カミさんを新今宮の仕事場に送り
次の予定まで随分時間があるので
仮眠するため新世界に車を停めた。

バブル前夜の頃
新世界はまだ十分に猥雑で息苦しいくらい熱かった。

早朝飯場から戻ると、
銭湯に行き
関東煮をつつきながら朝酒を浴びた。

今は
午前7時に開いている飲み屋を探すのが難しい。
通天閣界隈からジャンジャンの端まで歩いたが、
数軒しかやっていない。
しかも
どこもガラガラなのだ。

近所のおじいちゃんおばあちゃんが散歩しているだけの
廃墟のような新世界。


中山間地の里は
1960年を境に崩壊した。
それから半世紀たち
新世界に
あの
荒々しいけれど自信に満ちた
頼れる男たちはいない。

ふと
ほんとうに日本は消えて亡くなるのではないか、と思い
遣りきれなくなった。