にんじんは、根を食べる野菜の中では珍しく緑黄色野菜です。オレンジ色の色素はカロテンです。体内でビタミンAに変わります。緑黄色野菜の中でも、カロテン含有量はトップクラスです。約50グラム食べれば、成人に1日に必要な量のビタミンAがカバーできます。カロテンの名も、英語のキャロットに由来しています。
カロテンは油に溶けやすい物質です。バターや油といっしょに調理すると、カロテンの吸収利用が促進されます。きんぴらや精進揚げなどは理にかなった食べ方です。
世界各国のにんじんはオレンジ色が一般的です。しかし、原産地といわれるアフガニスタン周辺に分布している野生種やこれから発達して現在栽培されているものは、白色、黄色、紅紫色、黒紫色などもあり、形も丸いものや長いものなどさまざまです。
中国では胡の国から伝わっただいこんという意味の「胡羅葡(フロボ)」とよばれています。 中国から渡来したにんじんは、日本で古くから知られていた薬用人参と根の形が似ていたので、それと区別して芹人参(せりにんじん)とよばれました。せりと同じような葉をしていたからです。それが食用として広く利用されるようになり、いつしか「芹」がとれてにんじんとなりました。
戦後、日本でも食卓の洋風化にともない、東洋系に代わり、西洋系の「カロチンにんじん」がポピュラーになりました。最近は、にんじん特有のにおいが少なくなっています。 健康志向とも相まって、「カロテンが豊富で、しかもにおいの少ないものを」という、消費者ニーズにそったためです。
西洋系のにんじんの色はカロテンによるものです。長さが15センチ前後とこぶりになっています。日本で分化した品種は、三寸にんじん、四寸にんじん、五寸にんじんというように根の長さをもとに尺貫法で表現されました。
ニンジンは抗酸化作用のある「β-カロチン」と腸内細菌の健全化のための「食物繊維」が豊富であるのが特徴です。
β(ベータ)カロテン
β-カロテンは、色鮮やかな緑黄色野菜などに多く含まれるカロテノイドの一種で、強力な抗酸化力を持つ栄養素です。体内では必要量に応じてビタミンAに変換され、ビタミンAとしても効果を発揮します。
人体の粘膜や皮膚、免疫機能を正常に保ったり、視力を維持するために必要不可欠な成分です。
β-カロテンとは、1930年に発見された健康成分で、にんじん(carrot)の橙色のもとになっている栄養素であることからこう名付けられました。
カロテノイドの一種であるカロテンは、主にα-カロテンとβ-カロテンの2種類に分けられます。
β-カロテンはカロテンの中で最も多く自然界に存在しており、にんじんやかぼちゃ、ブロッコリー、トマトなどの緑黄色野菜や、みかんなどの柑橘類、すいかなどに多く含まれている成分です。
色の鮮やかな野菜や果物ほど、より多くのβ-カロテンが含まれているといわれています。
●β-カロテンの体内での動き
β-カロテンは、体内で必要量に応じてビタミンAとなり、働きます。
体内に入ったβ-カロテンは、約3分の1が小腸で吸収され、体内で必要な量のみがビタミンAへと変換されます。
ビタミンAは脂溶性のビタミンであるため、その性質上、過剰摂取に対する注意が求められる成分ですが、β-カロテンの摂取では必要な量しかつくられないため、その心配がなくなるといえます。
カロテノイドの中でもβ-カロテンのように、体内においてビタミンAとして働く健康成分はプロビタミンA(ビタミンA前駆物質)と呼ばれています。
プロビタミンAは約50種類存在しますが、β-カロテンはプロビタミンAの中でもビタミンAとして作用する割合が高い栄養素です。
ビタミンAへと変化したβ-カロテンは体内で他の栄養素の働きを促進するということが知られています。
ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンEなどの成分は、ビタミンAが十分に存在しないとその働きや効果が発揮されないといわれています。
ビタミンAは、ほかの健康成分や栄養素の働きを促進する役割も担っているため、その他のビタミンや栄養素とともに、バランス良く摂取することが大切です。
●β-カロテンの働き
β-カロテンは全てが体内でビタミンAに変換されるわけではなく、一部は脂肪組織に蓄えられ、β-カロテンとしての効果や効能を示します。
β-カロテンはカロテノイドの一種であるため、強力な抗酸化作用を持っています。
抗酸化作用は、カロテノイドに分類される健康成分全てに共通する働きで、β-カロテン以外にもルテイン、アスタキサンチン、リコピンなどが強力な抗酸化作用を持つといわれています。
抗酸化作用とは、体内に発生した活性酸素を除去する働きのことです。
活性酸素は、本来人間の体内に存在しており、体内に侵入したウイルスと闘うなどの働きを持つため健康維持には不可欠な物質ですが、体内で増加しすぎると、人間の体に害を及ぼしてしまいます。
活性酸素が増加しすぎる主な原因としては、ストレス、紫外線、喫煙、不規則な生活習慣や加工食品の食品添加物などが挙げられます。
増加を続けた活性酸素は、老化の促進や、動脈硬化やガンなどの進行によっては命に関わる病気にもつながってしまうため、活性酸素による健康への悪影響は軽視できないものとなっています。
β-カロテンは、強力な抗酸化作用を持っているため、活性酸素を原因とするあらゆる病気の予防などにも効果が期待されています。
●β-カロテンの効率的な摂取方法
β-カロテンは、脂質とともに摂取することで吸収率が高まります。熱にも強い成分であるため、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜を調理する際は、油で調理するとβ-カロテンを効率良く吸収できるといわれています。
●β-カロテンの摂取上の注意
β-カロテンは、摂りすぎると手のひらなどの皮膚が黄色くなる症状が見受けられることがあります。
これは「柑皮症(かんぴしょう)」といわれる症状で、カロテノイド(主にβ-カロテンやβ-クリプトキサンチン)を含む食材などが多量に摂取されたことにより、血中のカロテノイド濃度が上昇することで起こります。
しかし、摂取を止めるとすぐに治まる症状であるため、長期間に渡って多量の摂取を行わなければ、症状自体に大きな問題はないといわれています。
[※1:脂溶性とは、油に溶けやすい性質のことです。ビタミン類ではビタミンAの他に、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが脂溶性ビタミンに分類されます。]
[※2:ビタミンB群とは、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸の総称です。]
こうしたことから、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の考案される「万能健康ジュース」には、にんじんが入れられ、ニンジンは抗酸化作用のあるβ-カロチンの摂取と腸内細菌の健全化のための食物繊維摂取を目的に用いています。
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。
ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に発生するのが活性酸素で、身の回りは多くの要因で活性酸素が発生し、これがミトコンドリアをさらに弱らせ、頭痛発作の引き金にもなります。このため活性酸素を除去する働きのある”にんじん”が大切になります。
食物繊維としての”にんじん”は、腸内細菌の健全化・インシュリン過分泌の抑制・有害物質除去にも大切になってきます。