片頭痛とうつ病 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまで、片頭痛の共存症として,うつ病,躁病,パニック障害,不安障害などの精神科・心療内科領域の疾患が挙げられておりました。


 精神科・心療内科医は、片頭痛とうつ病の合併を考える場合、以下の点を挙げています。


(1) 頭痛を持っていた人が、たまたまうつ病などの精神疾患にかかった場合
(2) 頭痛に悩んでいるために、二次的な症状として抑うつや不安状態に陥った場合
(3) うつ病やパニック障害などの精神疾患の身体的な症状として頭痛が認められる場合
(4) セロトニンを中心とした共通の生物学的な要因を背景として、頭痛とうつ病が共存している場合


  治療上、うつ病が見落とされる可能性が高く、問題となるケースが多いのが(1)や(3)のパターンです。
(1)のパターンでは、頭痛が続いて気分がなんとなく落ち込みがちでも、「頭痛だから仕方ない」と片付けられたり、また(3)のパターンでは、頭痛が続いていても市販の頭痛薬で抑えようとします。しかし、うつ病の身体症状として頭痛が起こっている場合は、頭痛薬でよくなることはほとんどなく、うつ病自体の治療をしなければ頭痛は改善しません。実際、 頭痛は不眠や食欲低下、倦怠感と同様にうつ病で高頻度にみられる身体症状の1つです。


「朝の頭痛はうつのサイン!」


 イギリス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインの5カ国で、朝起きたときの頭痛の有無や頻度について、専門家による電話聞き取り調査が行われました。
その結果、調査対象となった約1万9千人のうち7.6%が朝の頭痛に悩んでいました(1 3人に1人の割合)。また、朝に頭痛がある人のうち30%(4人に1人)は、うつ状態でした。
 もし、あなたが今、朝起きたときの頭痛に悩んでいるようであれば、一度医療機関を受診してみましょう。
[Prevalence and Risk Factors of Morning Headaches in the General Population] Archives of Internal Medicine Vol. 164 No. 1, January 12, 2004


 では、なぜうつ病などのこころの病気によって頭痛が発症するのでしょうか?


 その理由の1つとして、人は精神的に不安定になると、通常よりも痛みに対して敏感になるということが挙げられます。そのため、これまでなら痛いと感じていなかったことに対しても、痛みを感じるようになるのです。また、うつ病によって頭痛が起こる以外に、頭痛が先行してうつを引き起こす場合でも、同様に痛みへの過敏反応は生じます。具体的に説明すると、頭痛が続き、不快な状態が続いていると、それがストレスとなり精神的に不安定になります。そのために、通常よりも痛みを強く感じ、ますます頭痛がひどくなります。さらに、頭痛をはじめとして痛みという感覚は種々の不安を起こしやすく、頭痛を訴える患者さんには、自分の病気は脳出血、脳梗塞、脳腫瘍ではないかという不安があり、その不安が頭痛を悪化させることが多いと言われています。
頭痛を主症状としていても、頭痛が引き金となりうつ病を併発し、これによって頭痛が悪化している場合や、うつ病の症状そのものとして頭痛が発症しているような場合は、抗うつ薬などによるうつ病の治療が必要になります。そのため、単なる頭痛とすませずに、頭痛に悩んでいる場合は、少しでも早く医師に相談することが大切です。
 また、片頭痛や緊張型頭痛で薬を飲んでいるのに一向に症状が改善されない場合も、背景に抑うつ状態を伴っている可能性もあるため、一度、専門医を受診することをお勧めします。


<頭痛の背景に抑うつ状態が隠れていたサラリーマンA氏の例>


 A氏は35歳の会社員。これまで大きな病気をすることはありませんでした。性格的には几帳面でまじめであり、仕事に対する責任感も強い方でした。仕事で新しいプロジェクトが始まり、チームリーダーとなったA氏は、これまで以上に仕事に打ち込みました。お昼を食べ損ねることや残業が度重なり、多少からだに負担はかかっていたものの、チームリーダーという立場から弱音をはくわけにもいかず、がんばり続けました。
 その頃から朝、目が覚めると頭が重くなったり、締め付けられるような頭痛に見舞われるようになりました。A氏は疲れがたまっているのだろうと思い、市販の鎮痛薬を飲んで痛みをやり過ごしていましたが、頭痛はだんだんひどくなり、仕事に集中できないことも増えてきました。また、頭の重みのために、からだを思うように動かせず、会社に行くのがつらく感じるようになっていきました。
このような状態が数週間も続き、このままではチームに迷惑をかけると思い、近くの病院を受診したところ、手足のしびれ感や吐き気なども見られないため、ストレスによる緊張型頭痛の疑いと診断されました。鎮痛薬を処方され、2ヶ月間服用しましたが、症状はあまり改善されませんでした。
A氏の表情はだんだん暗くなり口数も少なくなってきたことから、ただの頭痛ではないと思った担当の医師が精神面の検査を実施したところ、抑うつ傾向が認められました。そのため、抗うつ薬による「うつ状態」の治療が開始され、1週間くらいたった頃、朝、目覚めたときの頭の重さがとれたとのことです。



