半健康・半病気ってなに?? 自然治癒力の低下とは
その4 ミトコンドリア
これまで、以下のように述べて参りました。
「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
このなかでもミトコンドリアはその”要(かなめ)”となり、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きるために必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”とも言えるものなのです。
私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。
このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、ミトコンドリアでエネルギー産生が十分に行われないために、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。
「健康的な生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
この「生体のリズム」は「ホメオスターシス(自然治癒力)」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。
「ホメオスターシス・恒常性(自然治癒力)」には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
自律神経系には、セロトニン神経系が、内分泌系として、生理活性物質が、免疫系には、腸内環境が主に関与しています。
セロトニン神経系はミトコンドリアと連動し、自律神経を調節しています。
生理活性物質のエイコサノイド は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、ミトコンドリアの機能を左右します。
腸内には、ミトコンドリアが最も多く存在し、腸内環境の悪化はダイレクトにミトコンドリアの働きを悪化させることになります。
ホメオスターシスはストレスなどに大きく影響されます。
例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態になると、”頭痛”を肇とするいろいろな”体の不調”が現れることになります。
私達の生活環境は活性酸素・有害物質に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、同時に起きている「セロトニン神経系の機能低下」と相まって、「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況にあります。私達は日常生活を送る上で、前屈み・うつむきの姿勢を強制される生活環境に置かれていることから、「姿勢の悪さ」が起きやすい生活環境に置かれています。
このような「姿勢の悪さ」は、猫背や前屈みの姿勢ですと、胸郭を大きく開いての深呼吸ができなくなり、結果的に「低酸素状態」となり、ミトコンドリア優位のエネルギー産生にならなくなることから(後述します)「健康的な生活を送る」上に、さまざまな悪影響を及ぼします。当然、頭痛を起こす原因にもなります。
ここに、さらに「運動不足」、「栄養のアンバランス」は「健康的な生活」を送ることを阻害する要因になってきます。
私達の身体の細胞にはミトコンドリアという小器官があり、ミトコンドリアは糖と脂肪酸の代謝とアミノ酸の代謝などエネルギーを産生するのに必要不可欠な働きを担っていることから、「自然治癒力」を正常に保つにはミトコンドリアを働きを良好に維持することが必要です。
この「食事」と「運動」については、「片頭痛って治るの!?」のなかで以下のように述べました。
運動と食事
最後に「健康的な生活」を送るために、運動不足にならないように、さらに食事をバランスよく摂取することが重要になってきます。
1.運動不足にならないようにしましよう
有酸素運動
これまで、慢性頭痛治療において経験的に有酸素運動の重要性が指摘され、多くの方々がこれを行うことによって、慢性頭痛を改善させて来ました。それでは、どうして有酸素運動が慢性頭痛治療上、重要なのでしょうか?
まず、はじめに、有酸素運動と無酸素運動の違いについて説明します。
有酸素運動とは?
運動には大きく分けて、「有酸素運動」と「無酸素運動」があります。
わずかな違いですが、その効果は全く違います。
■ 有酸素運動(エアロビクス)
有酸素運動とは、酸素を普段よりも多く取り込みながら行う、それ自体、楽しみながらできる運動です。
十分に取り込んでいる酸素を使って、体内の糖質や脂肪をエネルギー源として燃焼することによって、ゆっくりとエネルギーを生み出します。
乳酸を生じないために疲れが蓄積せず、途中からエネルギー源が徐々に体脂肪に切り替わっていくので、長時間運動を続けることが可能です。
有酸素運動のときの呼吸は普段よりも軽く弾む感じで、深い呼吸なので、より多くの酸素が取り込めます。まさに有酸素運動はこの呼吸がポイントです。呼吸が軽く弾んでいれば、普段よりも多くの酸素を体内に取り入れているということです。
