今年のカンヌ国際映画祭で、ドイツ人監督ヴィム ヴェンダースの作品 Perfect Daysで、主演した役所広司が男優賞を受賞したことが話題になりました。役所広司の役名は平山さん;東京物語へのオマージュでしょうか。ヴィム ヴェンダース監督は役所広司を評して、小津安二郎監督にとっての笠智衆のような役者に出会えたと言ったそうな。逆に役所広司さんはヴィム ヴェンダースのことを、前世は日本人だったんじゃないかと思うぐらい日本人の心情を理解している、と言っています。ちなみにPerfect Daysは、年末に公開予定のようですね。

 

図書館で借りて、『東京物語』を鑑賞しました。

この映画は若い頃見るのと、年を重ねてから見るのとでは感想が変わると言われているそうです。自分は残念ながら若い頃はみていません。

 

冷徹な視点から家族関係を衆目にさらすような感じ。心に余韻を残す映画でした。

 

主演の笠智衆(役名は平山さん)、助演の杉村春子(長女役)、原節子(義理の娘役)の演技が印象的でした。

 

主人公平山周吉の長男・長女はともに東京で暮らしており、長男が開業医、長女も美容院経営で美容師講習会の講師を務めるような立場で、世間的には子育てに成功したと思われる設定。それなのに、親は長男・長女に邪険にちかい扱いを受けている・・・。老いた両親に対してもっとも心のこもった対応をしているのが、夫を戦争で亡くした義理の娘。

 

終盤のシーンで、義兄姉をかばい、若い次女を静かに諭す義理の娘役の原節子のセリフが心に残ります。「子どもも成長すると、親とは関係ない自分の生活ができて、それが一番大事になるのよ。それはしようが無いことなのよ。」。

最終盤のシーンで、がらんとした部屋で一人、主人公(笠智衆)が静かな尾道の海を眺めるシーンを見て、一緒に鑑賞していた妻の表情が・・・。まあでも、小学校の先生をしている末娘が同居しているので、全く孤独な設定ではないのだけれど。なんだか妙にリアルな映画でした。あと、やはり日本の家は狭すぎる(関係無いけど)。

 

こういう映画を見ると、小説ではなく映画でなくては表現できないものがある、と実感します。ちなみに一緒に鑑賞した長男の感想は、「コンテンツとしてはあまり面白くないんじゃない」w 君はそれでいいよ、これはオトナの映画なのだよ。