監督 ジャン=ピエール/リュック・ダルデンヌ
製作 2005年 ベルギー/フランス 95分

ダルデンヌ兄弟の2005年カンヌ・パルムドール受賞作。
甘いなーと思った。ケン・ローチだったらこれじゃ済まないよ、と思った。たぶん死んでんよ。けれどブリュノは天然というか、本当にうらやましいほどの素直な青年で、これでお金と住むところとまともな職さえあれば憎めない普通のお兄ちゃんだ。だけど彼にはそれらが手に入らないのだろう。と仮定すれば悪いのはブリュノじゃない、社会のほうだと思ってもいい。それはそう簡単に変わってはくれないものだけれど。でも、やっぱり甘いよ、なんか。私は希望を見出すというよりは引いた。いまいち感情移入できず。

以下あらすじ。ネタバレ。
若いカップルブリュノとソニア。二人にはジミーが生まれたばかりだ。ブリュノは盗みをはたらいてその日暮らしをしている。あるとき、ブリュノはジミーを養子として売ってしまうが、そのショックでソニアが倒れたためにジミーを取り戻す。しかし、ソニアはそんな彼に愛想をつかして相手にしなくなってしまった。ソニアに捨てられたブリュノは、痛い目にあっても泥棒をやめない。しかしついにブリュノはひったくりで逮捕され、刑務所に入る。ソニアが会いにくる。向かい合って涙を流す二人。
監督 ラース・フォン・トリアー
製作 2005年 デンマーク 139分

黒人差別が題材になっているが、支配と抑圧の図をわかりやすく描き、かつ本質を突いた映画。 ラース・フォン・トリアーは深いけれども潔い。 これを痛快と言わずして何と言うか。 見終わったあとは拍手喝采した。やったぜ!トリア-!!!って感じ。キレのあるブラックさにしびれる。

だけど私は前作『ドッグヴィル』の方が好き。 だけど『マンダレイ』の方がわかりやすくはあると思う。 トリアーを見たことないとか教材として使うのならこちらの方が向いている。
監督 王兵
製作 2003年 中国 545分

勢い余って東中野へ見に行ってしまった。公開の一週間前に、知り合いから「いいらしいよ」と聞かされただけの作品である。山形ドキュメンタリー映画祭2003大賞。9時間のドキュメンタリー、しかも舞台は中国の傾いた工業地区。

美しいわけでもなければ、インパクトで勝負しているわけでもない。ある種、最も忍耐を必要とする作品だと見当がつく。しかし、この機会を逃したら次はいつ見られるか、機会があったとしても都合がつくかどうかわからない。9時間に一体何を賭けているのかを確かめたくて、とりあえず行ってしまった。ヒマだなあ。

まあ、長い。しかし冗長だと言いたいのではない。1時間は寝たと思うがつまらなかったと言いたいのではない。誤解を恐れずに言うならば、9時間は鉄西区への旅であった。鉄鋼プラント、労働者、雪の中の線路、バラックのような家並み、学校へ行かずブラブラしているだけの若者、孤児、療養所、死体、クズ拾い、文革。その中で人々が生きている。途中で思い出されたのはペドロ・コスタ『ヴァンダの部屋』であった。閉塞の中に生きる人たちをただ静かに記録するカメラ。

たとえカメラを持っていたとしても、あのような風景にすることはとても難しい。そしてあのような風景を見て、何かを言うこともとても難しい。こういう映画は稀有な人たちによってたまにつくられる。見てもたいていのことは私の知らない場所でのできごとであり、「そうなんだ」という認識になる。けれども閉塞や抑圧の感覚は、なんとなくわかる気がする。ああ、そういうのはここではないところでもあるのだなあという確認をすることで、自分の感覚が確かになっていくのかもしれない。なんだか面倒くさいなあ。自信がないんだね。
監督 デレク・ジャーマン
製作 1993年 イギリス 74分

ヨーロッパ映画好きなら存在だけは知っているであろうデレク・ジャーマンの遺作。あまりにも有名で、見たことなくてもだいたいどんな内容だか知っている人が多いと思う。人にそう話したら「見なくていいじゃん」と言われたけど、見てみてそこまで思い違いはなかったけど、でもスクリーンで見てよかった。

全編一面ブルーでナレーションと音楽が入るのみという実験的要素のある作品なんだけど、今回私が見たのは字幕版なので、字幕の白が入る。これがけっこう動くんで、字幕なしバージョンとはかなり感覚が違うと思われる。字幕が出るとどうしても注意が行って視点が意識され、画面に変化が出てしまう。仕方ないけど残念。ただゆっくりとジャーマンが語っていくさまには、心に迫るものがあった。それから俗なこと言うと、この作品はエイズ予防に役立つと思うので性教育関係でも普及させればいいと思う。

ちなみにイヴ・クラインへのオマージュだとも言われている。色は確かにインターナショナル・クライン・ブルーに近かったと思う。
監督 デレク・ジャーマン
製作 1990年 イギリス・日本・西ドイツ 88分

暗い。デレク・ジャーマンの画は光よりも影に目がいく。ジャーマンにはカラヴァッジオの映画もあるので、退廃的な感じが好きなんだろうと思う。本人はエイズ末期に「私は断固たる楽観主義者なのです」という発言をしていたけれどね。悩んでいたというよりは確信犯的な暗さである。ときどきグロいし、ジャーマンの心象風景煮詰めました的なので、あまり素朴に薦められるようなもんではない。でも好きな人はいるだろう。私も好きだ。

やや中心に据えられているゲイのカップルは個人的にちょっとうっとおしいが、それ以外の画はどれもポスターにしたいような、しかし動きも捨てがたく、じゃあやっぱりスクリーンの中が正しいありかたなんだろうなと妙に納得した。

キリストやらマリアのような人が出てきたり、現代社会の風刺ともとれるところがある。が、私はストーリーやメッセージを読み取るというよりも、全体に風景として気に入った。

撮影はスタジオと、ジャーマンが移り住んだダンジェネスの庭で二年間にわたって行われたらしい。荒野、空、海(波打際)、下品な笑い、時間(早回し)、等々非日常的で冥土の土産にしたいと思った。ああいうところを放浪して死にたい。