人と楽に会話ができる程度で、やや汗ばみ、爽快感を味わいながら、30分でも1時間でもやろうと思えばできる強度です。
有酸素運動は、目的によってレベルを変える必要があります。年配の方や運動療法として行う場合は軽めの有酸素運動をすべきですし、ダイエット目的の人は有酸素運動のなかでもややレベルを上げると、より多くの脂肪が燃焼されていきます。スポーツの基礎体力養成のためであれば、「激しくはないが、ややきつい」というレベルで行う必要があります。
代表的なものとしてはウォーキング、ジョギング、水泳、水中ウォーキング、サイクリングなどがあります。器具を使った有酸素運動としては、ステッパーやエアロバイクなどがあります。
ただ、ウォーキング以外は、激しく運動した場合、無酸素運動にもなります。有酸素運動として行う場合は、上記で述べたように、呼吸に意識を集中して、気をつける必要があります。
器具を使ったエアロバイクなら、高性能のコンピュータが脈拍を自動測定してくれます。 その脈拍を見ながら、強度を調節できます。
初めに強度を設定しておきさえすれば、その脈拍を元にペダルの強さを自動的に調節して、それ以上の強度に移行しないようにしてくれるエアロバイクもあります。
単純でリズミカルな動作を最低10分以上反復することで、効果的な有酸素運動になります。ウォーキングもジョギングもステッパーも、みんなそうです。単純でリズミカルな動作のほうがとくに頭で考えずに運動でき、あなたは何かほかのことに意識を向けながらでも、できるのです。また、心拍数も一定のレベルを保ちやすくなります。
また小さな筋肉よりも、下肢の大筋群を使った運動のほうが、静脈血の心臓への還流が促されるので、心臓の負担も少なくてすみます。つまり、イスに座った腕だけのダンベル体操よりも、歩いたり、ステップを踏んだり、足を動かした運動ということです。
有酸素運動は酸素によって脂肪を燃焼でき、足腰の強化に役立ち、血行がよくなることから多くの健康効果が期待できます。実際、医療の現場でも食事療法、薬物療法とならび、運動療法としても利用されています。
有酸素運動は20分あたりから体脂肪をおもなエネルギー源として利用できるため、ダイエットにも適した運動です。
有酸素運動は、誰かと競う必要もなく、自分のペースを維持して行う運動といえます。
■ 無酸素運動(アネロビクス)
一方、無酸素運動とは一言で言うと”激しい運動”であり、運動中は息をとめたり、息を強く吐いたりするために、楽に呼吸することもできず、そのため酸素の取り込みが少ない運動です。(そのかわり運動後は、不足した酸素を取り込もうとして、呼吸が激しくなる)無酸素状態、あるいは酸素が少ないために、息苦しさを感じることの多い運動です。
こういった状況下で運動をするために、、無酸素運動のときは、酸素がなくてもエネルギーを生み出せる仕組みを利用しています。
無酸素運動は筋肉内のグリコーゲン(糖質)を使いますが、蓄えが少ないので、長時間続けることはできません。まず、筋肉内に乳酸が貯まってきて筋肉が動かなくなってきます。腕立て伏せも、ずっとやっていると腕が言うことをきかなくなって、しだいに動かなくなります。これによって、蓄えが少ない糖質を使い切る前に筋肉にセーブをかけて、体を危機から守っているわけです。
無酸素運動には筋力トレーニング、短距離ダッシュなどがあり、筋肉を鍛え、基礎代謝を高めることができるという長所があります。一般的に有酸素運動といわれる水泳やジョギングも激しく行えば、無酸素運動になります。
しかし、気をつけないと、あなたの健康を害する危険があります。とくに高齢者や高血圧などの疾患がある人は控えなければなりません。運動中の心臓発作などの危険も伴います。
また、有酸素運動は活性酸素を減らしていくのに対して、無酸素運動は活性酸素を生じる危険があります。
よく誤解されがちですが、無酸素運動とはいっても有酸素的なエネルギーも利用しており、無酸素的なエネルギー産生(酸素を利用しないで、糖質だけからエネルギーを生み出す産生)の割合のほうが多いということなのです。
まったく息をとめて力むような運動以外なら、わずかでも酸素を取り入れているからです。 100メートルの全力疾走という無酸素運動であっても、全体の17%が有酸素的エネルギーといわれています。
運動の強度が低くなるにつれて、酸素の体内への取り込み量が増えるにつれて、また時間が長くなるにつれて、有酸素的エネルギーにたよる割合が多くなっていきます。
この中の「有酸素運動」を習慣的に行いましょう。これにより「セロトニンの働き」がよくなり「ストレス耐性」の体づくりが期待されます。
また、ヨガ、太極拳、座禅なども、ミトコンドリア活性化が期待されます。
ヨガや太極拳、気功などによって身体をゆ~っくり動かすことで遅筋は鍛えられると言います。背筋を伸ばす、というのもこの延長で大きな背筋の赤身を鍛えることでミトコンドリアを増やすことができるということです。
