「今回の学会抄録集から」を掲載して | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまで、「今回の学会抄録集から」をシリーズで掲載致しましたが、ご覧頂き皆さんはどのように思われたでしょうか?


 トリプタン製剤が日本に導入されて以来、約15年が経過しました。導入後、いろいろな問題点、例えばトリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛に陥って頭痛地獄を味わっておられる方々、そしてここまでに至らずとも片頭痛が慢性化していく方々が後を絶ちません。
 しかし、このような事態にはまったく我関せずで、歯牙にも掛けないのが現在の学会を主導される方々です。そして、未だに、トリプタン製剤が、あくまでも一般の鎮痛薬、エルゴタミン製剤と同じような一つの”治療薬”(鎮痛薬と表現した方がよいかもしれません)に過ぎないものでありながら、あたかも片頭痛治療上の”救世主”とも考えておられるのか、”特効薬”と考えることから、トリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛・片頭痛の慢性化の問題には一切、反省のコメントすらありません。


 私のような昔人間の感じることですが、トリプタン製剤のない時代に片頭痛を診療していた頃には、エルゴタミン製剤しかありませんでした。当時は、前兆のある方々には、うまく制吐剤を併用しながら抜群の効果を発揮していました。しかし、前兆のない方々は服用のタイミングが極めて困難のため、吐き気・嘔吐を繰り返すため医師がいくらエルゴタミン製剤を処方しても患者さんの方が服用しないのが常であり、エルゴタミン製剤による薬剤乱用頭痛に陥る方々は確かにおられはしましたが、現在のようにトリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛のような極めて厄介な状況に至る方は少なく、片頭痛そのものの慢性化に至る方々も少なかったように思います。
 それは、このような前兆のない方々に対して、エルゴタミンをいつ服用したらよいかが分からないことから、私達は当時から、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、姿勢を正しくし、リラックスすること」こういった生活指導を口を酸っぱくして徹底させることによって大半の方々は発作は抑制されていました。
 当時は、ミトコンドリア・セロトニン・体の歪み(ストレートネック)といった観点からでなく、あくまでも先達の教えをただひたすらに守って指導を行っていたに過ぎませんが、これで何ら問題なく、片頭痛の慢性化した方々を診ることは殆どありませんでした。
 このようにしてみますと、このように片頭痛の方々が困難な状況に至るようになった原因は、トリプタン製剤を導入したことと、決して無関係ではないと思わざるを得ません。
 しかし、学会を主導される方々は、決してこのようには考えておられないようです。
 この点を私達自身が、きちんと認識しなくてはなりません。なぜ、このように考えないのかを冷静に見つめ直すことが重要になってきます。


 今回のシリーズで明らかに致しましたが、現在の日本頭痛学会では、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考え、片頭痛の大半が”多因子遺伝”であると考えることはありません。
 そして、「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とも考えません。
 学会を主導される方々は、現在の学会を結成された段階から国際頭痛学会が作成された「国際頭痛分類第3β版」を頭痛診療および研究の絶対的な基準とされ、さらにこれを基に「慢性頭痛診療ガイドライン」を作成されました。「国際頭痛分類第3β版」は元々欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成されたことから、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬として片頭痛治療の第一選択薬とされ、片頭痛の病態(メカニズム)をすべてトリプタン製剤の作用機序の面から説明・解説されてきました。
 これ以外のものは、問答無用で排除され、聞く耳を持たないということです。
 ここにすべては集約されているはずで、この点を忘れてはなりません。
 結局、学会を主導される方々は、トリプタン製薬メーカーの論理で片頭痛医療を考えているということです。製薬メーカーの目的とすることは、片頭痛を永久的にこの世に存続させることです。このため、片頭痛が”多因子遺伝”による生活習慣病であるといった考え方を決して容認することはありません。もし、生活習慣病であるとすれば、予防可能で、この世から片頭痛が撲滅され、この世から姿を消してしまうことになるからです。
 片頭痛が”遺伝的疾患によるものなのか”、”多因子遺伝”によるものなのかという論争にはこのような根本的な利害関係が存在することを忘れてはなりません。このため、学会では、このような本質的な論議は禁句であり、一切議論されることはありません。


 片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛であると考えさえすれば、慢性頭痛とくに片頭痛の病態はすべて理解できるはずです。この点は先日明らかにしました。
 そして、トリプタン製剤が導入される2000年までに、下村登規夫先生、竹島多賀夫先生、古和久典先生、松井孝嘉先生ら日本の頭痛研究者の偉大な業績が揃っていました。
 このような業績を残された方々は国立系の先生方です。これに対して、現在学会を主導される方々は、慶応系の先生方です。こうした慶応系と国立系の先生方の対立の構図は、「慢性頭痛診療のガイドライン」作成以降延々と学会の場で継続されています。こうしたことから、これまで「下村登規夫先生、竹島多賀夫先生、古和久典先生、松井孝嘉先生ら日本の頭痛研究者の偉大な業績」を全く取り入れることなく、欧米の研究業績にしか関心がなく、学会においても、このような国立系の先生方の発表をまったく無視する姿勢が貫かれています。さらに、片頭痛医療界の重鎮とされる先生方の意見・忠告には一切、耳を傾けることはありません。これが学会のこれまでのあり方と理解しなくてはなりません。


