肩こりのある方が頭痛を訴えて一般の病院を受診しますと「肩こりからくる頭痛」と診断されて筋肉をやわらげる薬、筋肉の血行を良くする薬、ビタミン剤などを処方されることがあります。これは「緊張型頭痛」と診断された方に行なわれる一般的な処方です。
このような、肩こりが原因と考えられる頭痛の症状の特徴は
•ギリギリと頭を締め付けられるような痛み
•痛みの程度は激痛から軽いものまで、様々
•いつのまにか始まり、ダラダラと続く
•後頭部から首筋にかけて、頭の両側におこりやすい
•フワフワとしためまい・体のだるさを伴うこともある
このような特徴があるとされ、緊張型頭痛は片頭痛と厳然と区別すべきとされ、緊張型頭痛と肩こりは、切っても切れない間柄とされます。
しかし、頭痛診療を行っている医師たちが、肩こりと頭痛を訴える患者さんを診察しますとまず最初に疑うのが「片頭痛」です。
緊張型頭痛のケースも確かにあるのですが、わざわざお仕事を休んでまで頭痛で病院にかかるというのは「頭痛がかなりひどいから」に他なりません。緊張型頭痛ではそこまで激しい頭痛に苦しめられることは少ないからです。
そこで、こうした慢性頭痛に共通して診られる症状に「肩こり」があります。
この「肩こり」は、どのように解釈すべきなのでしょうか?
これまで「慢性頭痛 発症の要因」
http://taku1902.jp/sub647.pdf
のなかで、慢性頭痛は以下のように発症してくると述べました。
第1段階 「酸化ストレス・炎症体質」の形成
「ミトコンドリアの機能を悪化させるもの」には、以下の要因があります。
1.生活習慣の問題
睡眠不足
運動不足
食べ過ぎ・過食
早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬
2.食事内容の問題
マグネシウム不足
必須脂肪酸の摂取のアンバランス
鉄不足
3.生活環境の問題
活性酸素 野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
有害物質
このように私達の生活環境および生活習慣のなかには、ミトコンドリアの機能を悪くさせる要因に満ち溢れています。
これらの要因が、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させ、慢性頭痛発症の基盤を作ってきます。
第2段階 姿勢の悪さ→「体の歪み(ストレートネック)」形成
第3段階 ホネオスターシス(自然治癒力)の乱れ
自律神経系・・脳内セロトニン
生理活性物質・・オメガ3とオメガ6のバランス
腸内環境
この第3段階のホネオスターシス(自然治癒力)を構成する3つの柱として、自律神経系、内分泌系、免疫系があります。
自律神経系には、セロトニン神経系が、内分泌系として、生理活性物質が、免疫系には、腸内環境があり、これら3つは、すべてミトコンドリアが密接に関与しており、自然治癒力を高めるためには、ミトコンドリアの働きを良好に保つことが必須になっています。
この第2段階と第3段階で、日常的に感じる極く軽度の頭痛を発症させてくることになります。
第4段階 脳過敏・慢性化の要因が追加される
1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
2.脳内セロトニンの低下
3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続
これらが慢性頭痛を発症させることになります。すなわち、日常的に感じる極く軽度の頭痛が、次第に増強することになります。
このように、慢性頭痛を発症させる要因は共通しているということです。
緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無でしかありません。
片頭痛では、生まれつきミトコンドリアの活性低下があることから、これのない緊張型頭痛よりは、こうした要因の影響を受けやすくなっています。
このため、片頭痛では、ミトコンドリアの働きの悪さをモロに影響されることになり、頭痛の程度・頻度も比較にならない程酷くなってきます。
今回取り上げる「肩こり」という症状は、慢性頭痛発症の途中の段階にある、第2段階と第4段階に関連して起きてくるものです。
このことを理解しやすく説明するために、これまで述べてきましたことを敢えて繰り返して述べることにします。
すべての始まりは、うつむき姿勢(前屈みの姿勢)にあります
現代社会は、日常生活を送る上で、私達の生活環境および生活習慣にはミトコンドリアの機能を悪化させる要因に満ち溢れています。
ミトコンドリアの働きが悪くなれば、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。この両者によって「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況に置かれています。
私達は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢を強制される生活環境に置かれています。
特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。
こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。
ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時は大抵どちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たい物を持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎(背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びこれが頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。
人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨に掛かることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。
ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛です。