マグロ=赤身=遅筋のことでミトコンドリアが豊富に含まれている身体部位とのことです。例えば心筋や太ももの筋肉や体幹を支えるインナーマッスルのことで長時間動き続けスタミナを要する動きをする筋肉です。マグロトレーニングとはこの遅筋を鍛えようというもので、例えばウォーキングよりやや強めの運動をある程度の時間継続することで鍛えられるということです。
運動の効果として
・ストレスに強い体になる
セロトニンに関しては、運動することにより、セロトニンに変わる前のアミノ酸(セロトニンの前駆体であるトリプトファン)が脳へスムーズに届くようになります。セロトニンの材料がうまく脳に運ばれることは大事です。セロトニンが少ないことは片頭痛の原因といわれています。その逆にセロトニンが脳にしっかり届けばストレスに強い体となり、元気に働いたり余暇を楽しんだりできるでしょう。
・快感物質エンドルフィンが分泌される
「ランニング・ハイ」という言葉を聞いたことがありますか? 走っていると気持ちがよくなってどこまででも走れてしまう感覚。陸上競技をやった人だったら経験があるでしょう。脳内麻薬のエンドルフィンが出ている状態、とも言われています。
何十キロも走らなくても、15分程度の有酸素運動でもセロトニン、ドーパミン、さらに脳内麻薬のエンドルフィンが出て、プチランニングハイが味わえます。運動を続けることによって、エンドルフィンが出やすくなるので、ぜひ継続して、気持ちよさを味わってストレスを発散させてください。
以上、頭痛がきた時に運動するのはいけませんが、普段なんでもない時に軽い有酸素運動でリフレッシュすることは非常に大切です。ダイエットにも効果があり、健康にもいいと実践する人が増えているウォーキングは、慢性頭痛の人にもお勧めの運動です。加えて「スッスッハー」と、腹式呼吸をしながら歩くことで、片頭痛と関係が深いセロトニン神経を鍛えることができると 考えられています。緊張型頭痛の人にも、有酸素運動でからだをほぐすのは有効です。
このように有酸素運動は、ミトコンドリアを増やす、セロトニン神経を鍛えるといった意味合いがあり、この点から片頭痛治療上重要と考えられます。
こういったことは従来から「片頭痛のセルフケア」の一項目として挙げられていました。
以上、いろいろな運動の仕方をご紹介してきましたが、これらを全て行う必要はありません。自分で、まずできそうな方法から開始して下さい。時間にも制限がありますので、自分に最も適した方法と思われたものから始めて下さい。何をしなくてはならないという訳ではありません。ただ、これを、日常生活習慣として下さい。きっと少しずつ効果が現れてくるでしょう。最初は極く軽いものから、少しずつ運動量の多いものへと、進めることが重要で、いきなり負担になる運動はしてはいけません。これが原則です。
片頭痛の方々のミトコンドリアの働きの悪さの程度は各人・各様でさまざまです。ですから、自分の体力に合わせて、少しずつ運動強度を上げていくことが原則です。決して、無理をすると返って逆効果になってしまいます。自分のミトコンドリアの働き以上の運動を無理して行うことによって活性酸素を増やして、ミトコンドリアを逆に弱らせては何もならないということです。このため徐々に、運動強度を上げていくことです。絶対に無理なことはしてはならないということです。
片頭痛の症状を感じているときには、体操によって症状が悪化することもあります。判断が難しいかもしれませんが、少し体を動かして痛みが激しくなるようであれば、痛みが治まってから体を動かすのがよいでしょう。
そうでない場合は、ストレッチ程度の軽い運動であれば誰にでも簡単に行えますのでやってみてください。
2.バランスのよい食事
栄養学的見地からみた「食事のバランス」
これまで「カロリー制限食」として、栄養士や医師は「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」が推奨されてきました。しかし、「糖質制限食」を提唱される江部康二先生は、人類本来の食生活からみると最悪のバランスであるとされます。
このような「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」という摂取比率には科学的根拠はないとされ、どのような比率が適切なのかは明確になっていません。「人間にとって最高の健康食」としての”糖質、脂質、タンパク質の比率”がどのようなものなのでしょうか。
とくに片頭痛治療上、どのような比率が適切なのでしょうか? 特に、年代によってこの摂取比率は当然変わってきます。成長期にある年代、成人、妊婦、では比率は変わって当然のことです。この点が最も難しいことになってきます。
極端な糖質制限を行えば、エネルギー源を脂質に求めなくてはならなくなります。こうした場合、どの年代でも可能なものとは思えないはずです。そうなれば、「過食にならない」程度のカロリー数を設定した上で、糖質、脂質、タンパク質の比率をどのようにするかを考えなくてはなりません。こうした肝心要のことが医学的に明確になっていません。
蛋白質に関しては、総摂取量をどの程度にすべきか、腸内環境を悪化させない量を想定しなくてはなりません。そして、トリプトファン摂取に関連して、アミノ酸比率が重要になってきます。