 これとは別に、「ミトコンドリアとは何か」、「セロトニン神経系とは何か」、「体の歪み(ストレートネック)とは何か」、「多因子遺伝とは何か」、といった基本的なことを「頭痛学」とはまったく離れて考えるようなことは一切されることはありません。
 また、ミトコンドリアの機能との関連から現代栄養学を考えることもありません。
 すべて「国際頭痛分類 第3版β版」といった限られた枠内でしか考えていません。
 このような限られた観点でしか片頭痛を考えていないことから、最近では分子化学療法研究所の後藤日出夫先生には、分子化学の立場から片頭痛の病態を説明されるようになってきました。ここに私達は注目しなくてはなりません。
 このように概観してみますと、片頭痛とは、これまでの日本の先達の研究業績を踏まえて、”理論的に”考えさえすれば、医師でなくても専門家でなくても、片頭痛の病態は自然と解き明かされることに至ったように思われます。まさにお粗末の一言です。
 現在の学会を主導される方々は、こうした日本の業績には一切眼を向けることなく、欧米の学者の研究業績しか頭になく、それも全て断片的にしか捉えず、自分の頭で考えることは全くないようです。その証拠に、「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の絶対的な基準とされ、これが、すべての拠り所で、自分の頭では一切考えようとはされません。このような「国際頭痛分類 第3版β版」の枠内でしか考えることが出来ないようです。他の医学領域のことはまったく眼中になく、いわば離れ小島にでもいるようです。

 永年、頭痛研究をされている割には、「慢性頭痛とはなんぞや」といった命題を吐露される先生方が一切輩出されることはありません。
 「脳のなかに異常のない慢性頭痛とは、なんぞや」といった禅問答にも等しいことを一切持たずに、まさに海図・羅針盤もなく、頭痛研究を行っていることが不思議でなりません。
 これまでの、学会を主導されておられた方々の考え方そのものは、いかに欧米の学者の受け売りでしかなかったかが如実に示されているようです。


 こういったことから、いつまでも「頭痛学」の方向性が定まることはないようです。
 今後とも、「国際頭痛分類 第3版β版」の改訂の度に、この日本語訳に追われ、学会の場では、この改訂の意味・意義を検討するだけのことであり、本質的な論議は一切されることはありません。これが、現在の学会が結成されて以来、延々と継続しています。
 そして、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤という”救世主”が現れたことだから、この恩恵をすべての片頭痛患者さんが受けましょうということのようです。
 このために、今後とも専門医養成を目的としてHMSJを定期的に開催されます。このようにして、専門医には片頭痛患者さんにトリプタン製剤を処方させます。
 このため、「片頭痛そのものを治しましょう」という考えには到底至らないし、トリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛・片頭痛の慢性化の問題などは論外ということです。
 学会が、このようにどうして考えているのかは、私達が冷静に判断すべきです。
 ということは、このような学会の考え方を度外視して、自分のことは自分で考えて対処しなくてはならないということです。


 片頭痛の大半は、遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の一種です。
 すなわち、片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、”環境因子”として、生活習慣(とくに食生活)が原因で、エネルギーを生み出す際に生する活性酸素によって自分のミトコンドリアを傷つけることによって「さらに、ミトコンドリアの働きを悪く」させて「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患と考えれば、片頭痛の遺伝様式は”多因子遺伝”に他ならないということです。

 このように片頭痛を考え、片頭痛に対処していくべきです。トリプタン製剤にしても予防薬にしてもあくまで補助的な手段であり、これがすべてではありません。
 大切なことは、片頭痛治療の根幹は「生活習慣の改善」であり、片頭痛は予防すべき頭痛です。片頭痛という辛い痛みだけをトリプタン製剤でお茶を濁しておれば、その根底にある「酸化ストレス・炎症体質」は増悪してきます。このように考えて対処しませんと、気がついてみれば”蔵が一軒建つ”程のお金を、トリプタン製剤のためにつぎ込むことに至り、挙げ句の果ては、トリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛・片頭痛の慢性化に行き着いてしまうことになります。このようなことは、決してあってはならないことです。


 結局、こうして考えてみれば、専門家と言えども、単に慢性頭痛に対して、痛みだけをとればこれで”安泰”と考えているだけのことであり、片頭痛の場合も全く同様です。トリプタン製剤と予防薬で無理矢理頭痛を抑え込んでいるだけのことです。
 市販の鎮痛薬の弊害も説くこともなく野放しにすることによって、慢性頭痛を複雑なものとすることによって、「国際頭痛分類 第3版β版」を基に”錯綜とした”頭痛の診断を下し、この診断から「慢性頭痛診療のガイドライン」に従って、薬剤を処方することに、「専門家としての存在意義」を見出しておられるといった、単純なもののようでしかないようです。これが、専門家の本質と考えなくてはならないようです。そして、このような本質はどこに起因するのかは、私達が考えなくてはならないようです。


 こういったことから、片頭痛が生活習慣病であるとは、一切考えることはありません。
 しかし、このように「片頭痛が生活習慣病である」と考えれば、すべての謎は氷塊します。そして、何をどうすべきかは自ずと明らかになってきます。このように考えて、対処すれば、発症間もなければ、1年以内で発作そのものが起きなくなります。
 ただ、このような対処が遅れれば遅れる程、改善されるまでに時間と根気を必要とされてくるということです。下手をすれば頭痛地獄に陥ることにもなりかねません。


 本年度の学会も従来の学会と全く異なるものではありません。ということは、慢性頭痛でお悩みの方々は、自分で改善策を模索していかなければならない、という悲惨な状況は依然として改善されることはないようです。