片頭痛とは何か・・今回の学会抄録集から | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまで、このブログで以下のような「山積した課題」を挙げてきました。


 1.「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による」頭痛なのか。
 2.「片頭痛が”多因子遺伝”である」かどうか。
 3.頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」のエビデンスは?。
 4.頭痛診療に「問診表」を用いることの是非。


 このような基本的な事項がまったく今回も学会では議論の俎上に上がることはありませんでした。果たして、このようなことでよいのでしょうか。
 先日は、頭痛診断に「国際頭痛分類第3版 β版」を用いることの是非を述べ、さらに「片頭痛と頚椎捻挫の合併」といった発表が行われることに異論を呈したばかりです。
 さらに、「慢性頭痛診療ガイドライン」の問題点を指摘致しました。

 こうした問題点を突き詰めて考えてみれば、”「頭痛」とは何ぞや”ということです。
 とくに、脳のなかに異常のないとされる「慢性頭痛」とは何ぞやという、命題が解決されていないことに問題があると考えなくてはなりません。
 専門家は、このような「慢性頭痛」とは何ぞやという、命題を一切これまで論じられることは、過去の頭痛研究の歴史を振り返ってみても古今東西一切ありません。
 今回の学会抄録集でも、「国際頭痛分類第3版 β版」に従って、「慢性頭痛」個々の定義に厳格に従って、それぞれを個別に研究を進める必要があるとだけ述べられます。こうした総論が欠如します。


 私は、当ブログにおいて、これまでも再三に渡って「慢性頭痛」は「健康的な生活」が送れていないことに根本的な原因があり、”慢性頭痛”とは、「不健康な生活を送っている」という生体の警告(危険)の信号”サイン”であると述べて参りました。


 そして、慢性頭痛(緊張型頭痛、片頭痛)を引き起こす要因として


1.「ホメオスターシスの乱れ」
2.「体の歪み(ストレートネック)」
3.ミトコンドリアと脳内セロトニン

 この3つの要因を挙げ、これらは全て生活習慣とくに食生活の問題によって影響を受けていると述べて参りました。

 そして、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による”機能性疾患”であると考えれば、全てが関連づけて解き明かされるはずです。
 片頭痛の場合、遺伝素因として”ミトコンドリアの活性低下が存在する”ことから、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。これに生活習慣および食生活の問題から「脳内セロトニンの低下」がもたらされることになります。
 遺伝素因としての「ミトコンドリアの活性低下」はミトコンドリアDNAによって先祖代々、”多因子遺伝”の遺伝形式で受け継がれ、これに環境因子が加わって、初めて片頭痛を発症させることになります。
 片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合より以上に、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在することから、「ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因」の影響を、とくに受けやすいことになります。
 ミトコンドリアの働きは、生活習慣および食生活の問題、外部の生活環境によって悪化してきます。
 そして、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」が存在すれば、私達が、日常生活を送る場面で、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられていることから、当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」を形成してくることになります。
 この日常的な「前屈みの姿勢」は緊張型頭痛の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって緊張型頭痛が増強してくることになります。
 これが、慢性頭痛の起点となり、片頭痛の基本骨格となっています。


緊張型頭痛、片頭痛は、一連の連続したもの

片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine


     片頭痛
   big(true)migraine
  連続体
緊張型頭痛
          緊張型頭痛
small migraine       (脳内セロトニンの関与)


 片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。
 自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。
 ”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
 「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの問題」、「脳内セロトニンの低下」、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の慢性化の要因が加わることによって、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。

 このように片頭痛は”未病”の段階にあり、緊張型頭痛を起点として、さまざまな生活習慣の問題点が重なることによって、「いろいろな段階の片頭痛」へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになります(このことは、片頭痛の「国際頭痛分類第3版 β版」上の細分類にすべて示されています。この詳細は前回明らかに致しました。)ので、常に自らの生活習慣に気を配り、何か問題があれば、その都度改善に努める必要があります。このように進行性疾患です。このように片頭痛は生活習慣病、そのものということです。


