九月の終わり頃だったか、
まだ昼間の日照時間が長かったのか、
ようやく辺りが暗くなりだした。
勤務が終了し、空き地の前を通った。
この記事のタイトルは分かりやすく言うと
『脱輪』である。
自動車教習所だと、その場で試験終了
といった感じか。
車が前のめりに側溝にはまっているのが
確認できたので、自分の車を道路脇に停めて
救出に行った。
・・・と言っても立ち往生している車は
よく見るとタイヤが前方の一ヵ所しか
はまっていないので側溝からの脱出は
比較的、容易であった。
『会社の人を呼んだので大丈夫で~す』
と女性は言う。
(大丈夫で~す
・・・じゃねえべ。
ふと見ると奈良ナンバーなので
一番近い奈良県でも、ここまで
片道二時間はかかる。
こんな山深い所へ会社の人も
来てくれるかどうか)
1トンはあろう車の、前部だけを私は
アベンジャーズのように持ち上げた。
『ゆっくりバックして下さい。
思いっ切りバックしたら後ろの崖から
落ちます』
案の定、あっさり脱出できお互い別れた。
二人の山ガールといった感じか
足下は登山靴に見えた。
近くの山にほこらがあるので
それをお参りに行ったのでしょう。