セロトニンとの関連から


 片頭痛は、うつ病の症状としてもよく現れます。

 うつ病の症状はさまざまで、食欲不振、不眠、気分の落ち込み、疲労感などがありますが、これらと同じくらい片頭痛という症状でも現れます。

 うつ病に伴う片頭痛の原因としては、脳内神経伝達物質セロトニンが減少することによって引き起こされると考えられています。

 うつ病に伴う片頭痛は、通常の片頭痛と比較して特徴があります。

 通常、片頭痛は突然発生し吐き気などを伴いますが、うつ病に伴う片頭痛は、朝起きた時からすでに頭痛が起きており、それが持続するという点が特徴的です。

 うつ病に伴う片頭痛の場合、うつ病の治療を行うことが片頭痛の治療にもつながります。 なお、片頭痛によりさらに気分が落ち込むようだと、さらに片頭痛がひどくなるといった悪循環に陥りますので、早期のうつ病治療が重要になります。


 現在、治療中で、経過が思わしくない場合


 以上のように、精神科・心療内科医は考えて、片頭痛に合併する「うつ病」を治療されて来られました。ところが、このようにして、抗うつ薬を長年服用するにも関わらず、一向に「片頭痛もうつ病」も軽快されない方々が多く見受けられます。
 このような方々の中に、東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、「頚性神経筋症候群」の病態として「頚性新型うつ」が存在することを明らかにし、これらは「頚部の筋肉疲労」をとる治療法で、片頭痛もうつ病も完治すると述べています。

 もし、皆さんの中で、片頭痛にうつ病を合併されておられる方で、精神科・心療内科で抗うつ薬の投与を長年受けているにも関わらず、一向に良くならない方は、一度は、この「頚性新型うつ」の可能性を疑ってみて下さい。

 これを疑う方法は極めて簡単にできます。以下の問診表の中で何項目、あなたは該当するでしょうか? まず、試してみて下さい。


問診表(松井孝嘉による)


 以下の項目について、あれば番号の箇所に丸印をつけて下さい。


 1.頭が痛い、重い
 2.首が痛い、首が張る
 3.肩がこる
 4.風邪をひきやすい、いつも風邪気味
 5.ふらっとする。めまいがする。
 6.歩いたり、立っているとき、なんとなく不安定
 7.吐き気がする
 8.夜、寝つきが悪い。目覚めることが多い
 9.血圧が不安定である。
10.暖かいところに長時間いられない
11.汗が出やすい
12.静かにしているのに心臓がどきどきする
13.目が見えにくい。像がぼやける
14.目が疲れやすい。または痛い
15.まぶしい。または目を開けていられない
16.目が乾燥する。または涙が出すぎる
17.口内が乾く、つばが出ない。または、つばが多い
18.微熱が出る(37度台、原因不明)
19.胃腸症状(下痢、便秘、嘔気、食思不振、腹痛)
20.すぐに横になりたい
21.疲れやすい
22.何もする気が起きない。意欲がない
23.天気の悪い日か、その前日に調子が悪い
24.気分が落ち込む。気が滅入る。
25.集中力が低下して、ひとつのことに集中できない
26.わけもなく不安だ
27.イライラして焦燥感がある
28.根気がなく。仕事や勉強を続けられない
29.頭がのぼせる。手足が冷たい、しびれる
30.胸部が痛い。胸部圧迫感がある。胸がしびれる 


 この、質問項目のうち5項目以上、あてはまるものがあれば、まず「頚性新型うつ」が疑われます。この場合は、頸椎レントゲン検査を受け、「ストレートネック」の有無を確認してもらって下さい。もし、ストレートネックがあれば、現在の主治医である「頭痛専門医」に相談して下さい。しかし、必ずしも、このような考えをされる先生とは限りません。このような場合は、自分で治すしかありません。

 この場合、東京在住の方は、東京脳神経センターを、四国に在住の方は香川県の松井病院を受診して下さい。このような治療をされる医療機関はごく限られております。
 地域的に無理であれば、自分で「ストレートネック」を治すしかありません。