リーガルリリー『the Telephone』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。

the Telephonethe Telephone
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リーガルリリーの3rdミニアルバム。

2ndまでからの音楽的な成長が見られ、より多彩な表現で、より立体感を持って演奏が迫ってくる。

#1「スターノイズ」の鋭角に切り込むギターで本作は幕を開ける。この曲の最後、煌めく星のように点滅する野蛮でノイジーなギターのアウトロといい、本作でたかはしほのかが奏でるギターはいくつもの違った表情を見せる。そのどれもがロマンティシズムにあふれている。

ロマンティシズムあふれる作風の男性バンドマンはチバユウスケを筆頭として数多くいるが、これほどロマンティシズムを感じる女性バンドマンはたかはしほのかを除いて他にいない。ガールズバンドの中で、リーガルリリーは随一のロマンティシズムを見せつける。空想的に彩られる星色のギターサウンド、余白を可憐に埋めていくドラムロール、空想的だがリアルを怜悧に突く歌詞……。ずっとこの音楽に浸っていたいと思わせてくれる。

リーガルリリーのサウンドは風景と風景から零れ落ちそうな詩情を描く。#4「overture」において、カントリーの音楽性とシャッフルのリズムで「戦闘機の爆音、最高にロックだった!」と歌われると、のどかな街の風景に突然開ける米軍基地の光景が目前に見える。そんな景色の中で、曲の主人公は歌うのだ。「ペットボトルのキャップをしめて僕ときみが生きてる」と。日常の風景の中で確かに息づく主人公の胸の鼓動が聞こえる。リーガルリリーの風景の描き方は、初期のバンプオブチキンに迫る力があると思うくらいだ。

出色はリード曲の#5「僕のリリー」だろう。たかはしほのかのボーカルの高音が描く刹那と、酒気帯びで「リリー」と連呼する仄かな切実さ。サビでディストーションギターと強打されるスネアドラムは刹那な瞬間に抑えきれない感情を主張する。ここには、簡単に消費されない、簡単に消費されてはいけない切実なサムシングがある。

そして、本作はミッシェル・ガン・エレファントの「世界の終わり」の最大風速で爆発するギターサウンドくらいの瞬発力がある#6「せかいのおわり」で幕を閉じる。その瞬発力で「アップライトのピアノを走らせ/アップテンポに過ぎた10代のサイレンです。」と歌うのだ。青春を生き急ぐ少女の刹那がここに刻印されている。

ロックミュージックとはこういうことだ。ロックミュージックとは、「アップテンポに過ぎた10代のサイレン」なのだ。誰に向かってという訳ではなく、自分自身の自由な心に向かってサイレンを鳴らすように、リーガルリリーはロマンティックな月夜の光景を今日も描いている。