さらに、脂質では、体内では合成できない必須脂肪酸のオメガ3系、オメガ6系脂肪酸の摂取比率も重要になります。シソ油(エゴマ油)や亜麻仁油、エクストラバージンオリーブ油、ゴマ油やナタネ油などの良質な油も念頭に置かなくてはなりません。さらに、総摂取量も問題になってきます。とくに糖質との関連から重要になります。
さらに「インスリン過剰分泌を来さない食事摂取方法」に関する配慮も大切になります。
ビタミンに関しては、ビタミンA、B群、C、Eの摂取が大切になり、カロテン(カルテノイド)、ポリフェノール類、などの「抗酸化物質として食品」から摂取することを念頭において配慮しなくてはなりません。こうした野菜は、食物繊維・抗酸化物質との関連から片頭痛治療上極めて重要な位置を占めており、その摂取量は厳格に設定される必要があります。
また、ミネラルに関しては、マグネシウム、カルシウムの摂取バランスも大切になります。亜鉛、鉄、その他の微量ミネラルに配慮しなくてはなりません。さらに、マグネシウムは日常の食習慣・ストレスなどにより容易に不足しがちで、片頭痛治療上で極めて重要なミネラルであり、マグネシウムの基本摂取量も設定する必要もあります。
マグネシウム不足は片頭痛を増悪させる元凶になっており、注意が必要です。
このように、毎日摂取しなくてはならない食事のことですので、こうした栄養素、ビタミン、ミネラルの摂取のあり方の基本原則を確立しなくてはなりません。
このような「片頭痛治療上の栄養学」は現段階ではまったく存在しません。
少なくとも、食事は人間にとっては、生活の中の楽しみ、嗜好として重要な位置を占めています。原則として「健康食」として推奨される「人間にとって最高のバランス」とはどのようなものかを探求し、これを日常の食生活に取り入れ、適宜”嗜好としての食生活”をとりいれることが大切となってきます。
余りにも、「人間にとって最高のバランス」としての健康食にこだわる余り、これがストレスとなって、片頭痛を誘発させる原因ともなれば、ミイラとりがミイラにならないとも限りません。このためには気楽に実行できるようにすることが大切になってきます。
「人間にとって最高のバランス」とはどのようなものなのでしょうか
バランスのとれた食事とは・・・
医者や栄養士はよく、バランスのとれた食事が大切であると言います。しかし、これほど曖昧に使われている言葉はありません。バランスのとれた食事が大切であると言う医者や栄養士自身が、それが実際にどのような食事を指すのかが分かっていないのです。具体的な指示を出さずに、どうして患者に食生活の改善を指導することができるでしょうか。 それでは口先だけのきれいごとになってしまいます。「バランスのとれた食事」とは、どこまでも具体的な内容によって示されるべきものです。
具体的に言えば、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素・食物繊維・薬理効果の高い植物栄養素を十分に含み、オメガ3とオメガ6の摂取比率が適正で、抗酸化栄養素・解毒栄養素・酵素をたっぷり供給できる食事のことです。しかし、こうした栄養学的条件をすべてクリアした食事を栄養学理論に基づいて組み立てようとすると、それがいかに難しいことであるかがすぐに理解されます。あまりにも諸条件が複雑に入り組み、現実にどのようにメニューを立てたらよいのか分からなくなってしまうのです。現代栄養学の理論を忠実に実践しようとすればするほど、食事の組み立ては困難を極め、絶望的になってしまいます。
伝統的な日本料理・長寿村の食事をモデルにした「食事」
栄養学の理論が分かっても、それを実際の食事改善に結びつけるのは容易なことではありません。「必須栄養素を満たす」という1つの条件だけにしぼって考えてみても、その難しさは十分に理解されるはずです。一定のカロリーの枠内で、50種類もある必須栄養素を過不足なく摂取できる食品の組み合わせを、短時間に、しかも毎日計算できるような人はいないでしょう。10種類くらいの必須栄養素なら、何とか理論どおりの食事の組み立てはできると思うかもしれませんが、実際にメニューをつくってみると、すぐにカロリーの枠を超えてしまいます。まして50種類もの必須栄養素や食物繊維・酵素などを完璧に満たそうとすれば、毎日毎日、家畜なみに穀類や野菜を食べ続けなければならなくなってしまいます。「正しい食事」は人間を健康にし、「悪い食事」は人間に病気をもたらします。私たちの食事が正しいものかどうかは、それを続けた結果に反映されるのです。つまり人々の健康状態は、それまでの食事が正しかったか、間違っていたかを示す指標と言えます。
こうした発想から、食事療法のヒントを探ってみましょう。
伝統的な日本食への注目
現代栄養学が始まった頃、欧米の栄養学の研究者は、伝統的な日本人の食事に注目しました。なぜなら日本は欧米と肩を並べる先進国でありながら、国民の平均的健康状態が飛び抜けて高かったからです。ここで対象となった日本人の食事とは、現代人が一般に食べているようなものではなく、50年以上も前の日本人の食事のことです。日本の伝統食についての研究の結果、さまざまな栄養学的事実が明らかにされることになりました。我が国の伝統的食事の中でも、特に刺身や多種類の発酵食品・大豆食品に関心が集まりました。
