
こんにちわ。
押しボタン式信号機の横断歩道を、ボタンだけ押して渡らずにどこかへ逃げる ようすこです。
あれは僕が高校一年のクリスマスだ。
アイツと僕は、彼女にクリスマスプレゼントを贈ろうと計画して、街の雑貨屋とか色んな店を回った。
とにかく色んな物を買って、彼女に楽しんでもらおうと思ったからお金が許す限り沢山の物を買おうと思ってた。
雑貨屋は街のはずれにあったから学校からずいぶん歩いた。
途中にあった中学校に忍び込んで、教室の黒板に「○×△さん好きだー!」と死ぬほどデッカく落書きして全速力で廊下を走りまくって逃げた。
プレゼントを買ったその日は既にクリスマス当日だったから、プレゼントを買いまくった僕らは、早速彼女の家の近くへ行き、もう辺りは暗くなってきているにも関わらず彼女を呼び出した。
なんと呼び出した場所は「洋服の青山」の駐車場だった。
随分と僕ら二人は洋服の青山の駐車場で彼女を待ってた。
彼女の両親は厳しいらしかったから、なかなか外出を許してくれなかったんだと思う。
しばらくして彼女が来て、僕らは紙袋いっぱいのプレゼントを贈った。
帰り道の空には、たくさんの星がやけに輝いて見えた。
アイツにも、同じように見えていただろうか。
そしてお正月、お年玉を握り締めて、僕らは彼女の誕生日プレゼントを買う為に、福岡の天神へ向かった。
なんと学ランを着たまま、田舎丸出しで行った。
当時、天神には滅多に行く事がなかった僕は、どこに何があるのかさっぱりで何度も何度も同じ場所をグルグルグルグル回ってはうろたえていた。
やっと見つけた可愛らしいお店で、僕はピンキーリングを買い、アイツはあったかそうな可愛い手袋を買った。
アイツは彼女の誕生日の当日には部活の遠征に行かなくてはならなかったから、購入したプレゼントを僕に託して行った。
アイツはきっと僕を信じてくれていたんだと思う。
彼女の誕生日まではまだ日にちがあった。
その間、彼女に贈るプレゼントはずっと部屋に置いていたんだけど、早く渡したくてムズムズしてた。
プレゼントはあんまり前もって買うべきではないと、その時思った。
誕生日の当日、アイツに託されたプレゼントと僕のを持って、彼女に渡しに行く前に、ふと僕は思った。
「アイツの買った手袋と僕の買ったピンキーリング、僕のプレゼントの方が負けてるんじゃないか?」って。
全くもってそんなことはないはずなのに、何故だか急に不安に駆られたのだ。
そこで僕はアイツには内緒で、自分だけプレゼントを買い足す事にした。
自転車で雑貨屋さんへ行き、アイツには内緒で色んな物を買い足した。
そして、またクリスマスの時と同じように彼女の家の近くまで行って、彼女を呼び出した。
今度の待ち合わせ場所は、彼女の家の近くにあるパチンコ屋の駐車場だった。
丁度よく道路と駐車場を結ぶ階段があったので、僕はそこに腰掛けて待った。
長かったかもしれないし短かったかもしれない、僕が彼女を待っていた時間は。
でも僕の中で流れてた時間は、それまで生きてきた中で一番長かったかも。
彼女が来て、僕は最初に、アイツから託されたプレゼントを渡した。
そしてその後に、僕からのプレゼントを渡した。
少し話して、僕は帰った。
帰り道、自転車をこいでいると携帯がなった。彼女からのメールだった。
「ありがとう」と書いてあったと思う。
アイツはその時、携帯を解約していたから僕だけがそのメールを受け取った。
僕は優越感に浸っていたのではなかろうか。
もう、空に輝く星は見えやしなかった。
僕は帰り道、あまりにもテンションが上がりすぎていて、家に帰る気がしなかった。
普段全く通らない道を通って、気付けば家とは違う方向に自転車を走らせてた。
案の定、道に迷い、どこに行けばいいのかわからなくなって、目の前にあった細く暗い道を通ろうとした。
その時。
ガシャン!
バタン!
ドカッ!
何が起きたのかわかんなかった。
気付いたら僕は草の生い茂る土の上に寝転がってた。
目を上の方に向けると、見覚えのあるブルーの自転車が引っ掛かってる。僕の自転車じゃないか。
細く暗いと思っていた道は、道ではなく、深い溝だったのだ。
何も知らない僕は、まるでドリフのコントみたいに転げ落ちてた。
運よく自転車は前輪と後輪の間に溝のカドの部分がつっかえて落ちなかったらしい。
僕はしばらく深い溝の底で茫然としてた。
泥だらけになって家に帰ると、帰りが遅い事を心配した母親が鬼のように怒りだし頭をこれでもかって程殴られた。
あれは、未来の僕の姿だった。
でもあの頃の僕は何も知らずに、ただ転がり落ち続けるしかなかった。
つづく