平成26年度決算特別委員会が本日終了しました。

自民党の意見開陳は以下の通りです。

【意見開陳】

議題に供された報告第2号、報告第3号、報告第4号及び報告第5号の各会計歳入歳出決算について、いずれも認定の立場から、四項目にわたり、意見を開陳する。

第1 財政について

まず財政力指数、経常収支比率及び公債費負担比率は、いずれも前年度比同程度または改善していることを評価し、今後も計数の改善に向けて不断の行財政改革に努められることを望む。

他方で、公共施設整備基金及び財政調整基金は、前年度末比約5.7億円増加して、約74.6億円となったものの、依然として特別区の中で低い水準にあることは憂慮すべき事態である。特に財政調整基金の目的である、①経済事情の変動による財源不足の補てん、②災害の予防・復旧及び③緊急に実施する大規模な建設事業に対応できるよう、引続きの積み増しを求める。

また、特別区債残高は約314億円と前年度比約12億円増加しており、引続き残高水準について注視していく必要がある。新しい基本計画の策定にあたっては、区長において新たに両基金及び特別区債残高の適正値を定め、表明することを求める。

なお、この作業にあたっては、本年度、本区において策定される予定の公共施設等総合管理計画において起債が可能となる、①公共施設等の除却についての地方債充当に関する特例措置や、②平成27年度地方債計画に基づく公共施設の集約化・複合化についての公共施設最適化事業債及び③公共施設の転用についての地方債措置を視野に、公共施設マネジメントの観点から、均衡のとれた基金及び公債残高のあり方について検討することを求める。

また、税及び保険料の徴収については、収入未済額の総額が前年度を下回っており、徴収努力を高く評価するものである。しかし、国民健康保険料については、年々改善傾向であるためその徴収努力を評価するものの、徴収率83.78%と本年度目標である91%の達成はきわめて困難な情勢であることから、抜本的な対策を望むものである。この対策にあたっては、単に計数上の改善にとどまらず、特に生活困窮者の生活実態に鑑み、生活相談や適切な減免制度の活用により、収入未済額及び不能欠損額そのものを低減させる方法を講じるべきである。

加えて、住民一人あたりの純行政コストの増加や受益者負担比率の低下は、行政サービスの効率性・適正性から早急に改善すべき事態である。

更に、義務的経費を分析すると、この間、人件費の減少に比して物件費の一貫した増加がみられる。人件費のみに注目しない、賃金及び委託料をも考慮した、抜本的な行財政改革が必要である。

第2 区政の重要課題について

区政の重要課題については様々あれど、本委員会で特に議題に上がったものを述べる。

まず大学誘致については、施策推進を積極的に支援するものの、この際、大学誘致の目的そのものを明確化し、高度制限の緩和や隣接地の活用など、大学にとって必要な条件整備を図るべきである。同じ大学誘致事業であっても、山本区政においてこれまでの経緯を検証し、改めて大学誘致をどう位置付けるのかという点を早急に示されたい。また公有地利活用及び治安の観点から、建物の除却について早急に着手すべきである。

次に、両保健センターの統合構想については、保健所機能、子育て支援機能及び医療介護連携機能といった、本区の医療福祉政策の拠点を目指すべきという観点から、そのビジョンを早急に示されたい。

更に、陸上競技場の建設構想にあっては、学校関係者をはじめとした利用者ニーズを的確に把握し、東京五輪開催にこだわらず、区民の長期的利用の観点から検討を進められたい。なお、名称を「総合運動場」とするなど、陸上競技に特化しない、幅広く多用途で利用される総合運動施設とされたい。

第3 具体的施策について

具体的な施策については、山本区長の特徴的な政策理念である「選択される自治体」を目指し、人口流入を誘導し、定住を促すという新たな観点から、展開するよう望むものである。

防災対策については、各種耐震・不燃化助成事業の執行率が低い状況が続いていることは深く憂慮される。この間補助率の引き上げや対象の拡大による成果が見られることは評価できるが、計数を大きく改善する事態には至っていない。例えば、私たちの昨年度予算要望に示したように、民間事業者が核となって現住住宅を買い上げ、区の助成金を活用して耐震・不燃化改修をした上で、事業者の責任で当該居住者へと貸し戻すというリースバック制度や、類似の手法で空き家を利活用する制度を検討する必要があり、その可能性について研究されたい。眠れる住宅ストックを掘り起こし、防災対策及び人口流入促進を一括的に図ることができる手法を検討されたい。

子育て支援については、この間、待機児童が低減し続けていることは、墨田区待機児童解消計画の成果と高く評価したい。引続き、増加する保育需要に応え、平成28年4月1日現在の「待機児童ゼロ」実現に向けて努力されたい。併せて、在宅子育てニーズに応じるため、子育てひろばの拡充及び児童館における機能強化を強く求めておく。