そしてこれらが、日本人の健康と長寿を支えてきた大きな要因であることが突きとめられたのです。
今や欧米では、「日本食は健康によい」という認識が定着しています。そのため、鮨・刺身・豆腐・納豆といった伝統的な日本食が、海外で大流行するようになっています。多くの外国人が豆腐ステーキを食べ、すしバーにせっせと足を運んでいます。
ここに食生活の1つのヒントがあります。つまり食事療法の具体的モデルとして、「伝統的な日本食」を考えてみるということです。
(伝統的な日本食とは、昭和30年以前の食事のことです。)
長寿村の食生活
また日本人全般という大きな単位ではなく、「長寿村」という特定の狭い地域に注目しても、食事と健康の明確な関係を理解することができます。日本各地には昔から、長寿村として知られる村々が点在していました。そうした中で最も有名な長寿村が、山梨県の棡原です。(現在の山梨県北都留郡上野原町)
長寿村という名前が示すとおり、そこでは90歳、100歳を超える老人たちを至るところで見ることができました。さらに驚くべきことは、その年寄りたちの健康レベルの高さです。かつての棡原では、80歳を超えた老人であっても畑仕事を日課とし、特別な病気で苦しむようなことはありませんでした。寝たきり老人は1人もなく、認知症や、糖尿病に代表される成人病とも全く無縁でした。年寄りたちは亡くなる直前まで普通に暮らし、ある日、眠るがごとく息を引きとっていました。まさに大往生という言葉がピッタリの、安らかな死を迎えていたのです。
これまで棡原は、多くの研究者によってさまざまな角度から研究されてきました。その結果、棡原の人々の優れた健康状態と長寿の要因の1つが、村人の日常の食事にあったことが明らかにされました。
しかし戦後、バス路線の開通にともない“陸の孤島”の生活は一変しました。村の若者たちの食生活はたちまち西洋化されたものになり、それと同時に、以前には存在しなかった現代病・成人病が急増するようになりました。村人の食生活は、伝統的な食事を続ける年寄りと、加工食品や洋食などの現代的な食事をする若者に分かれ、中年層の短命化が目立ち始めるようになってきました。やがて棡原は、かつての長寿村の面影を完全に失うことになってしまったのです。
この棡原における出来事は、私たちが食事療法を考えるに際して、重要なヒントを与えてくれます。健康と長寿が当たり前だった当時の棡原の人々と同じような食事をするならば、彼らのような健康と長寿が得られる可能性があるということです。そして間違った食事を続けるなら、すぐに病気で短命化するということなのです。
伝統的な日本食・長寿村の食事こそが、食事療法の基本
伝統的な日本人の食事と、長寿村の食事が、現実的に高い健康レベルをもたらしてきました。したがって、こうした食事をモデルにして真似ることが、そのまま食事療法の基本になるのです。そして驚いたことに、日本の伝統食や長寿村の食事は、現代栄養学が明らかにした科学的な理論と多くの点で一致しているのです。つまり私たちが、かつての日本食や長寿村の食事をモデルにして、これにならう努力をするなら、個々の栄養学理論についてあまり神経質に考えなくても、結果として理想的な食事を組み立てることができるのです。日本の伝統食や長寿村の食事を真似ることによって、大半の条件を満たす食事をつくることができるのです。
20世紀の人類に病気を蔓延させてきた欧米型の食事の特徴は、肉・油・砂糖・加工食品が極端に多く、野菜が少ないというものです。高タンパク・高脂肪・高カロリー・低食物繊維・低ビタミン・低ミネラルが間違った食事の特徴です。それに比べ、よい食事のモデルである昔の日本食や長寿村の食事は、見事なまでに正反対なのです。欧米型の食事の最も対極にあります。肉料理・油料理・加工食品はめったに食卓にのぼることはなく、多種類の野菜が日常的に摂られてきたのです。
食事療法の基本とは
「伝統的な日本食」と「長寿村の食事」をモデルにして、これに近づけていくことが食事療法の指針になります。ただ単に昔の伝統食を真似るのではなく、現代栄養学の最新の科学的知識を応用して、伝統食の利点を引き上げた、さらに強力な伝統食でなければなりません。こうした観点から、食事療法の具体的な方向性について見ていくことにしましょう。 伝統的な日本食や長寿村の食事を真似てこれに近づけるためには、具体的な食事療法の指針が必要となります。その指針とは、次の10のポイントにまとめられます。
1) 加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす
2) 脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る)
3) 肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする
4) 砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない
5) 主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える
6) 豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る
7) 野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る
8) 魚貝類を少量摂る
9) 発酵食品を常に摂る
10) 食材・調味料は自然で新鮮なものを使う
このような基本的な考え方で「食事療法」は考えなくてはなりません。
このような基本原則は、「健康的な生活と長寿」を目的とするものであり、これはミトコンドリアの機能改善・ミトコンドリアの働きを悪くさせないことを目的としたものに他なりません。ということは、片頭痛治療上の食事療法そのものということになります。
腸内環境からみた「食事バランス」
ここで、自然派医師の本間真二郎先生は、「健康的な生活を送る」ための食事について、腸内環境の観点から、以下のように述べておられます。
これまでの栄養学的見地からみた「健康的な生活を送る」ための食事と比較すれば、誠に興味深いものと思われ、「バランスのよい食事」を考える際に重要と思われます。
日本人は「和食」を自然食でとるのが一番
食事は、私たちの健康にとってもっとも重要な要素のひとつです。
ところが忙しい現代人は、便利さや手軽さを優先し、ファストフード、インスタント食品、冷凍食品、レトルト食品、缶詰、瓶詰といった加工品など、食品添加物がたっぷり含まれた食材を多用しています。その結果、自然からかけ離れた食生活になりがちです。
お金や手間がかかりますが、家族の健康のためにも、できるだけ自然の食材を選んで使い、食事を手づくりすることで、自然に沿った食生活に戻すことが大切です。
理想の食生活は、自然農や有機(オーガニック)農でつくられた旬の食材を使い、食物添加物などの化学物質を使わない「自然食」です。日本の伝統食である「和食」は、私たち日本人の体質に合っています。ごはんやみそ汁を中心とする一汁三菜の和食こそが、日本に住んでいる私たちにとって、ふさわしい食事と言えます。
実は、住んでいる気候や風土、遺伝が異なれば、からだにいい食事の内容も変わってきます。
たとえば、パプアニューギニアの高地に住む人たちは、食事のほとんどが、タロイモといういもです。それでも彼らの栄養が足りなかったり病気がちだったりということはありません。プロレスラーのような筋骨たくましい体型の人が多く、みな健康。アフリカのマサイの人たちは牛乳を1日に5~10リットルも飲んでいます。彼らも身体能力が高く、健康に生きています。伝統的な生活をしているイヌイットの人たちは、トドやアザラシなど、ほぼ動物性食品100%の食事をしていますが、病気も少なく健康です。
私は、動物性食品をあまり推奨していませんが、マサイやイヌイットの人たちは、動物性食品中心の生活でも問題なく暮らしています。どうして、このような違いが出るのでしょうか。
答えは腸内細菌にあります。パプアニューギニアの人たちはいもだけを食べていても、腸内細菌がすべての栄養素を補っているのです。同様に、マサイやイヌイットの人たちも、彼らに適合した腸内細菌を持っています。腸内細菌は、その土地と切っても切り離せない関係にあります。
日本に住む私たちも、日本人特有の腸内細菌を持っています。ですから、外国のものを食べたり、外国から入ってきた新しい健康理論に合わせたりする必要はありません。
土地の恵みであり、知恵と工夫によって長年日本人の生活を支えてきた和食がもっとも健康に役立ち、腸内細菌もそれに合ったいいバランスを保っているのです。健康のためには、その土地に合った食事で腸内細菌を整えることがなによりも大切です。
積極的にとりたい食材「まごわやさしい」
日本人のからだに合う食事は、伝統的な和食です。和食は、①ごはん ②みそ汁 ③漬けものの3点セットが基本になります。それに、梅干しとごま塩を加えるのがいいでしょう。
ごはんは、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富な玄米がおすすめです。炊き方を工夫すればモチモチとおいしくできますが、玄米が苦手な人や体質の合わない人は、分づき米や雑穀・豆類を混ぜてみてください。
これに、食品研究家で医学博士の吉村裕之先生が提唱されている「まごわやさしい」を参考にしておかずを加え、一汁三菜を目安に献立を考えます。具体的には、以下の食材が健康に役立つとされています。ふだんの食生活に、積極的にとりいれましょう。
まめ……大豆(みそ、しょうゆ、豆腐、納豆など)、小豆、えんどう豆、いんげん豆
ごま……ごま、木の実(松の実、ピーナッツ、くるみ、ぎんなんなど)
わかめ=海藻類……わかめ、こんぶ、ひじき、のり、あおのり、あおさ
やさい……根菜、葉菜(キャベツ、白菜など)、果菜(なす、トマトなど)
さかな……小魚(しらす、あじ、いわし、さんまなど)、貝類、桜えび
しいたけ=きのこ類……しいたけ、しめじ、えのき、きくらげ、エリンギ
