「片頭痛」と「てんかん」の相似性 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 まず、最初に、片頭痛とは関係なく、「てんかん」について述べます。


 てんかんは、大別して「真性てんかん」と「症候性てんかん」に分けられ、「症候性てんかん」とは、脳腫瘍とか脳梗塞のような脳に器質的な病変の明らかなものを言います。
 「真性てんかん」とは、このような器質的な病変が明らかでないものを言います。
 治療方針として、症候性てんかんの場合は、その原因となる器質的病変に対して行われることになり、大半は手術で除去することになり、取り除けない場合は抗てんかん薬を服用します。
 真性てんかんの場合、抗てんかん薬を服用して発作が起こらなくすることです。
 この場合、睡眠を十分にとり、食事を規則正しく摂取することが原則とされています。
 このため、抗てんかん薬だけ服用していたからといっても、生活のリズムが乱れると、発作のコントロールは極めて困難となって来るため、抗てんかん薬の服用と同格の程度に「生活規制」が重要とされています。
 結局、このような考え方で治療していかない限りは、一生、抗てんかん薬のお世話にならなくてはいけない運命にあります。


 一方、てんかんと片頭痛は密接な関係があり、片頭痛は本質的にてんかんの一種であり、共通して基礎にあるのは「脳の興奮性の亢進」であるとされています。
 片頭痛の場合も、睡眠を十分にとり、食事を規則正しく摂取するのが原則とされています。

 このような「規則正しい生活のリズム」と「脳の興奮性の亢進」が何らかの関係があるものと思われます。
 しかし、片頭痛の場合、一生、抗てんかん薬のお世話にならなくてはいけない方々は少ないと、これまでの経験から明白です。

 これは、なぜなのでしょうか?

 この点が明確にされていないのが実情です。この点を、自分自身の片頭痛を振り返り、検討すべき点です。


 最近の見解からすれば、以下のように考えるのが妥当のようです。


ミトコンドリアの働きの悪さに、マグネシウム不足が加わると・・


 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
 細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、透過できるイオンの種類によって、「ナトリウムチャネル」とか「カルシウムチャネル」といった名がつけられています。これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整をするのです。


 ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。

 

 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
 細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎると、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
 ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が強く係わっており、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常に大きな原因となります。
 このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、溜まっていたカルシウムイオンなどが排出され、それにつづき、水分も排出されますが、この水ぶとり状態も限度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。

 そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。
 これが石灰化した細胞のことです。動脈硬化の原因の一つです。結果的に、この細胞は死滅してしまいます。
 細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことになります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果でもあるのです。


 このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。同じくマグネシウムイオン感受性のATP依存性カルシウムポンプの活性低下を招くことになり、細胞は興奮しやすくなります。これが「脳過敏」を引き起こしてきます。
 このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの好気的代謝異常をきたして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。


 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。


 片頭痛では、ミトコンドリア代謝異常が生まれつき存在するために、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。

 マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。

 神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの代謝異常の結果として生じているものです。

 このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。


 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。


 そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。


 これが「脳過敏症候群」の本態です。市販の鎮痛薬の服用が原因ではありません。間違えないようにして下さい。この点は極めて重要なことで、忘れてはなりません。

 