高齢者施策については、ニーズの高い特別養護老人ホームの需要に対応するとともに、都市型軽費老人ホーム及び認知症高齢者グループホームの建設など、引続き多様な対策に取り組まれたい。

また介護保険特別会計については、介護度が下がることにより、介護保険事業者の介護報酬が低減し、利用者の自立促進を妨げている事態に鑑み、本区独自のインセンティブ報酬の導入を含めた検討を行われたい。

後期高齢者医療特別会計については、新たに通達で位置付けられた歯科健康診査の補助事業の実現に向けて努力されたい。

障害者施策については、工賃の向上が大きな議題となった。区内デザイナーとの協働を通じた新商品の開発支援等を引続き支援し、工賃向上に粘り強く取り組んでもらいたい。また、来年4月1日に施行される、いわゆる障害者差別解消法に対応して、本区を含む行政機関等は障害者に対して合理的配慮をする義務を負うこととなる。「障害者にやさしいまちこそ、誰しもにやさしいまち」との考え方に則り、同法に適切に対応されたい。第4期墨田区障害者行動計画(後期)に位置付けられている重度障害者のためのグループホーム新設についても併せて早急に取り組まれたい。

産業施策については、中小企業センターのあり方について現代的見直しを求めたい。また社会資本としての商店街という観点から、法人化を契機に組織強化に取り組むとともに、利用増が続くチャレンジ支援資金等の融資制度の活用を更に促し、産業の発生を誘導すべきと指向する。
観光施策については、区内循環バスについて議論になった。当初は観光目的という目論見であったが、実態調査から住民利用が90%以上という圧倒的多数を占めるに至っている。観光目的の利用者増は喫緊の課題だが、現状に即して、観光目的と併せて住民利便性の向上を二大目的として、次期契約更新及び東京五輪の二つの目標地点を設定し、ルートの見直しを含めた具体的対応策を早急に検討すべきである。

教育については、新しい教育長の下に、確固たる信念をもった教育政策を求めたい。特に喫緊の課題である、学力及び体力の向上、いじめ不登校対策はもちろんのこと、そうした表層の現象にとらわれず、その背景にあるそれぞれの子どもや家庭、地域が抱える社会的及び心理的事情に着目し、ひとつひとつの課題を丁寧に解決する姿勢が求められる。この中で教育と福祉の連携は必須の課題で、特に放課後学習クラブやチャレンジ教室への手厚い支援、本年度から始まっている生活困窮者自立支援事業における無料学習塾を含む、ケースワーカーと学校の連携など、全庁的な連携体制が必要である。更に、生活困窮家庭の児童生徒への扶助費は貧困の連鎖を防ぐ最後のセーフティネットとして重要であることから、水準の維持を求める。

職員の人材育成については、大学院における派遣研修、建築・土木職や福祉職を中心とした資格取得支援を中心に、その資質向上のための環境整備を図り、組織力のよりいっそうの向上に不断の努力をされたい。また、若手職員を含む全庁職員を「区政のシンクタンク」として捉え、積極的に意見が発せられ、それが庁内で実現する体制の整備を求めたい。
その他、公園の利用方法をはじめ、条例に基づく事務執行のあり方について指摘した事項もあった。「法律による行政の原理」という行政法の基本原則に立ち返りつつ、行政職員がそれぞれ自らの執行が法の趣旨に照らして適切であるのかを常に顧みて、場合によっては世情に照らして問題点を発見し、改善していく姿勢を強く望むものである。

また、資源回収事業など委託費に係る積算が現場での対応と大きく異なる点も指摘した。契約事務にあたっては、契約当初の事情が大きく改変された場合、いやしくも予算の都合を民間事業者に転嫁し、不公正な内容とならぬよう、強く指摘しておく。

更に、亀沢にある旧本所清掃事務所庁舎及び東駒形にある同業平分室等、清掃事業用地の都から区への移管については、契約書の文言の疑義について早急に都との協議を望むものである。こうした例にみられるように、外部団体との折衝にあたっては、山本区長のいう「できない理由ではなくできる理由を探すという」まさに政策法務の手法を取り入れた、自治体戦略の重要性を改めて指摘しておく。

第4 その他施策について

その他、本委員会中、会派から申し上げた指摘及び提案については、私たちを選出いただいた多くの住民の意思と捉え、真摯に受け止め、迅速かつ積極的に対応していただきたい。

山本区長は、平成28年度予算編成にあたり、単に前区政の継承にとどまることなく、区長自身のカラーを前面に押し出すことを強く望み、以上で意見開陳を終える。

以上