いも……さつまいも、里いも、じゃがいも、山いも、長いも
毎度の食事ですべてとることは難しいので、1週間くらいの間で、なるべく万便なくとれるように工夫しましょう。
注目したいのは、ここに肉類や牛乳が含まれていないこと。日本人には、基本的に動物性食品(小魚や貝類を除く)は必要ないのです。
ちなみに、50年前と現在の食品栄養表を見比べると、野菜に含まれるビタミンやミネラルは激減しています。これらを理由に肉食を勧める人もいます。実際に栄養障害が一時的に改善する例も見られるものの、肉食自体の健康や環境への長期的な悪影響のことも考える必要があります。
旬の野菜の栄養価は昔とほとんど変わらず高いので、地域の自然農や有機農の新鮮な野菜を工夫してとれば、動物性食品を多く摂らなくても栄養障害にはなりません。
”腹八分目”が健康の基本
「腹八分に医者いらず」という諺(ことわざ)があります。少食が健康の基本であることは、日本のみならず、海外でも古くから知られています。さらに、「腹七分で病半分」、「腹六分で老いを忘れる」という言葉も。現代に多いガンや高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、肥満などの生活習慣病の原因に、「飽食」があることは間違いありません。日本では、江戸時代(元禄期以前)は1日2食だったという説もあります。少食により寿命が長くなること、ガンの発生率の低下や生存日数が長くなることなど、健康にとっていい面が多数報告されています。
食べすぎると、消化や吸収、代謝が追いつかず、消化管が疲れ、胃腸や膵臓、肝臓に負担がかかります。食べものに含まれる添加物、農薬などの化学物質、毒物も蓄積します。 また、消化管に血流がとられることにより、全身の冷えにも繋がり、免疫力が低下します。血糖値の急激な変動により、ストレスに対処する副腎が疲れ、精神的にも不安定になります。
子供でも、基本は食べすぎよりも少食のほうがいいでしょう。ただし、育ち盛りで食欲が旺盛な子どもの場合、特別に少食を意識する必要はありません。とくに、部活などで運動量が多い子やよく遊ぶ子に制限は不要です。要は、食べた量を消費できていればまったく問題ないのです。
よく噛んで食べること
食事は、ひとロにつき、30~50回くらい噛むことを心がけましょう。病気の人は100 回以上でもいいと言われます。日本には、箸置きというものがあります。本来は、ひと□食べるごとに箸をおき、よく噛み、時間をかけて料理を味わいながら感謝して頂くのが、日本ならではの食文化です。しかし、現代の食事はやわらかいものが多く、あまり噛まないでも飲み込むことができてしまいます。食事時間もとても短く、数分で1回の食事を終えている人もいます。
よく噛むことにより唾液の分泌が増え、胃腸での消化・吸収を助けます。また、唾液には免疫物質が多く含まれており、免疫を増強し、病気や虫歯を予防する作用があります。 ひと口につき30回以上噛むことにより、農薬、添加物、発ガン性物質などの有害物質のほとんどが口の中で分解されます。よく噛むことは、脳への血流や振動などの刺激を増やし、乳幼児の知的発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりします。また、味覚が発達し、食欲の増進や心理面にもいい影響を与えるなど、実にたくさんの有益な作用があるのです。
よく噛むことは単純な行為ですが、お金もかからず、だれでも行うことのできる健康法と言えるでしょう。子供のうちから習慣にしたいことだと思います。
「身土不二」-その土地でとれる旬の食材を食べる
「身土不二」とは、人のからだ(身)と住んでいる風土(土)には密接な関係があり、その土地に住む人々の健康にとって、もっとも適した農作物がもっとも適した時期にとれる、という考え方です。たとえば、夏にはからだを冷やす野菜(きゅうり、なす、トマトなど)が、冬にはからだを温める野菜(ごぼう、にんじん、れんこんなど)が収穫されます。春にとれるふきのとう、わらび、菜の花などの山菜や野草は苦みが多く、冬にたまった脂肪分や毒素の排出を促します。
このように、季節ごとにとれる作物にはそれぞれ意味があるのです。つまり、食材は地元でとれる旬の作物を選ぶのが健康にとっていい、ということになります。
このことは、微生物の観点からも説明できます。土の中の微生物は、不用の有機物を分解し、植物に養分を供給している、地球の大きな循環の要です。それぞれの土地に、異なる固有の微生物がいます。たとえば、熱帯には熱帯地方の、温帯には温帯地方の、寒帯には寒帯地方の微生物がいます。さらに、自然環境は気温だけではなく、天気、降水量、日照量、湿度、風、地形など、さまざまな影響を受け、それぞれの土地で増えやすい微生物が異なります。
同じ日本国内でも、地域によって微生物の組成はすべて異なると考えられます。同じ地域でも、農薬や化学肥料を使うか使わないかなど、作物の育て方によっても変わってきます。