 この点に関して、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は以下のような見解を示されま
 す。


 「セロトニン」、「ミトコンドリア」、「てんかん」、「片頭痛」の関係を下図のように表してみました。


症状       片頭痛      てんかん
             ↑          ↑

機能障害  セロトニンの合成← 神経細胞の電気的性質(脳過敏)
           &伝達
             ↑          ↑

原因        「ミトコンドリア活性の低下」


 「ミトコンドリア活性の低さ」は片頭痛発症の引き金となる「活性酸素」発生源であると ともに、セロトニンの合成や神経細胞の電気的性質に障害をもたらし、神経細胞の電気的 性質はセロトニンの伝達にかかわります。
 片頭痛は「ミトコンドリア機能障害」にともなう、活性酸素を引き金に、過度に緊張し た神経細胞およびセロトニン不足により発症する(ミトコンドリア機能障害/カルシウムチャネル異常の部分です)と考えられます。
 ミトコンドリア活性はセロトニンの合成、セロトニン合成酵素の合成、・・・のように、 全ての体内代謝のエネルギー源としてかかわるので、ミトコンドリア活性が低いということは、セロトニンの合成能も低く、神経細胞の電気化学的な異常も起きやすいと考えられます。
 「てんかん」の発症メカニズムとして「海馬」および「その周辺の大脳皮質辺縁部」を切除すると「てんかん」は発症しなくなるとのことから、「てんかん」は「海馬」あるいは「海馬周辺の大脳皮質辺縁部」の、片頭痛とは脳部位が異なるところでの「虚血」が引き金となって引き起こされる、「脳過敏」と「セロトニン不足」がおもな原因と推測しています。
 実際、抗てんかん薬は脳神経細胞のカルシウムやナトリウムチャネルに作用するものであることから、「てんかん」の発症にも、「片頭痛」の発症にも、神経細胞内のイオンの出入にかかわる問題がその背景にあると考えられます(片頭痛における、脳表面の脱分極((CSD・閃輝暗点))も神経細胞内のミネラルイオンの出入り上の問題と理解されます)。
 片頭痛発作発症の引き金(最後の砦)、「脳内セロトニンの合成不足」と「伝達量の不足」、いわゆる「脳内セロトニン不足」にあると考えられます。
  「脳内セロトニンの合成不足」には食事の乱れを正すことやセロトニン神経を刺激することにより片頭痛体質を改善に向かわせます。しかし、「伝達量の不足」には「体の歪から来るストレス」であれ、「精神的なストレス」であれ、一時的には副腎皮質ホルモン等によって「伝達量の不足」は改善されますが、このような状態が継続されればセロトニン回収量が滞るようになります(慢性化の大きな要因の一つと考えます)。
 片頭痛の発症には「脳の過敏状態」がその背景にありますが、単に神経細胞内外の「ミネラルの取り込みと、排出のバランスの異常と考えられます。
 神経細胞は軸索を含め、その興奮は主にカルシウムイオンの細胞内への取り込み過ぎ、or細胞外へのくみ出し不足により生じると考えられ(実際は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの働きが複雑に絡み合っているようですが)、その異常は「マグネシウム不足」と「ミトコンドリア活性の低さ(ATP 不足)」に原因があると考えられます。
 実際に、カルシウム拮抗薬は片頭痛予防に効くこともあるようですし、「マグネシウムの摂取」は私がかかわった全ての方で効果が認められています。
  頭痛やてんかんは脳神経細胞(軸索を含む)が過敏になりすぎることにより生じます。電気化学的に見ると、細胞内にカルシウムやナトリウムなどのイオンが過剰に入りすぎ、カ リウム、マグネシウムイオンとの適正なバランスが保てなった状態であり、神経細胞が電気的に過剰励起した状態が発症の引き金となります。
 過剰に取り込まれたカルシウムイオンやナトリウムイオンは、通常、神経細胞内に多く含まれるカリウムイオンとマグネシウムイオンにより適正に調整されていますが、これらのマグネシウム、カリウムイオンが不足しますと神経細胞は緊張したままの状態になります。
 特に「マグネシウムイオン」は“カルシウムやナトリウムイオンを汲み出すポンプの原動力”となるイオンであり、カルシウムイオンの“取り込み口”の大きさを調整する働きも あります(カルシウム拮抗薬と類似の作用)。
 ただし、カルシウム拮抗薬はこのカルシウムイオンの“取り込み口”を塞ぐことにより、その効果を発現するのですが・・・。
 また、今服薬されている“抗てんかん薬”はいずれもこれらのイオン取り組み口に作用するもので、なかでもデパケンは、ナトリウム取り込み口、カルシウム取り込み口などにバ ランスよく作用することなどのため、片頭痛の予防薬としても用いられることがあります。
 しかし、抗てんかん薬は目的とする部分の神経細胞以外の神経細胞にも変容をきたします(スピル・オーバーといいます)。そのため、他の脳機能障害を引き起こすことにもなります。
 マグネシウム不足の人が、マグネシウムをとることは人が本来持っている機能を正常な状態に戻すことになりますが、安易な“抗てんかん薬”の服薬は中長期的には片頭痛体質を悪化させるだけであること認識する必要があります。・・・・
 このように、私は「マグネシウム」が「脳過敏症候群」といわれているものにも、少なからず効果があるものと、信じています。
 もし、私に脳波の測定ができ「マグネシウム」と「脳過敏症候群」の関係にかかわる実験ができるのであれば、直ぐに検証していると思います。

