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1人で吉祥寺に来た。

特に目的があったわけではない。

東京に来て、まだ一度も来た事が無かったから、ちょっと行ってみようと思い立ったのだ。



吉祥寺は人が多かった。
夫婦とか、ファミリー、カップルが沢山いた。

1人でうろついてる人なんて、ほとんどいなかった。




ふと、思い出した。




そういえば、お田鶴(たづ)さん(仮名)と、何年も前にここ(吉祥寺)に来た事があったな、と。




※お田鶴さんについては、2008年8月15日からの記事『ハグしてほしい』などを参照のこと。




社会人一年目のGW(ゴールデン・ウィーク)に、僕はお田鶴さんを訪ねて、東京に来たことを思い出したのだ。

その時、東京の色んな所に連れていってもらった。



渋谷。
新宿。
下北沢。
浅草。
お台場。
吉祥寺。



吉祥寺を歩いていたら、その時のことが少しずつ、少しずつ思い出されてきた。


美味しいジェラート屋で、2人でジェラートを食べたこと。
僕の好きな楳図かずお先生の赤白ボーダー屋敷を探したこと。
「井の頭公園のスワンに乗ったカップルは別れるんだって」って、お田鶴さんが言ったこと。
「じゃあ乗らないでおこう」と、付き合ってもないのに言ってしまったこと。
言った瞬間、「はっ」として、恥ずかしくなってしまったこと。
井の頭公園へ行く途中の洋服屋で、シースルーでパフスリーブのブラウスを見つけて、「自分はこうゆう服を女性に着てもらいたい」と力説して、引かれてしまったこと。
美味しい中華ソバ屋に連れていってもらったこと。
商店街と商店街が交わる交差点で、人の多さに戸惑っていたら、お田鶴さんが僕の手を引いてくれたこと。
その時、お田鶴さんが僕の腕を脇に挟む格好になったため、まるで腕を組んでるような感じになって、ドキドキしたこと。
コーヒー屋で、話をしたこと。


悲しいような、切ないような。
それでいて、なんだかとても滑稽な。
過ぎ去りし思い出。



何故だろう。
思い出していくにつれ、「あれは夢だったんじゃないか」って、思えてきた。
確かに現実のことなんだけど、何故だかそう思えてきた。


自分でも馬鹿馬鹿しい。


でも、どうしても、そうしなきゃいけないような気がして、僕はお田鶴さんと行った場所へ、もう一回行ってみることにした。

曖昧な記憶を頼りに、お田鶴さんと行った場所を探してみた。



井の頭公園は簡単に見つかった。
でも、行ったお店は見つけられなかった。
ジェラート屋さんも、洋服屋さんも、中華ソバ屋さんも。楳図先生の家も。



本当に夢だったんじゃないか?



そんな錯覚に襲われてしまう。
確かに行ったのに。



最後に、2人で行ったコーヒー屋さんだけ、偶然見つけることができた。

その店に入って、今この日記を書いている。





よかった。
夢じゃなかった。





そう思った。