 以上のように考えることによって「慢性頭痛とは何か」、といった命題は解き明かされることになるはずです。

 このように、慢性頭痛を理解し、このなかで片頭痛がどのように発症してくるのかが理解されることになります。そうなれば、慢性頭痛の起点ともなる緊張型頭痛の段階において市販の鎮痛薬を服用することは、今後、どのようになるかを理解しておく必要があります。
 市販の鎮痛薬を服用し頭痛という痛みだけを抑制していますと、根底にある病態は、おかまいなしに進行してきます。そして、最終的には、ミトコンドリアの機能を悪化させ、脳内セロトニンを低下させ、薬剤乱用頭痛を引き起こし、ひいては片頭痛への移行を加速させることになってきます。
 (このことは、片頭痛へと移行した段階でも言えることで、発作時にトリプタン製剤で辛い頭痛だけを抑制していますと、根底にある病態”酸化ストレス・炎症体質”は益々増悪してくることになります。)
 しかし、このようなことは一切、専門家は啓蒙されることはありません。
 片頭痛がミトコンドリアの機能障害にある頭痛であることを理論的に考えさえすれば、分かりそうなはずでありながら、決して専門家はこのようには考えることはありません。
 なぜなのでしょうか? この点を理解しておく必要があります。そうしませんと、「後々、どうにもならなくなってくる」ことになってきます。


専門家は・・・


 以上のように「市販の鎮痛薬」の弊害を啓蒙することもありません。

 専門家は、なぜだか片頭痛へと移行させないようとは、私達に一切勧めることはありません。あたかも、片頭痛への移行を黙認し、片頭痛を熟成させ、慢性頭痛そのものを複雑怪奇なものとさせ、このような状況を作った結果、「国際頭痛分類第3版 β版」を専門家に使わせて、頭痛診断を行い、この診断に基づいて「慢性頭痛診療のガイドライン」に従って、これに見合う「薬物療法」を行っています。そして、このように慢性頭痛そのものを複雑怪奇なものとさせ、「頭痛ダイアリー」を記入させることによって「謎解き」をされます。ここに”専門家としての存在意義・価値”があるとされます。
 そして、片頭痛予防などは論外とまでされています。


 今回の学会抄録集でも、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これらを3種の”神器”とされ、これによって、より科学的で的確な頭痛診療が可能となったとされます。
 そして、専門家は、日本のエキスパートによる頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると豪語されております。しかし、こうしたトップレベルとされる頭痛診療の真髄の恩恵を果たして、私達慢性頭痛でお悩みの方々は受けているといえるのでしょうか?
 私には、甚だ疑問に思っております。現実に、頭痛外来を担当される先生方を受診されているにも関わらず、”極めて困難な状況に至る”方々が後を絶たないからです。
 この1つの原因が、「慢性頭痛診療ガイドライン」にあります。このような不適切なガイドラインを指針として、頭痛診療が現実に行われ、これが「国際的にもトップクラスにある」と言えるかどうかという疑問です。患者さんすべてが利用できるものでなくてはならないはずです。この点がまったく理解されず、ただ自画自賛しているだけにすぎません。


 そして、先程の専門家が頭痛診療の地図とされる「国際頭痛分類第3β版」は「国際頭痛学会」が作成されたものとして、まさに”葵の御紋”のごとく、これが眼に入らぬかと水戸黄門の印籠のように振りかざされ、”頭が高い”と平身低頭させます。「国際頭痛分類 第3版β版」は基を正せば、欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものであり、さらにこれを基に作成されたのが「慢性頭痛診療ガイドライン」です。このため、片頭痛治療のトップにトリプタン製剤が片頭痛の特効薬として掲げられ、これに付随して薬効の極めて不確かな予防薬が据えられています。このように「薬物療法がすべて」です。本来、片頭痛治療の真っ先に記載されるべき「生活習慣の改善点」は全く無視・省略されます。
 この理由は、このような「生活習慣の改善点」を記載し、これを遵守されば、片頭痛は改善されてしまうことを意味します。しかし、トリプタン製薬メーカーの真の目的とすることは、片頭痛を永久的にこの世に存続させることです。こうしたことから、片頭痛を根治させるような「生活習慣の改善点」は記載してはならないことになります。