 もし、関係ありという結果がえられた時の、薬メーカーや学会の対応は・・?
 「マグネシウム」は薬メーカーの首を絞めてしまうことだけは確かなのですが。


 以上のように述べておられます.

 


マグネシウムは、神経系の興奮を自然と鎮めてくれるのです。


 1995年に行われた研究では、マグネシウム不足が脳に強度の興奮をもたらし、逆にマグネシウムが興奮を落ち着かせることがわかっています。
 13人の女性が初めの3ヶ月、1日に115ミリグラムのマグネシウム(一日の推奨量の30%にしかならない量)を摂取しました。
 その結果、脳波検査では強度の興奮性があることがわかり、その後の3ヶ月は、1日に315ミリグラムを摂りました(推奨量の360ミリグラムに近い数値)。そうしたところ、これだけの量の変化でもたった6週間後には脳波検査において、脳機能に大きな改善がみられ、興奮性が低下を見せたのです。

 


 「片頭痛とてんかん」に関しては、以下の書籍で詳しく記載されています。


    天才の病態生理―片頭痛・てんかん・天才
         古川 哲雄


 神経内科医の立場から「病める人間」としての天才の生理に迫る!
 
◆ 天才には「病的」な人が少なくない。本書は片頭痛・てんかんなど「天才の病」を分析し,天才のインスピレーションや性格・行動がこれらの病の一症状であり,その基礎には「脳の興奮性の亢進」があることを示す。
 
◆ 「病める貝殻にのみ真珠は育つ」 ──ゴーリキィ

 


 専門家の間では以下のように述べられています。


てんかん発作と片頭痛の共通点と相違点: 臨床神経 ... - J-Stage
(Adobe PDF)

   https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/46/1/46_25/_pdf/-char/ja


 片頭痛とてんかんに多い共通点~あなたは「共存・独立・並存」どのタイプ?
   https://www.excite.co.jp/news/article/HealthPress_201711_post_3285/


 神経疾患の中で、てんかんの人の有病率(病気を持っている人の割合い)は、約1%であり、100人のクラスだと1人はてんかんを持っているいということになります。ちなみに片頭痛は、もっと多数の方が罹患しており、約6%とされています。

 この「片頭痛とてんかん」は「神経機能性疾患」と呼ばれ、脳の病気では、良い時(病気のない時)と発作の時(病気が起こっている時)があるという点など、両方の病気は共通している部分が多い病気とされています。そのような共通している2つの病気について、お話ししたいと思います。


片頭痛と合併しやすい特発性てんかん


 そもそも片頭痛とは、軽度から激しい頭痛、体の知覚の変化、吐き気といった症状によって特徴付けられる頭痛です。生理学的には、片頭痛は男性よりも女性に多い神経学的疾患で、セロトニンや神経伝達物質であるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドが関連しているとされています。


 一方、てんかんの原因も神経細胞の異常な興奮によって起こるとされています。簡単にお話すれば、神経細胞の電気的ショートが起こって、てんかんという病気になるといると考えられます。


 WHO(世界保健機関)では「てんかんとは、種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし、それにさまざまな臨床症状及び検査所見がともなう。」と定義されています。


 この中で脳梗塞、脳腫瘍などの病気がないような、原因不明のてんかんを「特発性てんかん」と呼びます。このタイプが片頭痛と合併しやすいと考えられます。


治療薬でも同じ薬剤を使用することが多い片頭痛とてんかん


 国際頭痛分類では、「1.4.4 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作 」に記載があり、「痙攣は頭痛の発作中または頭痛の発作後におこる。頭痛とてんかんは典型的な発作性脳疾患である。てんかん発作後には片頭痛様の頭痛が高頻度にみられるが、片頭痛発作中または片頭痛発作後に痙攣発作がおこることもある。


