羊文学『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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女性ギターボーカル3人組バンドの2ndEP。1stEPからの成長が著しい作品だ。1stEPよりも訴求性の高い曲が揃っている。1stEPのラストを飾る「Step」が見せてくれた見晴らしの良い光景を今回の作品でも眼前に開けさせてくれる。その光景は、まるで「オレンジチョコレートハウス」のように希望に満ちているが、たどり着くまでの「道のり」に焦点を当てたことに羊文学の羊文学らしさが出ている。

一曲を通して光景をしっかりと描けている。例えば、#1「ハイウェイ」。「ハイウェイにのって どこまでも行くんだ」という気持ちとは裏腹に「ほんとは怖いんだ」と感じる少し臆病な自分、その両面の気持ちを穏やかに見守るような歌メロとサウンド。ざらついた感触のギターは主張しすぎず、しかし、しっかりと主張しながら、サウンドの屋台骨になっている。

羊文学というバンド名のとおり、音楽だけでなく文学性もある。#2「ブレーメン」の歌詞が素敵だ。「教科書は重すぎる / 僕たちは身軽にいきたい / 太陽を知らなくちゃ / どうしたってまともになれない」のラインがお気に入りだ。そして、「音楽をならして / 一番高い場所まで行こう / どうせいつになっても / 自由なんかに なれやしない」のライン。見晴らしの良い青春の高揚感と、高揚だけでは終わらせないシビアな現状認識が透けて見える。

#3「涙の行方」からは1stEPからの精神的な成長が垣間見える。「それもいつかあなたの / 笑顔になってゆけ」と「あなた」の幸せを純粋に願えるようになったのは、「嫌い」を撒き散らしていた1stEPからの成長だろう。

そして、白眉はリード曲の#4「マフラー」だ。冬に吐く白い息のような表情を見せるギターの音色。美しい歌メロと、ボーカルの透徹としていて熱い歌唱。ムードを引き立てる、グリスを入れつつルート音を中心にしたベース。スロウダイヴのスネアの音を真似たという、雪の結晶のようにふわりと舞うドラム。ラストのラインは、短編映画の終わりのようにストーリー性を持って僕を感動させる。