 このようなことから、専門家は、片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面からのみ説明され、片頭痛がミトコンドリアの働きの悪さからくる機能性頭痛といった考え方は徹底して、これまで排除してきました。その結果が、「極めて困難な状況に至る方々が後を絶たない」ということになってしまった、ということです。
 本来、トリプタン製剤は、片頭痛発作時にみられる「脳内セロトニンの低下」を補填する意味しかありません。片頭痛発作時にみられる「脳内セロトニンの低下」は、「ミトコンドリアの働きの悪さ」からもたらされた結果にすぎません。いくら片頭痛発作時にトリプタン製剤を服用して、頭痛そのものを緩和しても、その根底に存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」からもたらされた「酸化ストレス・炎症体質」は次第に増悪することになります。その結果が、「極めて困難な状況に至る方々が後を絶たない」ということになってしまった、ということです。こういったことが専門家には理解されていません。


 片頭痛の場合だけではなく、現在の研究では、活性酸素は”全疾患の90%以上に何らかの形で係わっている”と言われています。片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。まさに、片頭痛では、この活性酸素がダイレクトに関係しています。
 糖尿病学会は、(片頭痛と同じく)糖尿病を”多因子遺伝”と捉え、すでにその”環境因子”を想定されました。さらに、最近では、糖尿病研究は、活性酸素およびミトコンドリアの観点から病態の解明が進められています。
 このように、現在の頭痛学会は、片頭痛を”多因子遺伝”と捉えることなく、糖尿病学会と遙かに遅れをとっていると言わざるを得ません。まさに、雲泥の差というべきです。
 そして、今回の学会抄録集を通読しても、このような観点から論じられることは全くないようです。


 こうしてみれば、現在の学会とは、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これを3種の”神器”として、薬物療法がすべての「宗教団体」のようなものと考えるべきかもしれません。
 これに相対峙して、これまで、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の論理で頭痛診療を行う「宗派」が存在すると考えるべきかもしれません。
 さらに、最近では、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生を中心とする、「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である」といった考え方をされる「宗派」が出現してきました。まさに、学会とは全く相対峙する考え方、そのものです。


 このように「頭痛治療の世界」は”宗派”として捉えるべきなのかもしれません。ところで、どちらが学問的に近いのでしようか。片頭痛という頭痛は、理論的に考察されなくてはならない頭痛です。そして、どちらが、慢性頭痛でお悩みの方々にとって有益なのでしょうか? 片頭痛が治る頭痛であるといった論理で考えるべきです。
 このようにそれぞれの「宗派」にはそれぞれの理屈が存在します。これを選択するのは、慢性頭痛でお悩みの方々自身の判断に任されているという、まさに悲しむべき時代のようです。


 専門家の間では、定期的に「国際頭痛分類 第3版β版」は改訂を重ねられ、さらに細かく頭痛を”細分類”します。専門医はその改訂の都度、その解釈をどのようにするかという議論に終始され、慢性頭痛を根源的に考え、本質的な議論をされることはありません。 今回の抄録集でもこの点は示されています。患者救済などは二の次のようです。
 そして、これに伴って、「慢性頭痛診療ガイドライン」も改訂を繰り返す度に、新たな薬剤が追加されるだけのことです。次の新薬はCGRP拮抗薬のようです。このようにガイドラインも新薬を開発した製薬メーカーのためにあるようなもので、改訂の度に、これに携わった先生方はメーカーから莫大な資金提供を受け、笑いが止まりません。そして、いつまでも「生活習慣の改善」についての記載はされることなく、患者さんはどうでもいいようです。 
 毎年開催される学会では、「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である」といった考え方をする「異端者」の出現を監視することによって、従来の「姿勢」を堅持され、学会員にとっては、出席しさえすれば学問に遅れずについてゆけたと、まさに「安心剤」とされ、学会とは”お祭り騒ぎ”でしかないように見受けられます。


 これでは、いつになっても慢性頭痛とくに片頭痛の解明には程遠いということは、皆さんにも理解されるはずです。なぜ、自分の片頭痛が治らないかを・・