 このような現象は、時に片頭痛てんかん(Migralepsy)とも呼ばれる、稀な事象である。」という表現で記載されています。


 このことからも、両者に共通点の多い病気がわかります。ちなみにMigralepsyという言葉は、片頭痛(Migraine)+てんかん(Epilepsy)をあわせた造語です。日本語でも2つの言葉を合わせて、新しい造語を作ることはよくあります。いままで知られている共通点を示しました。


 次に、同じ患者さんが「片頭痛とてんかん」の両方の疾患を持っていることもよくあることです。片頭痛とてんかんが共存するタイプ、独立して存在するタイプ、併存するタイプなど、小児、青年、成人、老年期などにさまざまに知られています。


 このように、一人の患者さんで、片頭痛とてんかんの両方の疾患を起こすケースが少なくないことが知られています。ただし、一般的な片頭痛の診断においては、脳波の記載はありませんし、脳波異常を来すこともないとされています。
  

 最後に、治療について説明します。片頭痛には、トリプタンなど発作時の痛い時だけに使用する急性期治療と、頭痛発作を予防するために継続して毎日内服する慢性期の治療があります。


 同様にてんかんにも発作を予防するために毎日内服する予防薬(抗てんかん薬)があります。

  片頭痛の予防薬では、抗てんかん薬を使用ことが多いという特徴もあります。このように、片頭痛とてんかんには治療薬においても同じ薬剤を使用することが多いという共通点があります。

 今回は、「片頭痛とてんかん」における共通点について、着目してお話ししました。今後さらなる研究の進展で、「片頭痛とてんかん」における共通の機序や、原因の解明されることを期待したいと思います。

 片頭痛の予防薬である抗てんかん薬の一部は保険適応でない薬剤もあります。片頭痛の予防的治療には、主治医の先生や専門医に受診した上で、ご相談ください。


 さらに、別の研究者は以下のように・・・


頭痛とてんかん

 
 てんかんと片頭痛は,最も一般的な神経障害のひとつですが,てんかんと片頭痛の関連は広く知られています.片頭痛とてんかんは,両者とも発作を伴う慢性機能性疾患です。
 さらに,頭痛はてんかん発作の予兆または前駆症状である場合があります.また,片頭痛とてんかんは共存します.そして,ときによく似た臨床像を呈したり,病態生理学的機序を共有します.さらに,片頭痛とてんかん発作が同時に生じる場合があり,これはmigralepsyと称されます.


 てんかん性頭痛は,厳密には後述するてんかん発作としての頭痛(てんかん性片頭痛)のことを指しますが,実際の臨床ではもう少し広い意味で使用されます.
 片頭痛の罹患率は世界的に成人のおよそ12%であり,わが国でも8.4%です).てんかんの世界平均生涯の罹患率は,0.15~5.7%3)とされ,わが国でもおおむね1.5%とされています.発展途上国ではさらに多いとされます.
 13の研究をレビューした結果,てんかんと片頭痛の双方向性共存が証明されています. さらにOttmanとLiptonは,片頭痛がてんかん患者対てんかん以外の患者で2.4倍であることを報告しています.その双方向性関連(すなわち,てんかんは片頭痛のリスクを増す.そして,片頭痛はてんかんのリスクを増す)のため,両者は生物学的素因を共有すると想定されます.


1 臨床症状


 てんかん,または片頭痛は,どちらかが先行して出現することも,同時に生じることもあります.そして,両者に共通のいくつかの臨床的側面があります.
 前述しましたが,第一に,両者は発作を伴う機能的慢性疾患です.電気生理学的には,発作間欠期においてもてんかん性の脳波(electroencephalogram;EEG)異常がみられることによって,片頭痛では眼輪筋反射(blink reflex)で抑制欠如を示すことによって,機能的発作の病態生理学的な背景が論じられています.また,両者とも,しばしば前駆症状あるいは前兆のあとに発作自体が生ずる特徴をもっています.
 さらに,臨床的に前兆の存在,光過敏,音過敏や臭い過敏および,身体活動による悪化は,片頭痛のみの患者よりてんかんも有する患者でより頻度が高いと報告されています.これらの報告は,てんかんと片頭痛が共通の病態機序に立脚することをさらに明確にさせます.


