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◆  朝日新聞社説 アスベスト被害―救済の見直しが必要だ


  朝日新聞社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20120530.html



では、どこに救いを求めればいいのか。やりきれぬ思いで判決を聞いた人も多いだろう。


 建材に含まれるアスベストで肺がんなどになった建設労働者が、国とメーカーを訴えた裁判で横浜地裁は請求を退けた。

 被害を防ぐために国がとった吹きつけ作業禁止などの措置と時期は、それなりの合理性があった。事情が異なるメーカーをひとくくりに責任追及するのは無理がある――との判断だ。



 防じんマスク着用のルールを守らなかった事業主や労働者に問題がある。そんなふうに読める記述もある。だが、実情を知りつつ目をつぶってきたのも、また国ではなかったか。

 同様の裁判は各地の裁判所におこされている。そこには建設労働者特有の事情がある。


 現場を転々とし、特定の雇い主の責任を問うのは難しい。いわゆる一人親方など、実態は労働者なのに法律上は個人事業主とされ、労働者保護の法令が適用されない人も少なくない。

 働き手として最も弱い立場にあった人が、被害者としても最も弱い立場におかれ、やむなく国やメーカーと争う。社会の矛盾があらわれた裁判といえる。

 主張のなかには法的に困難なものもあり、司法の限界を感じさせる審理ともなった。



 だが横浜地裁も、このままでよしとしたわけではない。

 判決を締めくくるにあたり、「被害は、アスベスト建材によって利益と恩恵を受けた国民全体が補償すべきものとも考えられる」と述べ、いまある救済法の充実や新たな補償制度の創設について、再度検証する必要があるとの見解を示した。

 救済法は6年前に制定されたが、通常の損害賠償はもちろん労災保険と比べても、支払われる金額や救済範囲は低水準にとどまる。国に責任はない、との前提に立っているからだ。


 この前提を問い直すのが一連の訴訟の目的だが、並行して、判決が指摘した再検証に取り組めないはずがない。

 法的責任を踏まえた賠償か、それとも福祉の立場からの救済か、といった議論で堂々めぐりをしているうちに、次々と失われていく命の重みに思いをいたすべきではないか。



 アスベストがもたらす病気は潜伏期間が長い。2040年までに死者が10万人以上になるという試算もあるが、国の財政事情や企業経営を考え、施策の充実をためらう空気は強い。



 だが、潜在患者が多いからこそ手当てを急がねばならない。戦後の経済成長の負の遺産から逃げるわけにはいかない。

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