植物に養分を供給しているのが微生物ですので、その土地固有の微生物が、その土地にふさわしい農作物を育て、その土地にふさわしい私たちのからだをつくります。その結果、私たちの体内で増えた腸内細菌などの常在菌は自然に土に戻され、再び私たちのからだをつくる植物を育てる、という循環が生まれます(糞尿を堆肥として使用することを勧めているわけではありません)。このように、私たちのからだは、その土地の微生物と一体化していくことによって、お互いに支え合いながら健康に繋がっていくのです。自然のしくみは、特別な理屈を考えなくとも、私たちの健康を支えています。ですから、自然に沿った暮らしをしていれば、病気にならないということになります。
現在の日本では、旬の食べものという考えが失われつつあり、季節に関わらず、ほぼ一年中好きなものを食べることができますが、旬の野菜と旬ではない野菜は、見た目は同じでも栄養価がまったく異なります。また、日本とはまったく気候や環境の異なる熱帯や寒帯、地球の裏側からでも、食料を輸入しています。輸送には莫大なエネルギーが必要ですし、農薬や防腐剤、保存料などの添加物を大量に使うことにもなります。
地産地消がいいのは、ただ単に輸送費がかからないという経済的なメリットだけではなく、健康の観点においてこそ重要なのです。
「一物全体食」-食は命を丸ごと頂くこと
「一物全体」とは、生きているものはすべて丸ごとで完全であり、かつバランスがとれているという意味。そして、食材も丸ごと全体を頂こうというのが「一物全体食」の考え方です。そして食べることは、生きものの「いのち」を頂くという行為になります。
たとえば、米なら精米した白米ではなく玄米が、パンや小麦粉なども精白粉ではなく、できるだけ全粒粉を使ったほうがいいのです。野菜の皮や根は、なるべく捨てないで積極的に利用します。精製された食品は、ミネラル、食物繊維、ビタミンなどの栄養成分が激減しています。精製食品をとると、それ自体の消化・吸収のためのビタミン・ミネラルが足りないため、骨やほかの臓器からもってくる必要があり、全身に負担をかけることになります。
現代では、「食べにくい」、「おいしくない」、「見た目が悪い」などの理由から、出まわっている食品の多くが精製された食品です。しかし、自然にあるもので、本来、無駄なものはなにひとつありません。人の都合で、いらない部分をとり除いて捨てるという考え方自体が、自然の法則から外れたものとも言えるでしょう。また、精製されていない食品はおいしくないというのも、単なる先入観ではないでしょうか。手をかけて育てられた野菜は、皮つきのほうがおいしく頂けます。皮をむく手間も省けますし、ゴミも少なく、一石二鳥です。米も、白米だと噛まなくても一気に甘みが広がりますが、甘みは急速になくなるため、味わい深さがありません。いっぽう、玄米は噛めば噛むほど、風味やうま味が増していきます。
本来、栄養素は、一物全体の状態からよく噛んで食べ、時間をかけて消化・吸収することが、からだにとって理想的です。病気などで、極端に消化・吸収の能力が落ちている場合を除き、消化にいいものをとる必要はありません。消化管の機能を怠けさせるだけでなく、腸内細菌にも悪影響を与えます。精製され、単独になった栄養素を大量にとるという行為は、歴史をふり返ってみても、近代になるまでありませんでした。白米や小麦粉だけでなく、白砂糖、精製塩、化学調味料、さらには薬やサプリメントなども同様に、精製された食品の仲間です。
農薬や放射能を心配して、玄米など未精製の食物を避ける人もいるかもしれません。たしかに、農薬などは、ぬかや外皮の部分に貯まりやすく、人体に有害です。しかし、私はそれでも「一物全体食」を勧めます。なぜなら、解毒力、排出力を高めてくれるのが、「一物全体食」であるからです。放射能を避けることも大切ですが、たとえ□にしたとしても、その分出せるからだであることのほうが、より重要であると述べておられます。
「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」 表1
1.生活習慣の問題
睡眠不足
運動不足
食べ過ぎ・過食
早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬
2.食事内容の問題
マグネシウム不足
必須脂肪酸の摂取のアンバランス
鉄不足
食生活の欧米化・・腸内環境の悪化
3.生活環境の問題
活性酸素 野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
有害物質
4.年齢的な問題
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下
以上のような諸々の要因がミトコンドリアの働きを悪化させます。
ということは、毎日生活するなかで、刻々と、ミトコンドリアの働きを悪くさせる原因に満ち溢れていることを意味し、こうした危険に常に曝されているということです。
片頭痛の遺伝素因を持っておれば、この危険性が高いということです。
「自然治癒力」と項目を分けて述べ、理解しにくいかも知れませんが、広い意味では「健康的な生活」を行うための原動力とでも解釈すべきものかもしれません。
片頭痛そのものは”症状”であり、”病気”ではありません、ましてや”感染症”ではないのですから・・・