Think (デモとフェスの地平線) *官邸前デモ,NO NUKES 2012 | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。

今日も官邸前の脱原発デモが行われるのだろう。官邸前のデモは毎週金曜日に行われている。僕も二週間前の金曜日(8月3日)のデモを見に行った。

デモは好意的に見ているが、自分の参加については懐疑的であったため、傍観という形を取った。歴史的なデモを一目見たかった。官邸を取り囲んで歩道を埋め尽くす市民の間をすり抜けてうろつき、拡声器を使った大音量の演説も立ち止まって聞いた。

主催者発表では、この日の参加者は8万人とのことだったが、そんなにいるようには見えなかった。それでも、まさに大群衆。たくさんの人がいた。

なかには、騒ぎたいだけのように見える参加者もいた。だが、老若男女さまざまな人の熱意、エネルギーを感じ取ることができた。

その中で僕が感じたのは花火大会のような開放感である。大人数で群れをなしたピースフルな気持ちの人たちの集合のただ中にいると、花火大会やロックフェスに似た開放感を覚えた。参加者は怒りを共有しながらも、場の空気は平和だった。微笑みもたくさんあった。原発はシリアスな問題であるはずなのに、楽しさに似た開放感をデモに感じるのは何故だろう。自分の気持ちに少しだけ戸惑った。

僕が行った時、社民党の党首である福島みずほさんも演説していた。原子力規制委員会人事案の反対を声高に叫んでいた。切迫感や真摯な気持ちは感じたが、説得されるような演説ではなかった。

政治家の言葉よりも表現者の言葉の方が胸に響く。(政治家も表現者のはずだが。)いじめに関してもそうだ。数年前に当時の文部科学大臣だった伊吹さんが学校のいじめに反対する声明を出したが、全くピンと来なかった。それよりも、現在、朝日新聞に掲載されている連載の「いじめられている君へ」に掲載されている各氏の言葉の方が胸に響く。はるな愛と西原理恵子の言葉には説得力があったし、感動した。いじめられている子の一部にはきっと届くのではないか。

橋下徹さんや小泉純一郎さんが政治家の中で人気があるのは、借り物ではない自分の言葉で語っているからだろう。弱者への優しさがない彼らの思想は否としたいが、彼らの言葉には抗いがたい魅力がある。

音楽家の言葉にも期待したい。積極的に発言している坂本龍一さんやアジカンのゴッチには特に期待している。でも、坂本さんの「たかが電気」という発言はどうかと思うよ。そこだけ伝わってきているのでアレだが、電子音楽にも今の文明にも電気は欠かせない。人命に比べればたかが電気ということなのかもしれないけど、配慮に欠けた発言だと思った。

坂本さんとロッキングオンの渋谷陽一社長が中心になって開催した「NO NUKES 2012」は意義のある音楽フェスだった。脱原発というメッセージを持ったこのフェス、僕は行かなかったが、後に刊行された、このフェスを特集したムック本を読んだり、YouTubeにアップされている動画を観たりした。海外の超大物アーティスト・クラフトワークのクールな演奏や、クラフトワークの曲であるRadioactivity(放射能)をカバーするYMO,ヴィジョンに映し出される「Think」,「No Nukes」の文字と共にアジカンが演奏する『新世紀のラブソング』,その他多くのアーティスト達の真摯なメッセージは参加した人の心に確実に働きかけていると思った。

NO NUKES、1万人規模の動員があり、数字上はたくさんの人が見に行ったことになっているが、会場はガラガラだったと言う人もいる。YouTubeでNO NUKESの動画を検索すればガラガラではないことはすぐ分かるのだが…。

NO NUKESのUSTREAM中継はユニークユーザー数で31万人もの人が世界中から閲覧したという。この数字はごまかしようがない事実だろう。

◎総視聴数:54万2,287ビュー
◎総視聴人数: 31万人(ユニークユーザー数)
◎最大瞬間視聴人数:3万1687人(2012/07/08 22:10 YMOステージ中)

 7/7 11万6000ユニークユーザー
 7/8 18万4000ユニークユーザー
 合計:30万人(+YMOリハーサルと終了後オマケUSTで1万人)

瞬間最大視聴人数/1日目:
 2012/07/07 20:21 YMO 1万9054人
瞬間最大視聴人数/2日目:
 2012/07/08 22:10 YMO 3万1687人

脱原発が日本の未来にとって良いことなのか、僕には分からない。事故のリスクはもちろん、放射性廃棄物の問題もあるが、エネルギーの安全保障上の観点からどうなのだろうか。だが、日本の普通の市民やアーティストが何かの問題に対してこうして大規模に声を上げるということは、僕が生きてきた29年の中で見られなかったことだ。シリアスな問題だが、不謹慎にも少しだけワクワクしてしまう。そこに希望がある気がする。

政治が動かなくても、自分たちの心が変わることが世界を変えるということならば、革命は、官邸前で、音楽フェスの会場で、パソコンの前で、すでに始まっているのかもしれない。


YMO NO NUKES 2012 Radioactivity Solid State Survior

鳥肌もの!


NO NUKES 2012に行ってみた!

ほら、人がたくさんいるでしょう?
ガラガラだったってネガキャンする人にも見てほしいな。