニア』感想&レビュー(ミニアルバム) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。

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●技術があり、センスもあふれるガールズバンド

女子4人組バンド、2018年リリースのミニアルバム。

あるサイトでGang of Fourに彼女たちの音楽をなぞらえているのを見たけど、Gang of Fourの尖ったポストパンクな音楽性とCHAIのキラキラしているけどゴツゴツもしているニューウェーブの音楽性は近いものがあるかもしれない。武骨で野生的なベースサウンドにも近いものを感じる。

#1「We Are Musician」のローファイ/ガレージロック感はめちゃくちゃ好み。演奏者が身近に感じられる、ごつごつした肉感的な生演奏みたいな感触だからこそ、「私たちはミュージシャンだ」というタイトルが映える。

#2「アイム・ミー」のキラキラポップス感も好き。シンセのようなキラめく音を奏でるギター。サビでグリスするベースも気持ちいい。そして、安心して聴いていられる鉄壁のドラム。間奏などで聴こえる隠し味のシンセ。これらのサウンドの上に乗るキュートボイス。気持ちが上向くよ。

#3「フューチャー」のシンセポップで程よくレイドバックする感じも好みだ。#4「FAT-MOTTO」の太ってもいいよというメッセージには、35歳になり、腹が出始めた僕も共感する。笑。

#5「Center of the Face」では、落ち着いた曲調で投げかけられる、鼻を愛せよというメッセージに感動した。彼女たちの掲げる「NEOかわいい」というテーマは、誰でもありのままで可愛いし、誰にも可愛いパーツがあるという意味らしいが、そのメッセージが直球で刺さった。男でも「NEOかっこいい」を掲げて良いのではないか。

CHAIは個々人のコンプレックスを「抑圧」にする社会の目から離れてとても自由で、そんなところが僕は好きだ。ミュージックステーションでタモリさんにタメ語で話すところも、慣例から自由で、彼女たちはどこまでも行ける気がする。社会の目から離れて自由なのだけど、説教臭くならずに社会にメッセージを投げかけることのできる社会性がある、そこがCHAIの個性だと思う。そして、それこそ、ロックのオーセンティックな姿勢なのではないかと感じるのだ。

ただ、このミニアルバムは決め手に欠ける。絶対的な即効性のあるメロディを持ったキラーチューンが欲しい。一曲キラーチューンがあるだけで、だいぶ違うだろう。技術があり、演奏がセンスあふれるだけに、そこだけちょっと残念だった。次のアルバムに期待!





Score 6.9/10.0