日常的に感じる極く軽度の頭痛は、姿勢の悪さに前屈みを強制される生活環境によって引き起こされ、「体の歪み(ストレートネック)」が形成される以前の段階において出現してきています。
このようにして、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛が引き起こされてきます。
このような前屈みや俯き姿勢が長期間継続すれば、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。このため、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。これが慢性頭痛、とくに片頭痛を引き起こす準備状態を形成します。
「体の歪み(ストレートネック)」が持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。
「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓ ↓
↓ 脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓ ↓
↓ 中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓ ↓
↓ 脳の過敏性、頭痛の慢性化
↓
自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
(慢性頭痛)
尾側亜核で三叉神経と頸神経が収束する
「体の歪み(ストレートネック)」のために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳の中で、三叉・頸神経複合体を形成していて、繋がっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経核にも伝わります。
このため、「体の歪み(ストレートネック)」が改善されないまま、放置されることにより、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。
これがさらに、「脳の過敏性」、「頭痛の慢性化」へと繋がっていくことになります。さらに「体の歪み(ストレートネック)」は「閃輝暗点」を引き起こす要因にもなっています。
このようにして、片頭痛を発症させることなってきます。
このような後頸部筋肉群にかかる刺激(「体の歪み(ストレートネック)」)を取り除くことが、まず肩こり・慢性頭痛を起こさないために重要になってきます。
体の歪み(ストレートネック)は、ミトコンドリア、セロトニン神経系、前屈みの姿勢の3つが関与していることを忘れてはなりません。
ここで注意すべきことは、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)いることです。傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
そして、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになり、さらに片頭痛を発症させてくることになります。
片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の首疲労」を基盤として発症してきます。これは、両方の頭痛に共通して「体の歪み(ストレートネック)」が認められるためです。「体の歪み(ストレートネック)」をなくせば、慢性頭痛は激減することになります。
こういったことから、「頸部筋肉群の首疲労」は、肩こりの原因にもなり、緊張型頭痛と片頭痛に共通してみられる症状になってきます。
問題は、片頭痛の発症要因として、こうした「体の歪み(ストレートネック)」が主要因となる場合は、日常的に前屈み・俯き姿勢を強制される作業環境に置かれたり、ムチウチのような事故の後、片頭痛が増悪してきた場合です。
しかし、現在、専門家の間では、「体の歪み(ストレートネック)」の存在意義そのものを否定するために、肩こりを即、緊張型頭痛と考えられる理由になっています。
さらに、片頭痛でみられる肩こりは三叉神経核の興奮性が引き金になる下行性のアロディニアではないかといった馬鹿げた見解を示されることになっています。
これまで、慢性頭痛で診られる「肩こり」については、以下の記事で詳細に述べてきました。
片頭痛と肩こり
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11951026423.html
慢性頭痛の周辺 その11 肩こり
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11987959434.html
緊張型頭痛と肩こり・・・どのように解釈すべきか
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11944736707.html
片頭痛と肩こり・・・どのように解釈すべきか
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11944729693.html
以上、肩こりは、慢性頭痛において共通してみられる症状であり、片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の首疲労」を基盤として発症してくるものです。
ですから、緊張型頭痛でも片頭痛でも共通してみられることになります。
その出方そのものは、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無でしかなく、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因がない、緊張型頭痛では、「体の歪み(ストレートネック)」が原因となる「肩こり」が色濃く症状の上でみられるということです。
そして、片頭痛の方がムチウチ事故に遭遇したことを契機に、片頭痛が増悪するとともに肩こりを自覚するようになるのは、こういったことが理由になっています。
繰り返しますが、現在、専門家の間では、「体の歪み(ストレートネック)」の存在意義そのものを否定するために、片頭痛における肩こりの説明をされる際に、極めて曖昧な・いい加減な説明をされることになります。
その最たるものが、片頭痛でみられる肩こりは三叉神経核の興奮性が引き金になる下行性のアロディニアである、といったことです。