キーンコーンカーンコーン・・・
よーし、やっと授業が終わった。
コナンはそそくさに机の中に入っている教科書をランドセルに入れていった。
『今日は早く帰らないといけないんだよな。
なんせ、今日はあの最新作が発売される日なんだからな。』
ランドセルに教科書を入れている最中に光彦が話しかけてきた。
「コナン君、今日は帰りに一緒にサッカーでもいませんか。
最近、天気が悪い日が続いたからあまり出来ませんでしたし。」
「悪い、光彦・・・。今日はちょっと大切な用事があるから
早く帰らないといけないんだ。」
「ええーっ、コナン君。それはひどいですよー。
やっと今日天気が晴れたのに・・・」
「本当に悪い!サッカーはまた今度な!」
やっとホームルームが終わってコナンはすぐに学校を出た。
そう、これからはあの目的に突っ走っていかなければならないんだ。
【中略】
コナンはやっとその目的に着いた。
そこは米花駅の近くにある大きな本屋”BEIKA BOOK STORE”だった。
コナンはその本屋に入ってすぐにとある本のコーナーに行く。
もちろん、そのコーナーとは”ミステリー小説”コーナーである。
「ええと、確かこの辺にあると思うんだよなぁ・・・
どこにあるんだろうなぁ。
確かあの本は今日が発売日だったから絶対もう入荷されていると思うんだけど・・・
あっ、あった。これだ!」
それはコナン・ドイル作の”シャーロック・ホームズ 3年後の帰還”だった。
そう、その本はコナン・ドイルがシャーロック・ホームズシリーズを
本業(医師)の兼ね合いが行かなくなった都合上、連載小説を一端終了してから
1年ぐらいしてから書き始めた”ホームズ復活”の書物である。
日本で既に翻訳書が発売されているがその完全版はまだだった。
そう、今日がその完全版の発売日だったのだ。
「これだけは絶対見逃せないんだよな。
よーし、今日は徹夜してでも読破してやるぞ。」
「なーにやってんのよ、工藤君!?」
「へ?」
「うわっ!ビックリした。」
なんと、コナンの隣に灰原愛(以下:灰原)がいたのだった。
正確にはずっとコナンの隣にいたのだが、コナンが今にも必死に
例の本を探していたので灰原の存在に気付かなかったのである。
「なんだ、灰原かよ。驚かすなよ。いるならいると挨拶してくれよ。」
「あらっ、ずっと、工藤君の隣にいたんだけど。」
「えっ、マジかよ。」
「工藤君がなんか必死に本を探しているっぽいからその様子を
そばでずっと見ていたわ。」
「あー、これの事か。」
「ドイルの本ね。まあ、工藤君にはお似合いだけど。」
「どんな言い方だよ、それ。別にいいだろ。
灰原は何しに本屋に来たんだよ。」
「あらっ、気になる?」
「別に気にならねぇよ。じゃあ、レジに行ってくるから、ちょっと待ってな。」
「じゃあ、出口で待ってるわ。」
コナンはそそくさにレジカウンターまで行き、その本の会計を済ませた。
その後、本屋の出口まで行き、灰原と合流した。
「よーし、今日の用事は済んだ。
これから帰って読書タイムだな。ドイルの本なら徹夜でも読破できるし。」
「ドイル狂ね。まあ、シャーロキアンらしいわね。」
「るっせーな。灰原は本に興味がないのかよ。」
「本なら色々と読んでるわ。
薬学・生態学・抗体学・・・」
「分かったよ。薬の研究系の本だろ。」
「まあね、でもだいたいの市販されている本には興味がないわ。
というより興味を持てないのよ。
もうちょっと出版社も頑張って本のコピーぐらい良くするべきね。
あれじゃあ、いつまでも消費者の心に響かないわ。」
「へえ、珍しいな。灰原はそっち系に興味があるのかよ。」
「まあね、消費者心理も学ぶのも薬の開発には必要なのよ。
だから、日々どうしたら現代の消費者の感情を動かせるのかは
一つの研究テーマね。
消費者のそういう感情を勉強するのは結構楽しいものよ。」
「例えば、どんな感じなんだよ。」
「あらっ、興味があるの?」
「まあな、だって消費者ってことは人間の事だからな。
探偵をやっている以上人間の心理・心情には興味があるね。
犯罪心理学はハワイで父さんから学んだからだいたい把握しているけど
そっちの消費者側の心理は全然だな。」
「あらっ、ハワイで消費者心理学は学べなかったの?(にや)」
「と、いうより時間がなかったんだよ。
探偵業というのは総合的な能力が必要だから
いろんな分野を包括的に学ばないといけないからなぁ。」
「じゃあ、仕方がないわね。
いい?
私に言わせれば現代に使われている広告という物は
ほとんどゴミにみえるわ。99%はゴミね(*)。
間抜けで退屈にしか思えない。」
「へー、そうなのか。」
「そうよ。広告を見てて分からないの?
テレビのコマーシャルは退屈でしょうがないし、
博士の研究所に届くチラシの大半も大抵心に残らないものばかりだわ。
工藤君、広告の目的って何だと思う?」
「ええと、消費者に自分の商品を購入してもらうためのものだろう?
それか新発売の商品の告知をするためのものとか?」
「工藤君、それはハズレね。」
「じゃあ、広告の目的ってなんだよ。」
「いい?
会社が広告を打つのは他でもない、”人に行動させること”なのよ。
これが全てと言っていいわ。」
「人に行動させる事ねえ。」
「あまり納得していないようね。」
「まあな。
だって、実際に消費者がその商品を買ってもらわないと
会社としては赤字だろ。」
「あら、それじゃあ、消費者は商品を買いたがらない風に聞こえるわね。」
「えっ、違うのか!?」
「ええ、違うわ。
寧ろ、消費者は商品を買いたがっているわ。
でも、商品自体を買う気にならないのよ。
だって、その商品を買ったらどう変わると思うの?」
「・・・」
「消費者はその商品を買う理由が欲しいのよ。
だって、自分がその商品を買う事の合理性を確かめたいから・・・。
だから、誰でもいいから自分がその商品を買う理由・合理性を
説得してほしいと思っているのよ。」
「なるほどな。”その商品を買う理由”かー。
結構それ難しい話かもな。」
「あらっ、難しくないわ。
簡単に言えば、消費者にその商品を買う事のメリットを
説明して説得すればいいのよ。
アメリカの有名な広告代理店は今では説得のプロを雇っているわ。
彼らエキスパートたちは人の心の奥底にある欲求を引き出して、
人にお金を使わせる方法を知っているのよ。」
「へー、また大胆な話だな。」
そうこう話しているうちに、コナンと灰原はアガサ博士の研究所に到着した。
ここで二人は分かれることになる。
「まあ、また今度その話教えてくれよ。
そういう話は探偵業にも使えるかもしれないからさ。」
「別にいいわ。小さな探偵さんのお役に立てればね。」
(*)
広告の99%はたいしてモノを売っていない。
- by デイヴィッド・オグルヴィ -
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