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こんにちわ。

突起物があると、つまみたくなるようすこです。





あの子との出会いは、3月27日の、会社の新入社員研修のことでした。



新入社員研修は、僕の会社と、グループ会社一社と一緒に行われた。

なぜグループ会社と一緒にやったかというと、その会社は最近設立されたばかりで、まだ研修のノウハウが無いという理由で。



そのグループ会社の本社は神戸にあって、東京にも支社がある。だからそこの新人は神戸と東京の子たちだということは聞かされていた。





初めて顔合わせをして、自己紹介をした時、初めて彼女を見た時、僕は「アナウンサーみたいな女だな」と思った。

彼女はとてもハキハキしてて、学級委員長みたいな感じで、綺麗な標準語を喋っていた。パキパキとしていて、とてもしっかりしてるお姉さんに見えた。





名前を「お田鶴(たず)さん(仮名)」というその子は、東京生まれの東京育ち、青山学院大卒ということで、正真正銘のお嬢様に見えた。

その時はまだ、別にこれといった特別な気持ちは彼女に対して持ち合わせませんでした。

ただ、研修で社内にある印刷機器の見学をした時、真っサラな紙に4色のインキが混ざりあって色とりどりの写真や絵が印刷されていく様とか、印刷物が製本されていく様子を、他の女の子達は興味無さげに通り過ぎていく中、一人だけ目をキラキラ輝かせながら、機械の様子を目を凝らしながら見学しているお田鶴さんの横顔を見た時、僕は「こういう女の子もいるんだ」と思った。







あれは社外研修でのことでした。

社外研修というのは、ある人材育成関連企業が開いているもので、色々な業種の会社の新人達がひしめきあって、泊まり込みで名刺の渡し方から電話応対の仕方まで教わる。要は自社でわざわざ教えるのが面倒なことを代わりに請け負ってまとめて指導してくれるというもの。



その社外研修で、僕はお田鶴さんと同じ班になった。班は7人くらいで構成されていて、僕と彼女以外は違う会社の新人達だった。

そして、その班でいきなりグループワークをやることになった。



はじめに、班内で議長、書記、発表者を決めないといけなかった。発表者というのは、話し合ったことを最後に研修生全員の前で発表する人のこと。



誰もやらなけりゃ僕が議長をしようかなと思っていた。

そうしたら、お田鶴さんが「あたしが議長をやるよ!」と立候補した。そして彼女は、「発表をお願いしていいかな」と、僕を発表者にした。





「きっと責任感が強くて、真面目で、議長とかそういうのに慣れてるんだろうな」と思った。





いざ会議が始まると、周りのメンバーが全然協力的じゃなくて、話し合いはかなり難航した。

僕も発表しなければいけない立場だから、話し合いの内容を一番把握してないといけなくて、なんとか議長をフォローしようとしたけど、うまくいかなかった。

会議の進行はうまくいかず、それでも一生懸命に議長を務めてる彼女の姿に、僕は心を打たれた。





「真面目で一生懸命でしっかりしてる女の子だ」と思った。







会議も発表もなんとか上手く終了し、残りの研修は社会人としてのマナーなどの講義がずっと続いた。



ある時、講師がお田鶴さんを指名して、ホワイトボードに問題の答えを書くように促した。

「ハイッ」と元気良く返事をして席を立った彼女だったけど、その瞬間、ゴチーン!と足をイスにぶつけた。





その刹那だった。





何故か彼女の靴からパチンコの玉がポィーンッ!っと勢い良く飛び出してきたではあーりませんか。





「あ、ずっと靴に挟まってたパチンコ玉がやっと取れたー!アハハアハハ!テヘッ!」





お田鶴さんは照れ臭そうに言った。





僕は「なんでパチンコ玉が靴にずっと挟まっとるねん」という疑問とともに、「なんてお茶目な御方か」という思いが頭の中に去来し、光の槍となって心臓を貫きエグり取った。





それを境に、彼女は「新『入』社員の田鶴です」を「新『人』社員の田鶴です」と読み間違えたり、僕が抱いていた「真面目で一生懸命でハキハキしていてしっかりしているアナウンサーみたいな女性」というお田鶴さん像を少しずつ破壊していき、「真面目で一生懸命でハキハキしていてしっかりしてそうに見えるけど少し馬鹿っぽいキュートでチャーミングな可愛い女の子」という新たな像を作り上げてしまった。







そしてそのギャップは、もはや僕の心臓を鷲掴みしてしまっていて、いつのまにか僕はお田鶴さんの虜になっていたのだった。





これが僕が、お田鶴さんを好きになっていった背景なのです。





続く