 てんかん性頭痛という語は曖昧な面があり,てんかん発作としての頭痛と,てんかんに付随する頭痛(てんかん発作後の頭痛,片頭痛に誘発されるてんかん)とは区別して考えるべきですが,明確に区別できないこともあります.国際頭痛分類第2版(International Classification of Headache Disorders,2nd edition;ICHD-Ⅱ)13)では,片頭痛に伴うてんかんを,てんかんに関連する頭痛(peri-ictal headaches)として,次の3種類の病態が記載されています.


 ①頭痛がてんかん発作そのものであるもの(ICHD-Ⅱ 7.6.1:てんかん性片頭痛)

 ②てんかん発作後に頭痛が起きるもの(ICHD-Ⅱ7.6.2:てんかん発作後頭痛)

 ③片頭痛の経過中にてんかん発作が起きるもの(ICHD-Ⅱ 1.5.5:片頭痛により誘発されるけいれん

 


実際の患者さんでは・・

 

抗てんかん薬と片頭痛


 発作を抑える「抗てんかん薬」には様々な種類があります。私が服用しているのは、最もポピュラーな薬の一つのバルプロ酸(商品名・デパケン)です。
 ほかの薬、例えば風邪薬のように熱やせき、鼻水といった症状を改善する、病気を治すものとは異なり、脳の神経に作用して発作が起きるのを抑えてくれる薬です。てんかんという病気自体が治るわけではありません。私の場合、元々発作が少なかったことや深夜の業務がなくなり、睡眠不足になることもなくなったため、薬が効いている実感は薄いです。でも5年前の発作以降、起きていないことを考えると、効いているのかなとも思います。


 一方で、この薬のおかげで大変助かっていることがあります。それは、以前から悩まされていた片頭痛がきれいさっぱりなくなったことです。片頭痛は、成人の10人に1人が悩まされているとみられ、まさに現代人の頭痛の種となっています。


 私は高校生のころから片頭痛が表れるようになりました。症状は典型的で、頭痛が起きる前に、キラキラと光るギザギザ状の物体が目の中にちらつくようになります。これを前兆現象の「 閃輝暗点(せんきあんてん) 」といいます。この後に脂汗が出てきて、臭いや光に敏感になります。そしてドクドクと脈打つような激しい頭痛と吐き気が襲ってきます(私の場合、最初のてんかんの発作と少し似ています)。頭痛は半日程度続き、この間は、痛みと気持ち悪さで動けません。頻度は数か月から半年に1回程度で、頭痛が起きるのは、大抵、寝過ぎた時やワインなど特定の物を飲食したときでした。


 片頭痛には、トリプタンという頭痛が起きた時に、痛みを抑える効果の高い薬があることを知ってはいたのですが、ずぼらな私はてんかんの発作が起きるまで病院に行くことを怠っていました。

 このため頭痛になると家の中で布団にくるまってじっとしているか、外出先ではトイレにこもるのが常でした。

 ところが、抗てんかん薬として処方されたバルプロ酸には片頭痛の予防効果があり、私にとって福音になりました。てんかんの患者には私のように片頭痛も抱えている方は少なくないそうです。
 今はてんかんの発作と片頭痛予防としてバルプロ酸を服用し、片頭痛が起きた時用にトリプタンも処方してもらっていますが、ほとんどトリプタンを使用せずに済んでいます。このため、私にとって薬を手放したり、欠かしたりするのは考えられなくなっています。


 てんかんの患者の6割は薬で発作が抑えられ、薬が効きにくい人も手術で治すことができるといいます。患者の皆さんは希望を持ってほしいと思います。

 

 

  未だに、ネット上で幅をきかす脳過敏症候群
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12281301551.html


  デパケンとミトコンドリア
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12283371687.html